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アート演劇・ダンス講座・ワークショップ

年齢、国籍、障がいの有無も越えて、ダンスでコミュニケーション!

年齢、国籍、障がいの有無も越えて、ダンスでコミュニケーション!

芝居が生まれる現場
File.6 わたしいろのダンスワークショップ
今井浩一(編集ライター)

川崎市に「カルッツかわさき」という、ユニークな施設がある。正式名称は「川崎市スポーツ・文化総合センター」。2013人収容のホールと、大小体育室・武道室・弓道場・トレーニング室などを備えた複合施設である。オープンは2017年10月1日。もともと体育館があった場所に立地しており、近隣の教育文化会館のホールが2018年3月で閉鎖されることが決まっていたことから、こうしたスタイルが実現した。身体を鍛え、感性も磨く。そんなイメージかもしれない。
「カルッツかわさき」という愛称は、「カルチャー」「スポーツ」を掛け合わせたもので、地元中学生のアイデアが採用された。川崎市の富士見地区と周辺を一体化し、文化とスポーツを中心に地域を活性化する施設としてにぎわっている。

さて、そんな「カルッツかわさき」で、『わたしいろのダンス・ワークショップ』という取組みが行われている。これは、パブリックアートコミュニティ事業=地域の市民が参加して、プロのアーティストとともにひとつの作品をつくり上げよう、という趣旨に基づく企画の一環。川崎市の多様性に着目し、さまざまなニーズのある人を包み込み、支え合う社会の形成に向けた課題解決のため、障がいのある人もない人もともにダンスのワークショップに参加して、作品づくりに励んでいる。
「私自身、市民として思うことがたくさんあって。子どもから大人まで、障がいのある方も、文化や国籍の違いを超えて、ともに生きる社会を目指すことの大切さを発信できたら…。そんな思いからこの企画が生まれました」
と、事業担当の村田あかねさんは語る。

ワークショップの講師は、平原慎太郎氏。平原氏はOrganWorksというダンスカンパニーを率いるほか、さまざまな舞台作品などに振付を提供したり、近藤良平氏率いるコンドルズ、大植真太郎氏・森山未來氏との「談ス」などにも参加するダンサー・振付家だ。
まず最初に、単発のワークショップを2018年10月に開催。これは、障がいのある人もない人もともに文化芸術活動に取り組める環境づくりを進める市の文化財団「パラアート推進モデル事業」の委託を受けて実施したもの。続いてカルッツかわさきの事業として、2018年12月から2019年3月まで計8回のワークショップを開催。3月30日に成果発表会を行うまでを1つのクールとして実施した。
「ご参加いただいた皆さんには、平原さんのリードにより、“人とのつながり”“ともに生きること”“コミュニケーション”などをダンスで表現する方法を模索し、相手に伝えることを経験していただきました」(村田)。

実は村田さん、大学時代から「共生」に対する思いがあったものの、この事業を開始するまでは、障がいのある人と触れ合う経験は一切なかったという。そこで、まずはKAAT神奈川芸術劇場で行われた「共生共創事業」の講座に通い、障がいのある人と健常者が一緒にパフォーマンスをつくる活動を展開している横浜市の団体“SLOWLABEL”で、サポートやコミュニケーションについて学んだ。つまり、学んだことを即座に実践してきたわけだ。

そしてこの6月からは、2019年度の第1期がスタートしている。
ワークショップは全14回。子どもと大人のペアによるAクラス、10歳以上のBクラス、障がいのある方のCクラスで構成されている。
定員は70名。前回から引き続き参加する市民の方も多く、11月2日の成果発表に向けて、熱く、楽しいワークショップが繰り広げられている。

順調に展開していると感じるが、まだまだ課題も残されている。当初の構想として掲げていた「外国人の参加」が得られていないのだ。
川崎市は韓国・朝鮮人、中国人、インド人など外国人が多く暮らす街として有名。ヘイトスピーチなど悲しいニュースもあったりするが、川崎市は2005年に「川崎市多文化共生社会推進指針」を策定(2008年、2015年改定)。外国人市民にかかわる施策などを、体系的かつ総合的に推進している、日本の中でも先進地なのだ。

「川崎市にはいろんな国の人が住んでいる。国籍の違う人たちが一緒に生きていく中には、それなりに偏見も残っている。お互い認め合って生きていこうよ、それが大事だ、ということを伝えたいという思いがあって。カルッツかわさきに配属されたころから『何かできるといいな』と考えてはいたんです。
平原さんには『お互いの個性を認め合って生きていこう』ということを、ダンスを通して伝えていきたい、とお話ししました」(村田)。

知り合いの外国人に声をかけたり、チラシをつくり直したり、区役所からアドバイスを受けて外国人コミュニティへの投げかけを行ったりと、試行錯誤の真っ最中だ。

「これまでは身近な川崎区内が広報の中心だったけれど、視野を広げて川崎市全体に活動を広げていきたい。2020年に向けた集客も大切なので、神奈川県全般に広報していきたいですね」(村田)。

そう、この事業は3年をひとまずの区切りとしている。目指すは2020年5月24日、2013人収容のホールで「障がいのある人も外国人も、大人も子どもも全員が同じ空間に立って、1つの作品をつくる」ということ。客席だって埋めなければいけないのだ。

やらなければいけないことはたくさんある。でも、カルッツかわさきでさまざまな人が集い、踊り、笑顔を交わしている姿を想像すると、ワクワクするではないか。

そして、そこに芸術の力は欠かせない。

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