【アートの魔法07】原鉄道模型博物館 精緻な作りとリアルな走行音を味わう

鉄道発祥の地・横浜にある「原鉄道模型博物館」には、鉄道模型製作者で収集家の原信太郎(はら・のぶたろう)さんが製作・所蔵した世界一ともいわれる膨大なコレクションが展示されています。今回は世界各国・各時代の鉄道模型を目と耳で楽しみながら、旅する気分が味わえる博物館でスタッフにお話を伺います。
原信太郎が伝える、ものづくりの魅力

日本で初めて旅客車としての地下鉄(現・東京メトロ銀座線)に乗車した乗客第一号としても知られる、原さん。子どもの頃から鉄道を愛し、自分で乗って撮って模型を作り、“一番切符”の収集にも情熱を注いでいました。海外の鉄道を知るために小学生のときから英語を学び、中学・高校ではドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語を修得。その後、大学入学前にロシア語も身につけ、鉄道技術を得るために東京工業大学 (現東京科学大学)工学部機械工学科に進学しました。
―美しい博物館ですね。
信太郎のコレクション約6,000点のうち、約1,000点の鉄道模型を展示し、走行しています。
蒸気機関車から電気機関車へと鉄道が著しい発展を遂げた時代の日本・ヨーロッパ・アメリカを中心とした世界中の鉄道車両が再現されているのが、特長の一つ。横浜にいながら、世界の鉄道を楽しむことができます。また、信太郎が撮影したスチールが約10万枚、ムービーフィルムなどが合計約440時間、アンティーク模型や一番切符の数々、鉄道実物部品も見どころです。
―私は代表作が並ぶ第一展示室、原少年が初めて作った模型が印象に残っています。
小学6年生のときに製作した、「8000号」という空想の機関車ですね。ボディは家の屋根を修繕した余り板を使い、ドイツ型の複雑なパンタグラフは針金を曲げて手作りしています。当博物館のマークにも採用されている車両で、信太郎が思い描いた理想郷の鉄道「シャングリ・ラ鉄道」の一号機関車です。
―台車やレールもすべて手作りで、バネ類も可動するのに驚きました。
信太郎は鉄道と技術をこよなく愛し、鉄道の技術革新があると世界のどこへでも見に行き、乗車し、当時珍しいカメラや16ミリフィルムに収めていました。収集した膨大な鉄道・旅行・技術関連の資料も当博物館で見ることができます。信太郎の鉄道模型は実際の鉄道車両を忠実に再現していることから、「小さな本物」と広く賛辞を受けています。
総延長450メートル 圧巻のジオラマ

博物館のハイライトが館内中央にある巨大なジオラマ「いちばんテツモパーク」です。
広い世界や旅を愛した原信太郎の世界観を表現した世界最大規模のジオラマを、精緻な鉄道模型が本物さながらの音をたて疾走します。
―館内に響く走行音が素晴らしい! 本物の車両が本物の街を走るような、鉄道模型の世界が広がっていますね。
ありがとうございます。当博物館では、一番ゲージ(縮尺約1/32)の鉄道模型が実際に走行する、一般公開されている室内施設としては世界最大級のジオラマを用意しました。
信太郎の模型は架線から電気をとり、鉄のレールを鉄の車輪で走行しています。中でもご注目いただきたいのが、まさに走行音。レールのつなぎ目の音がゴトンゴトンと鳴り、本物と同じサウンドを聞くことができます。ギア、板バネ、ベアリング、揺れ枕、ブレーキ…いずれも外からは見えませんが、本物の鉄道で使われている技術を搭載することにより実現した模型の走りを感じていただけると思います。
―6本の路線を行き交う模型と街の様子にも、見とれてしまいます。
テニスコート1面分の規模に、隠れキャラやジオラマに再現されたストーリーが散りばめられています。皆さんもご存じの世界的絵画に描かれた人物もいるので、探してみてください。
朝・昼・晩 5分間で横浜探訪

―横浜の1日を楽しめる、ジオラマもユニークですね。
時間帯によって、船の汽笛や中華街のにぎわいなども楽しんでいただけましたか? こちらのHOゲージのレイアウトでは開業当時の駅舎や街並みなど、横浜の今昔を再現しています。
原鉄道模型博物館は、横浜・新橋間で日本初の鉄道が開業してから140年目となる2012年にオープンしました。横浜の街にふさわしい施設として、これからも鉄道文化を通じて技術や歴史・地理など幅広い視点から来館者、特に未来を担う子どもたちの知的好奇心を刺激していきたいと思っています。本物の運転台を使って鉄道模型を運転する、「動鉄実習」も人気があります。ぜひ遊びにきてください。

文/志村麻衣(編集ライター)
原鉄道模型博物館
住所:横浜市西区高島一丁目1番2号 横浜三井ビルディング2階
電話番号:045-640-6699(10:00~17:00)
公式サイト:こちら
※「動鉄実習」には人数制限があります(先着順・当日受付)。また、イベント開催時や繁忙期には行っていません。詳しくは博物館のホームページでお確かめください。