【お城EXPO2016・後編】お城づくしでお城三昧!お城のすべてが横浜に結集した三日間!
「お城EXPO2016」の開催は12月23,24,25日の3日間。クリスマスのみなとみらいはあちこちに大きなクリスマスツリーが飾られてカップルや家族連れで賑わっていますが、会場のパシフィコ横浜会議室に一歩足を踏み入れるとそこにいたのは
「よくぞ参られた!ゆっくり楽しんでいかれよ!」
と、サンタクロースではなく戦国武将や忍者に扮したみなさま。様々なフォーメーションでの決めポースで撮影に応じてくれます。
ここ数年、各地のお城に行くとこのように「おもてなし武将隊」と呼ばれる方々がいて、パフォーマンスをしている姿をよく見ますね。早速お城に来たような気持ちになりテンションが上がります!
代表的な名城がズラリ!日本100名城写真展
とにかく広いこのパシフィコ横浜の会議室1〜5階まですべてがお城づくしということで、どこから攻めたらいいか悩みますが、まずは「日本100名城写真展」に行ってみました。
「日本100名城」は、日本を代表する文化遺産であり地域の歴史的シンボルでもある城郭・城跡を、多くの人に知ってもらい各地の名城探訪への手がかりにしてもらえるように、そして地域の振興につながるようにと、財団法人日本城郭協会によって2006年に定められました。
現在日本に江戸時代から残っているお城は12城あり「現存12天守」と呼ばれていて、そのうち5城(姫路城、彦根城、犬山城、松本城、松江城)が国宝となっています。
これら「現存12天守」を筆頭に各都道府県からひとつ以上が選ばれ100城となっていて、お城巡りがより楽しめるようにスタンプラリーも設けられていています。
お城EXPO2016では、北は北海道の「根室半島チャシ跡群(ヲンネモトチャシ)」から南は沖縄の「首里城」までの、選ばれし100名城の写真とお城の歴史、代表的な城主などの情報が載せられたパネルがズラリと並びました。
ひとつひとつを見ながら歩いていくだけでなんだか100城すべてを回ったような気持ちになれますね。
パネル展示だけではなく、日本100名城に選定されているお城の地元団体が、戦国時代の姫や戦国武将に扮した案内でお城めぐりに役立つとっておき情報や周辺の観光を紹介するブースもあり、鎧兜の展示や、甲冑を着ての記念撮影会があったりとこちらも大賑わいでした!
左:動かないので鎧だけかと思っていたら中に人が入っててびっくりしました!
ご当地キャラたちも勢揃い!
お城のある町にご当地キャラあり!(いや、ご当地キャラは全国各地にいますが)
というわけで、各地のご当地キャラも横浜に集いました。一番人気はやはり彦根城のひこにゃん。今年は井伊直虎を主人公にしたNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」もあり、井伊家のネコとして大忙しな年になりそうです。
写真は左から、出世法師直虎ちゃん、ひこにゃん、出世大名家康くんです。直虎ちゃんは浜松ご出身とのことで右手に「うなぎ型の槍(!)」を持っています。(なんとなく主演の柴咲コウさんに似ている気がします)
他にも勢揃い〜
写真左から、神奈川県小田原市(小田原城)の梅丸、愛知県犬山市(犬山城)のわん丸君です。
こちらは島根県(松江城)のしまねっこ、大阪・岸和田市(岸和田城)のちきりくんです!
やはりお城のある町のご当地キャラだけあって、みんな揃って和風ですね。
そしてはるばる熊本からやってきてくれたのは、熊本県のご当地キャラくまモンと熊本市のご当地キャラひごまるです。今回くまモンには会えませんでしたがひごまるのショーを見ることができました。
ひごまるは平成19年に熊本城築城400年祭を期に現代へやってきた妖精だそうです。
歩きにくそうな身体ですが踊りだすとなかなか激しい動き、特にクルクル回る回転技がキレキレでした!
屋根の部分に貼っているのは「リバテープ」
ん?絆創膏じゃないの?と思いますが、熊本県民のほとんどが絆創膏のことをリバテープと呼ぶそうで、これは絆創膏を作る地元企業「リバテープ」からの特注品だそうです。
去年の地震で大きなダメージを受け傷ついてしまった熊本城だけど、傷を癒やして頑張ろうというメッセージとのこと。
この日はクリスマスなのでサンタ帽&リバテープで、相棒役のありさお姉さんと元気いっぱいに踊って回転していました!
熊本城が元の姿を取り戻す日が待ち遠しいですね。(写真は2015年10月に撮影したもの)
お城EXPO2016では、熊本城の修復工事で出てきた珍しい文様が描かれた石の展示や、熊本のための復興支援コーナーもあって、多くのお城ファンによる募金は3日間で738,052円も集まったそうです!
信長のお抱え石工集団・穴太衆(あのうしゅう)とは
お城EXPO2016では、前編でご紹介した落語家でお城マニアの春風亭昇太さんなど多くの「お城スペシャリスト」をお招きしてのトークイベントやフォーラムが開催されました。
なかでもなかなか珍しい機会だと思ったのは、織田信長がその技術の高さを評価し召し抱えたという石工集団「穴太衆(あのうしゅう)」の末裔という、建設会社粟田建設(本社・滋賀県大津市)の代表・粟田純徳さんの講演です。
タイトルは「信長が登用した穴太衆とその石垣」
中世の山城から近世の城へと変わる分岐点になる「石垣を有する城」の最初は、織田信長の造った安土城だと言われていますが、安土城の石垣を積んだのが穴太衆でした。
今も残る安土城の石垣
穴太衆積の石積みの技法にはマニュアルはなく、現在も口伝のみで継承されているそうです。それはなぜかというと
「石の声を聴き、石の心を知り、石の心を己の心とし、永久に居心地良く居座るよう一石一石に想いを込め据え付る心と腕の修行が肝心なり(穴太衆秘伝 心構えより)」
という「石との対話」の肝心は、とても文章では伝えることができないからだそうです。
穴太衆の末裔である粟田さんは、これまでも安土城や彦根城などの石垣修復を手掛けています。
講演では穴太衆が使う道具の紹介もありましたが、それは特別なものでも新しいものでもなく昔から使われている道具でした。
技術の確かさというのは道具ではなく、石を自在に操る職人さんのイマジネーションの力なんだなと感じました。
穴太衆の末裔・粟田純徳さん
最後に粟田さんより、心に残る名言として織田信長の言葉が紹介されました
「生まれながらに才能のある者は、それを頼んで鍛錬を怠る、自惚れる。
しかし、生まれつきの才能がないものは、なんとか技術を身に着けようと日々努力する。
心構えがまるで違う。これが大事だ。」
穴太衆の石積みという、長い歴史を経て受け継がれた特別な技能を持つ粟田さんが、あえてこの「才能よりも日々の努力が大事だ」という信長の言葉を大切に思うのは、「石の声を聴く」という穴太衆の技術の継承の方法に由縁するのかもしれません。
これから各地のお城を観に行った時、「この石垣は穴太衆が積んだのかもしれない」と思いながら見るのもまた興味深いですね。
お城ジオラマなど展示品も充実!
お城EXPO2016では、現存12天守のお城の模型と、全国各地40城のお城ジオラマの展示もありました。
国宝であり世界遺産でもある姫路城の模型。屋根が黒いので改修前かな?
特にお城ジオラマは、建物だけでなく城郭全体がジオラマになっていて、その広さや高低差がわかりやすくお城全体の姿がイメージでき素晴らしかった!
高知城のジオラマ。高低差がわかりやすいです
焼失した天主がある安土城のジオラマ。穴太衆の石垣も!
かなり精巧にできていますよね。40城ものジオラマが一同に展示される機会はめったにないことなので、お城ファンには嬉しい限り!
物販コーナーもあり、お城グッズや書籍、プラモデルのほか、各城下町の特選お土産品も並んでいました。
2016年大河ドラマ真田丸の人気もあって真田関連のグッズ多し!
城下町の銘菓やお酒も一同に。ガチャガチャもありました!
また、「城郭の浮世絵展~松﨑コレクション~」のコーナーでは江戸から幕末、明治にかけて活躍した浮世絵師によって描かれた武将や戦場、城を舞台にした浮世絵10点が展示され、「厳選城絵図展」では、日本城郭協会所蔵の城絵図(複製品含む)8点が展示されました。
日本の古地図に表されているお城の絵。こうしてみるとお城って各地に様々あったんですね。
お城がますます好きになりそう!
パシフィコ横浜会議室1〜5階すべてを使った展示で、さらに3日間の開催でしたが、1日では見きれないほど大充実のお城EXPO2016でした。
特に「厳選プレミアム」という「お城スペシャリスト」たちの講演やトークイベントは、どれも聴き逃したくないような貴重な内容ばかりでした。
前編で紹介した春風亭昇太さんの山城トークイベントや今回の穴太衆末裔の粟田さんの講演の他にも、「小田原攻めの実態に迫る」というテーマでのフォーラムや、大河ドラマ「真田丸」の時代考証を担当した平山優さんの講演もあり、ドラマを見ていたファンには大変興味深い内容でした。
他にもお城の研究者だけでなく、城郭カメラマンさんやお城イラストレーターさんなど違った角度からお城を楽しむさまざまな「お城スペシャリスト」が登場し、例えばドローンを使った撮影が可能になったことで、ますます城郭写真のおもしろさが進化した話なども聞くことができました。
会場も大人から子どもまで沢山の人で常に賑わっていて、昨今のお城ブームの盛り上がりを感じました。3日間の入場者数は19,000人にもなったそうです!
天守のあるお城だけがお城ではなく、山城も城の原点としてとても魅力的だということや、攻める気持ち&守る気持ちで城郭を歩いてみるおもしろさなど、お城巡りの楽しさをたくさん教わった3日間でした。
お城EXPO2016はこうして大盛況で幕を閉じましたが、実は今回が初開催だったそうです。
これからもお城ファンとお城のある地域との交流や、城郭研究の発展のために継続的に開催していくことを予定しているそうです。
終わったばかりなのに気が早いですが、今年の開催内容が決定するのが待ち遠しいです!