神奈川県民ホールギャラリー「アート・コンプレックス」シリーズ アーカイブ
パフォーミングアーツ=ブラックボックス、アート=ホワイトキューブという枠を飛び越えて、まちなかのカフェ、電車内、路上など様々な日常空間に芸術表現の場が広がりをみせてきている昨今ですが、それに加えて美術展そのものがクロスオーバーなパフォーマンスの現場になるということも、より身近になってきたのではないでしょうか。ここでは、2007年から作曲家・ピアニストでもある一柳 慧監修のもと、いち早く先鋭的な手法でそのことを行ってきた神奈川県民ホールギャラリーの「アート・コンプレックス」シリーズに焦点をあててみました。
舞台芸術において演出家による総合化が一般的な方法論だとすれば、このアート・コンプレックスは、より個々の独自性に重きをおき「様々な表現分野がそれぞれ独立しながらもぶつかり合う場」を目指しているとのこと。2007年からの「アート・コンプレックス」シリーズのあゆみをまとめてみました。
アート・コンプレックス2007〜のあゆみ
塩田千春 展「沈黙から」 × コンスタンツァ・マクラス & ドーキー・パーク「沈黙」
ドイツを拠点に世界各地で活躍する作家・塩田千春展の展示空間で、ベルリン在住の振付家・コンスタンツァ・マクラスの新作公演と多和田葉子・高瀬アキによるパフォーマンスを展開。
左:塩田千春展《沈黙から》 中央:コンスタンツァ・マクラス&ドーキー・パーク 右:多和田葉子×高瀬アキDUO:音の間 ことばの魔 撮影:西村 康
小金沢健人 展「あれとこれのあいだ」 ×
一柳慧プロデュース「音楽×能×映像の共演」|三輪眞弘 プロデュース 「愛の賛歌-4ビット・ガムラン」
作曲家の一柳慧、三輪眞弘それぞれのプロデュースに、映像作家の小金沢健人が加わり、2夜の演奏会を開催。第一夜は、和&洋、音楽&舞踊&ヴィジュアル・アートという多角的なコラボレーションを繰り広げた一柳プロデュース。第2夜は、「愛の賛歌-4ビット・ガムラン」の演奏に小金沢健人のアートが折り重なり、独創的なガムラン世界を出現させた三輪眞弘プロデュース。
左:小金沢健人《速度の落書き》 中央:音楽×能×映像の競演 右:愛の賛歌−4ビット・ガムラン” 撮影:佐藤実咲
「日常/場違い」展 × 首藤康之・中村恩恵「時の庭」
トップダンサーとして世界的に活躍する首藤康之が、オランダ在住の美術作家佐藤恵子のインスタレーション作品に触発され、作家自身と対話を重ねて構想をあたため実現。振付けにはキリアンはじめ気鋭のアーティストと共同制作を重ねる中村恩恵を迎えダンスと美術が融合した新たな作品を創出。
左:佐藤恵子《変容》 撮影:田中雄一郎 中央・右:時の庭 撮影:matron
泉 太郎展「こねる」 × 一柳慧・山下洋輔・有馬純寿スーパー・セッション
50年代NYに渡り帰国後も第一線で音楽界を牽引し続ける一柳慧、JAZZの世界はもとより、オーケストラや世界のアーティストらと共演するなど国内外で広く活躍する山下洋輔、ライヴ・エレクトロニクス界の第一人者である有馬純寿ら第一線で活躍する音楽家が、新進気鋭のアーティスト泉太郎の映像世界を舞台に、ガーシュインの<ラプソディ・イン・ブルー><プレリュード>などの名曲を熱演。
左:泉 太郎《靴底の耕作》 中央・右:一柳・山下・有馬スーパー・セッション 撮影:青柳 聡
「日常/ワケあり」 × ジョン・ケージ生誕100年「せめぎあう時間と空間」
生誕100年を迎えたジョン・ケージに焦点をあて「不確定性」をテーマにパフォーマンスを展開。深遠な光がニューヨークを拠点に活動するアーティスト田口一枝のインスタレーションを舞台に、ケージとの親交でもよく知られる一柳慧をナビゲーターに迎え、北村明子の構成によるパフォーマンスを展開。
左:田口一枝《reum/stream》 中央・右:せめぎあう時間と空間 撮影:田中雄一郎
「日常/オフレコ」 × つむぎねパフォーマンス「さく」
青田真也、安藤由佳子、梶岡俊幸、佐藤雅晴、八木良太という気鋭作家5名による「日常/オフレコ展」を舞台に、宮内康乃が率いる音楽グループ「つむぎね」が「オフレコ」というコンセプトから引き出された「新月」を意味する言葉「朔」をテーマにパフォーマンスを展開。
左:日常/オフレコ展展示風景 撮影:杉山 豪介(Gottingham Inc.) 中央・右:つむぎねパフォーマンス「さく」