女神たちが奏でるドビュッシーに酔いしれる
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File.3 クロード・ドビュッシー没後100年 室内楽回顧展
(森光三朗/音楽ライター)
交響詩「海」で有名なフランスの大作曲家、クロード•ドビュッシー(1862〜1918)は、最晩年になって「様々な楽器のための6つのソナタ」の作曲を決意した。それは、当時隆盛を誇ったドイツの作曲家に対抗し、フランス音楽の素晴らしさを世に知らしめるためでもあった。
のっけから大真面目な書き出しになってしまったが、当時、そして現在でも、クラシック音楽界の作曲家といえばドイツ系の人がほとんど。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンはもちろん、ブラームス、ワーグナー、メンデルスゾーンなどなど、思いつくままに挙げてみると全員ドイツ系の作曲家になってしまう勢いだ。
ちょっと乱暴な言い方ではあるが、構造・形式といったものにとこどんこだわったのがドイツ音楽。その「形式」とやらが少し見えてくると「ワカッタ!」気になってしまう。そしてそれが「楽しい!」「語れる!」となり、実は僕も大好きだ。
ではドビュッシーの音楽とは?
僕が初めて聴いたときの感想は、今もよーく覚えている。
よくわからない。
ふわふわしている。
何やらオシャレ?
キラキラしてきれい。
とれえどころがない音楽。
でも、とても自由な気がする…それが新鮮だった。
フランス印象派の画家のタッチを思わせるニュアンスがあるのも確かだ。
モネが、絵画という固定された平面の中で光の移ろいや時間の経過まで描き出そうとしたのであれば、ドビュッシーは、音楽という時間的芸術によって聴くものの感性に色彩感豊かで立体的なイメージを去来させた、といえるだろう。(ちなみに、ドビュッシー自身は「印象派」と呼ばれることを嫌がっていたらしい)
現代音楽の武満徹、ジャズピアニストのビル・エヴァンス。ドビュッシーに影響を受けた人たちの音楽も自由で捉えどころがなく、透き通るように美しい。
そんなドビュッシーの没後100年を記念して、室内楽作品を網羅した演奏会が行われる。会場は、少人数によるアンサンブルを楽しむにはうってつけな室内楽の殿堂、横浜市青葉区のフィリアホール。
使用される楽器は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノ、フルート、そしてハープ。ソロ演奏から最大5人によるアンサンブルまで、様々な組み合わせによる音色・響きが楽しめるプログラムだ。
演奏するのは、フィリアホールの名物シリーズ「女神(ミューズ)との出逢い」常連の実力派ぞろいで、もちろんフランス音楽を得意にしている方ばかり。女性が嫌いではなかった(むしろトラブルが多かったと言われる)ドビュッシーが、あの世でニンマリと喜んでいる姿が想像できそうだ。
6曲を目指しながら、結局3曲しか作曲できずに亡くなってしまった晩年のソナタも、もちろん演奏される。
上野由恵(C)Akira Muto、川本嘉子、吉野直子(C)Akira Muto
個人的なおすすめは「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」。
神秘的でちょっと近寄りがたい雰囲気を持った主旋律。
一生懸命、耳でたどってみる。
ふと見失ったときの不安。
そして、再びどこからともなく現れてきたときに感じる安堵感。
この曲を演奏させたら世界一、吉野直子のひたすら美しいハープの妙技。ご堪能あれ!
フィリアホール25周年記念コンサート
クロード・ドビュッシー没後100年 室内楽回顧展
日程:2018年11月24日(土)
会場:横浜市青葉区民文化センター フィリアホール
開演:14:00/終演予定:16:30
料金:(全席指定)S席¥6,000/A席¥5,500