2014年10月、劇作家、演出家の横内謙介氏を塾長に迎えて開塾したマグカル・パフォーミングアーツ・アカデミー。2016年からは、毎年夏にホール公演を行っています。
2016年に『バイトショウYOKOHAMA-青春篇-』が幕を開け、2017年に『バイトショウ-国際篇-』、2018年に『バイトショウ-BEST盤-』と進化。4年目となる今年は、さらにブラッシュアップされた『バイトショウ-プラチナ盤-』が、8月15日〜18日に青少年センター紅葉坂ホールで上演されました。
その一部始終をレポートします!
幕が開くとその先に広い客席が…。
初演時、ステージの回り舞台の上に客席を仮設する「Theater In Theater形式」が話題となりましたが、舞台を観客ごと回転させ、360度、劇場のすべてを演技スペースとして活用するスタイルは今年も健在。ドキドキするオープニングです。
5月には新メンバーが加わり、アカデミー生は総勢48名にパワーアップ!
客席から舞台へ。次々と駆け寄って来る俳優たちの、熱く真剣な眼差しに惹きつけられます。
帽子を被って、全員のダンス・ナンバーからスタート。
観客が座っているのは、ダンサーたちが踊る舞台の上。アップテンポの音楽とダンサーのステップから生まれる地響きのようなリズムに、観客の心もヒートアップ!
舞台が回転すると、上手側にステージが。プロのダンサーを目指す3人の女性の物語がはじまります。ダンスの練習かバイトか。夢と現実の生活。選びようのない選択に、もめ事が絶えない様子。
再び舞台が回ると、下手側ではもう一つの物語がはじまっています。バンドデビューを目指す仲間が、バイトに明け暮れる生活を語り、歌います。
舞台は、いくつかの物語をオムニバスで展開。ショータイム的なシーンも織り込みつつ、グングン進んでいきます。
ロック、ポップス、ジャズなど、幅広い音楽のエッセンスを取り入れているのも見どころのひとつ。アカデミー生たちにとっても、すごい経験になるハズ。
もちろん、笑いの要素も大切です。
夢とバイトの合間には、小さな恋も芽生えますが…
思い描く夢のすれ違いから、短い恋は終わりを告げ…
ちっとも進まない時計の針を睨みながら、皿洗いの日々。
テンポの良い展開と個性的なダンスに魅せられます。
そして登場、バイトするアイドル・グループ<紅葉坂81-10>。
「未来クリエイト」を歌って踊って、笑顔たっぷり!
明るくはじけた後には、再び厳しい現実の世界へ。
重い物語とは裏腹に、ステージ横のハシゴを舞台セットとして活用したシーンに「N.Y.みたいでカッコイイ!」と思ってしまいました。
仲間に裏切られ、夢破れ、再びバイトに明け暮れる日々…
夢を追いかけるには、一緒に頑張る仲間が必要。
仲直りのシーンにホッとしました。
見どころは、やっぱりダンス!
全体のテーマ曲でもある『バイトショウ』は、様々なアレンジで何度も登場します。
だんだん耳に馴染んできて、見ている側も一緒に歌って、踊り出しそう!
ポーズが決まってハッピーエンド…かと思いきや…
一緒に頑張っていても、一緒に幸運が訪れるとは限らない。盛り上がった直後に、そんなクールな現実が訪れます。
だけどダイジョウブ。仲間がいるから、まだまだ頑張れる!
夢を追う若い世代に。
かつて熱い日々を送った大人たちに。
そして夢見ることもなく歳をとってしまった人たちにも。
ミュージカルだから伝えられる、熱いメッセージを感じる舞台でした。
歌、ダンス、演技など各分野の一流講師陣による実践的なレッスンを受けてきたアカデミー生たち。ステージ上の物語は、彼らにとってはリアルそのもの。
がんばれ!
マグカル・パフォーミングアーツ・アカデミーの仲間たち!
《プロダクションノート》
横内謙介さん(作・総指揮)
マグカル・パフォーミングアーツ・アカデミーは第5期生が加わり、48名になりました
2014年10月の開塾からまもなく5年。今春のオーディションには演劇やダンスの経験者、さらに春の成果発表会を観た若者が応募してくれるなど、アカデミーの存在が世の中に認知されてきた手応えを感じています。
一方で、第5期生と既存メンバー間に実力差があることに気づき、驚きました。恵まれた講師陣の元で鍛えられてきたのだから当然ともいえますが、開塾当初は“素人の集まり”でしたからね(笑)。大きく成長してくれたものです。
実際、メンバーの中には音大で本格的に声楽を学んだり、プロの舞台で活躍する者も出てきました。彼らを観て育つ後輩たちは、これまで以上のスピードで成長することが期待できます。
今年の本公演『バイトショウ-プラチナ盤-』の見どころは?
特に注力したのは「歌」です。“まだまだ”な部分もありますが、発声や技術には格段の進歩が見られるので、ソロを含め、新曲を4曲加えました。
基本的な物語は同じですが、細かなエピソードや配役は毎回変わるので、アカデミー生にとっては常に挑戦です。ダンス・ナンバーなどお馴染みのシーンをくり返すことで、より深い表現を身につけて欲しいと思っています。
今後の活動について聞かせてください
2021年、県立神奈川総合高校に「舞台芸術科」が新設されることが決まりました。もちろん、これでアカデミーの役割が終わるわけではありませんが、この先もう1歩踏み出した展開が必要になると思っています。
神奈川県立青少年センターは、演劇活動を行うにあたって理想的な環境が整っています。今後もここを拠点として若者たちを応援し、神奈川県全体の演劇活動を盛り上げていきたいですね。