古臭いなんて言わせない!観て、やって、創って楽しい相模人形芝居
行って、みて、感じるアートの世界
File.23 神奈川県立青少年センター『相模人形芝居大会』
井上みゆき(マグカル編集部)
「伝統芸能」に興味はあるのだが、なんとなく高尚で近寄りがたいイメージがあった。
でも、地域のお祭などで御神楽や人形芝居を目にすると、みんな気軽に楽しんでいる雰囲気が伝わってきて、なんだか羨ましい…。
そう思っていたら、神奈川県には「相模人形芝居」という民俗芸能が伝わっている地域があり、世代を越えて楽しんでいるというではないか。これは行ってみるしかない!
というわけで、さっそく稽古場にお邪魔した。
現在活動しているのは、国の重要無形民俗文化財の指定を受ける下中座(小田原市)、長谷座(厚木市)、林座(厚木市)と、県の指定を受ける前島座(平塚市)、足柄座(南足柄市)の五座。2月にはこの五座が集結する「相模人形芝居大会」が開かれる。
今回お邪魔したのは、小田原市小竹を拠点とする下中座。五座の中でもとくに活発に活動している団体で、35名の座員の年齢構成は10代から80代までと幅広い。
また、座員を地元出身者に限定している団体も多い中、下中座は希望者に広く門戸を開いているため、人形芝居に惹かれて東京の八王子から通う座員もいるそうだ。それほど相模人形芝居は魅力的なんだな、と興味が増す。
相模人形芝居は、文楽などと同じように、一体の人形を三人で遣うのが基本。首と右手を遣うのが「主遣い」。左手を「左遣い」、両足を「足遣い」が操る。主遣いが明確な意思を持って人形の動きをリードするわけだが、言葉で指示を出すことはできないので、3人で呼吸を合わせることが重要だ。
見学させていただいたのは、相模人形芝居大会で上演する『伽羅先代萩(めいぼく せんだいはぎ)』ではなく、新作『曽我物語』の稽古。民俗芸能というとどこか古臭いイメージがあったけれど(失礼!)、新しい作品を自分たちで創っているなんてなんてちょっと驚きかも。
この日は、文楽座の吉田簑二郎さんを招いて、新作の演出等にアドバイスをいただくとともに、人形の管理技術についても指導をいただいていた。
大阪文化の文楽座と江戸文化の相模人形芝居下中座では、同じ三人遣いの人形芝居でも人形の遣い方に多くの違いがあるそうだが、簑二郎さんは、お互いの伝承に悪影響を与えないよう、注意しながら助言してくださるそうだ。
2月の相模人形芝居大会で上演する『伽羅先代萩』も楽しみだが、3年かけて製作に取り組んできたという新作も気になる。春の公開が待ち遠しい。
休憩時間に、期待の若手女子をキャッチ!小学生の体験教室で出会ったり、先輩が人形を遣う姿を見て「かっこいい!」と思ったなど、参加のきっかけはいろいろだ。共通しているのは「演ってみたら面白かった」というシンプルな思い。
「人が少ないから自分にもチャンスがありそう、と思って入ってみたら、これが予想以上に楽しくて(笑)。ずっと続いちゃってますね」
屈託なく笑いながら「梨割り」の“かしら”を見せてくれた。
額の部分からパカッと割れると、中は真っ赤で目玉がキョロキョロ…。
いわゆる「斬られ役」の“かしら”なのだそうだが、突然パカッと割れるからびっくりするではないか。でも、グロテスクなのにどこかユーモラスなので、つい笑ってしまった。
勝手に“敷居が高い”と思い込んでいた民俗芸能は、実はとても親しみやすい世界のようだ。まずは五座が一堂に会する2月の舞台を観てみなくては。そこでビビッときたら、来年は舞台に立つことを目指してみようかな。
★こちらのイベントは終了しました。
第47回相模人形芝居大会
[日時]2020年2月11日(火・祝) 12:30(12:00開場、16:35終演予定)
[会場]神奈川県立青少年センター ホール
[定員]750名
[料金]無料(要事前申込)
[申込方法]往復はがき1枚に、下記の必要事項を記入のうえ、申込み先へ送付してください。1枚のはがきで2人まで同時に申し込みできます。申し込み多数の場合は抽選となります。返信の発送は1月下旬を予定しています。往復はがきの返信は入場券(指定席)として使用しますので、当日会場までお持ちください。
●郵便番号
●住所
●氏名
●電話番号
●参加人数(2人まで可)
●参加者氏名
●返信用宛先(返信の面) を書いて往復はがきでお申込みください。
【宛先】〒250-8555 小田原市荻窪300 小田原市文化財課
[申込締切]1月15日(水) *消印有効(多数抽選)
[主催]相模人形芝居連合会事務局(小田原市文化財課)
[問合せ]0465 -33-1717〈相模人形芝居連合会事務局(小田原市文化財課)〉