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美術・写真アート

ピカソからウォーホルまで。3館の“コレクション”が響き合う「トライアローグ」展

ピカソからウォーホルまで。3館の“コレクション”が響き合う「トライアローグ」展

モネ、ルノワールなどの有名作品の“来日”がメディア等で紹介されると「美術館へ行こう!」という気持ちが盛り上がります。横浜美術館で開催中の「トライアローグ」展(2021年2月28日(日)まで)は、コロナ禍もあってか、そんな“目玉作品”がないのかな、と、ちょっと淋しい気がしていました。

ところが!

実際に行ってみると、ピカソやウォーホルなどの有名作品が勢ぞろいしているではありませんか! 今回の企画は、横浜、愛知、富山の公立美術館が、それぞれに所蔵する作品を“持ち寄る”という発想から生まれたものだそうです。美術館は「展覧会をみに行く場所」と思っていましたが、こうしたコレクションを収集し、その見方・楽しみ方を伝えることも大切な役割なのかも…?
そんな素朴な疑問に、横浜美術館主任学芸員の松永真太郎さんにお答えいただきました。

「美術館=展覧会をみに行くところ」というイメージがあります

確かにそのイメージが強いかもしれませんね。実際、日本の美術館の多くは大作を借り受けた「企画展」を年に数回開催することに追われ、自館の所蔵品は「常設展(コレクション展)」としてオマケ的な位置付けで公開する流れになっている面があります。ただ、これは日本特有の状況かもしれません。
たとえば、ルーヴル美術館やオルセー美術館などは、いつ訪れても素晴らしいコレクションをみることができるので、「企画展をみに行く」という発想はないですよね。けれど日本の美術館の場合、自館のコレクションだけで来館者に満足していただくには、質・量ともに十分でないケースがほとんどです。そこで、皆さんの期待に応えるためにも、大作を借り受けた企画展が重視されてしまうのです。

展覧会以外に求められる、美術館のお仕事とは?

もちろん、展覧会の企画・運営は美術館の仕事の一つではありますが、根幹となるのは「作品の収集」です。美術史の流れをたどって未来へ残すべき作品を収集し、次世代に伝えてゆく。つまり、収蔵品こそがその美術館のアイデンティティーと言えるでしょう。収集した作品に関して調査・研究を行うのが学芸員の仕事であり、展覧会とは本来、その成果を発表する場と位置付けることができます。

今回の「トライアローグ」展は、3館の作品収集のコンセプトが近いからこそ実現した、ということですね

その通りです。単館のコレクションだけでは訴求力が弱いのなら、同様のコンセプトでコレクション収集を行っている美術館同士がタッグを組んではどうか。それが今回の企画の発端です。限られた予算の中で魅力的な展覧会を開催しようと国内のリソースを見直してみたところ、愛知県美術館と富山県美術館に目がとまりました。両館とも作品収集の指針が横浜美術館と重なるので、3館で手を組めば、それぞれの手薄な部分を補完し合い、20世紀西洋美術を読み解けるのではないか。そう考えてお声がけしたところ、快諾していただけたのです。

たとえば、パブロ・ピカソの「肘かけ椅子で眠る女」(1927年)は当館の“顔”のひとつですが、愛知県美術館所蔵の「青い肩かけの女」(1902年)、富山県美術館所蔵の「肘かけ椅子の女」(1923年)と「座る女」(1960年)という年代の異なる女性を描いた作品と並ぶことで、違った世界がみえてきます。
また、当館でジュアン・ミロといえば「花と蝶」(1922-23年)ですが、愛知にとっては「絵画」(1925年)、富山にとっては「パイプを吸う男」(1925年)こそが“ミロ”。横浜美術館のリピーターにとっては「え?」と感じるほど作風が違いますよね。でも、この3作品が並ぶことで、わずか2〜3年の間にミロの画業に劇的な変遷があったことがわかるし、見慣れた作品を新たな視点で楽しんでいただけると思います。

国内の美術館による“コラボレーション”は今後もありそうですね

もちろんです。当館のコレクションとマッチングすることで興味深い展覧会が開催できそうな美術館は20館はあるので、組み合わせのバリエーションは無限です。コロナ禍という、海外から作品を借り受けることが難しい状況もありますが、自館のコレクションを活かすことを考えれば、今後は国内の美術館がタッグを組む企画が増えていくのではないでしょうか。

横浜美術館は約13,000点のコレクションを有していますが、それらを100%活用できているわけではなく、残念ながら十分に調査しつくされていないものや、なかなか展示される機会のない作品があるのは事実です。大切なコレクションを活用するには、私たち学芸員が作家や作品について研究を深めることが重要なのは、言うまでもありません。「トライアローグ」展では、お互いが所蔵している作品を持ち寄って展示するだけではなく、他館が所蔵する作品も交えて調査・研究を深めるよい機会でもありました。

「トライアローグ」展閉幕後、横浜美術館は大規模改修工事のため2年を超える休館に入ります。その間、学芸員の皆さんは何をされているのでしょう?

先ほど「展覧会は美術館の仕事の一つ」と申し上げましたが、実際には年4回ほどの展覧会を回すことで精一杯という状況があり、収蔵品の調査・研究に十分な時間が割けずにいました。その意味では2年以上もの休館はめったにない機会ですので、今までできていなかったことに取り組みたいと思っています。外の美術館での研修などで知見を高めるチャンスですし、自館のコレクションを見直して新たな視点を構築できたらいいですね。
リニューアル・オープンを楽しみにしていてください!

トライアローグ
浜美術館愛知県美術館富山県美術館
20世紀西洋美術コレクション

[会期]11月14日(土)〜2021年2月28日(日)
[開館時間]10:00〜18:00(入館は17:30まで)
[会場]横浜美術館
[休館日]木曜日(2月11日を除く)、12月29日(火)〜2021年1月3日(日)、2月12日(金)
[料金]一般¥1,500/大学・専門学校生¥1,100/中学・高校生¥500/65歳以上(要証明書)¥1,400/小学生以下無料/障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)無料
※日時指定予約制
[問合せ]045-221-0300(横浜美術館)

詳しくはこちらをご覧ください。

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★こちらのプレゼントの応募は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。

【プレゼント募概要】
横浜美術館で開催中(〜2021年2月28日(日)まで)の「トライアローグ」展の観覧券を5組10名様にプレゼントいたします。

【応募方法】
ご希望の方は、下記の応募フォームからご応募ください。皆様のご応募をお待ちしております。

【応募〆切】
12月23日(水)23:59まで

【抽選・当選発表】
ご当選者の発表は観覧券の発送をもって代えさせていただきます。(神奈川県文化課より郵送いたします。)
※ご当選者の住所が転居先不明などにより観覧券をお届けできない場合は、当選を無効とさせていただきます。
※いただいた個人情報は抽選以外の目的には一切使用いたしません。

*本展は、インターネットでのオンライン日時指定予約制です。招待券をお持ちの方も、オンライン日時指定が必要です。
ご予約、ほか詳細は特設サイトにてご確認ください。

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