もったいない野菜をびん詰めに!FARM CANNING ・西村千恵
逗子市でオーガニック野菜や規格外の野菜を使ったびん詰めの製造販売やケータリング事業を展開するFARM CANNING(ファームキャニング)。
今回は、「もっと畑を日常に」をコンセプトに、循環型農業や規格外の野菜と向き合う代表 西村千恵さんに、お話を伺いました。
始まりは畑の記憶をびん詰め
もともと都内のオーガニックカフェの立ち上げや運営の経験をもつ西村さん。第二子の出産を機に地産地消、地元の野菜を食することを望み、それを楽しみに都内から葉山町へ移住します。ところが実際に住んでみると、なかなか無農薬で栽培された地元野菜には出会えなかったそうです。
ある時、無農薬・無化学肥料栽培をしている農家さんと出会います。無農薬栽培の大変さや必要性、そして命の美しさを学ぶと同時に、それでも出てしまう規格外、いわゆる「わけあり品」は手間暇かけて育てても売り物にならないことが多いという事実を知ったそうです。
それをなんとかできないか、農家さんに少しでも還元できないのか。その想いから一念発起、規格外の野菜を瓶詰めしてみようと一人で立ち上げたのがFARM CANNING。
瓶詰めをするという意味を持つ“canning”。まさに「畑の記憶を瓶に詰めて持って帰る!」と(?)自宅で試作を繰り返しながら、マルシェで瓶詰めの販売を始めました。
心にも体にも良いものを
「食事と健康は密接に関わっているから、体に良いと思うものを広めていきたい。」と、西村さんは話します。
瓶詰商品としてジャムやピクルスをよく目にしますが、ジャムはそれ自体に糖質が多く、パンやお菓子に好まれ、ピクルスもパンやお肉に合わせ食するのを好まれる商品です。
商品開発を進める上で西村さんが大切にしていることは、一つ目が「心にも体にも良いもの」。二つ目が「私たち日本人の体に合ったお米と一緒に食べられるおかずに使えるようなもの」。
試作品作りに失敗!家族から大クレーム!
看板商品である、バーニャカウダソースが出来上がるまでは失敗と成功の繰り返しだったと話す西村さん。
特にかぼちゃは大失敗、一日で発酵が始まり異臭を放ち始め、家族から「変な匂いがする!」とたちまち大騒ぎに。かぼちゃは常在菌の数値が高く、菌が活性化しないようにお酢やレモンを加えてpHを安定させる必要があるということを知らなかったと、当時の失敗を懐かし気に教えてくださいました。
何度も失敗を繰り返し、せっかく廃棄から救ったと思っていた規格外野菜を試作段階でダメにしてしまうたびに、自分の無力さを感じたこともあったそうです。
それでも辞めずにこれまで続けてこられたのは、「世の中に必要とされているから続けられる。」と西村さんは力強く話します。
看板メニューのバーニャカウダソース
バーニャカウダソース(ビーツ、人参)、ジェノベーゼソース(小松菜)
瓶詰めの商品開発に4年かけて色々作ってきましたが、塩麹を使ったバーニャカウダソースは、定番商品となりました。
「美味しさはもちろん、誰が調理しても品質を保ち、かぼちゃの時のように発酵させずに保存ができ(笑)、アンチョビを使わないため、植物由来の原材料のみで作ることができました。」そう話す西村さんの表情にはやはり安堵と喜びの想いが滲んでいるように見えました。
こちらのバーニャカウダソースは、定番商品に加え季節限定商品もたくさん販売されています。
現在は今まさに、旬なカリフラワーのバーニャカウダソースが新しく仲間入りしています。甘みもあり、とってもおいしいです。少しずつ出回ってきた菜の花など、苦味のあるお野菜にもよく合います!
また、こちらはこんにゃくや大根はもちろんのこと、湯豆腐や鍋物に添えてもお楽しみいただけるゆず味噌です。寒い日には、ファームキャニングのお手製味噌で心の中から温まること間違いなし。
もう一つ、「もったいないケータリング」という規格外の野菜を活かしたケータリング事業を展開している西村さん。紙皿などのゴミをなるべく出さないように工夫し、さらに依頼を受けてから野菜を仕入れて料理を作るため、売れ残りが発生しないビジネスモデルです。
食の背景に想いを馳せてみてほしい
畑クラブでは、仲間たちと畑仕事を通して自然の循環を学ぶ
農業と環境や食事と私たちの健康との繋がりに探究心とリスペクトを持って学び続ける西村さんだからこそ、「明るく、楽しく、命の循環の美しさを伝えたい」と話します。
続けて、
「地域の食のことを、少し時間をかけて考えてみてほしい、ぜひ、食の背景に想いを馳せてみてほしい」と西村さんは願っています。
例えば、神奈川県は、戦後に近郊農業が栄えてきた歴史があり、山も海もあるので、実はいろいろと採れる地域だそうですが、現在神奈川県で生産されている農産物は何かな、環境の変化で食せなくなった魚介類は何かな、と疑問を持ってみる。または、ゲームのように楽しみながら神奈川県産のものだけ買って食べてみる、など。
「一人ひとりが生産や食事に意識を持つと、環境、健康へも意識が持てるようになり、きっと少しずついい方向へ変わっていける。オーガニック農家さんが増え、一方で食品ロスが減っていき、それが当たり前になる未来は、私たち一人ひとりが握っていると思います。」と、笑顔で答えてくださいました。
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