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美術・写真

世界中の野草アートが横浜の街を染める!第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

世界中の野草アートが横浜の街を染める!第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

2024年3月15日より、横浜にて3年に一度開催される現代アートの国際展『横浜トリエンナーレ』が開催される。1月17日に行われたオンライン記者会見では、第8回横浜トリエンナーレの特徴やプログラムについての詳細が発表された。


左から帆足亜紀/蔵屋美香/リウ・ディン(劉鼎)/片多祐子/米澤陽子
写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

2001年にスタートした横浜トリエンナーレは、国内で展開される芸術祭の中でも長い歴史を誇る。第8回となる今回は北京を拠点として活躍するリウ・ディン(劉鼎)とキャロル・インホワ・ルー(盧迎華)をアーティスティック・ディレクターに招き、横浜駅から山手地区までの広範囲にわたって、メインテーマ『野草:いま、ここで生きてる』にまつわる作品やプログラムを展開する。

第8回横浜トリエンナーレの総合ディレクターを務める横浜美術館館長の蔵屋美香は、トリエンナーレに向けた思いをこう語った。「我々の社会は戦争、気候変動、経済格差や不寛容といった大きな問題に直面をしております。横浜トリエンナーレはこの20年あまり、世界の人々が作ったアート作品を通して、あらゆる地域のあらゆる方々の異なる意見と対話をし、個々人がいかに手を取り合って、こうした世界を生き延びるかということを考えてまいりました。」

今回のトリエンナーレは『野草:いま、ここで生きてる』の大きな枠組みの中に、二つの柱を立てている。一つ目の柱はアーティスティック・ディレクターが手がける同名の国際展『野草:いま、ここで生きてる』だ。「野草」のテーマは、激動の時代を生きた中国の小説家・魯迅の詩集『野草』にちなんでいる。国際展では魯迅の生きた時代から現代までの100年の間に起きた歴史的なできごとを辿りながら、現代社会に対峙し、変化をもたらそうとするアーティストたちの作品を紹介していく。アーティスティック・ディレクターのキャロル・インホワ・ルーはビデオメッセージを通じて、「野草」のテーマにについてこのように述べた。

「今回の横浜トリエンナーレはアートと現実社会のつながり、アートと思想との結びつき、アートが歴史に刻む物語に焦点を当てています。『野草:いま、ここで生きてる』と題した交響曲はそんな多種多様なレイヤーからつくられています。「野草」とは砂、嵐、川、石、夜空、遠いところ。私たちが感じる世界そのものです。過去から今に至る歴史を通じて、私たちは暗闇といばらを洞察し、同時に花びらと星の光も見ています。」


左:リウ・ディン 右:キャロル・インホワ・ルー
撮影:大野隆介
写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

キャロルの言う「多種多様なレイヤーからつくられた交響曲」は、全七章によって構成される。私たちの暮らしの現状を描く『いま、ここで生きてる(Our Lives)』から、近代に対する批評をあらわす『苦悶の象徴(Symbol of Depression)』までを通して、「それぞれの作家たちの生き方やメッセージが重層的に重なり合い、未来へ向けた私たちの思考を促し刺激する」構成であることが、キュレーターの片多裕子より説明された。

国際展にはオンライン記者会見の時点で、世界各国から67組のアーティストの参加が決定している。その内、30組が日本初出展となる。トナカイ遊牧民サーミ族の血筋をひくヨアル・ナンゴは、現地の素材を取り入れた仮設の構築物を通して、現代社会における資源不足や気候変動という問題に対峙し、人と自然の共生の在り方を示す。また、ウクライナのリヴィウで結成された三人組のコレクティヴ『オープングループ』は、ロシアのウクライナ侵攻によってリヴィウの難民キャンプに訪れた市民を取材し、ウクライナで起きている戦争の実態をリアルに捉えた作品『Repeat After Me』を公開する。


オープングループ
《Repeat After Me》2022 (video still), Courtesy of the artists

国際展は横浜美術館をはじめとして、全5会場で展開される。その内、クイーンズスクエア横浜とみなとみらい線元町・中華街駅連絡通路では無料空間での展示を楽しむことができる。今回のトリエンナーレでリニューアルオープンを果たす横浜美術館では、来館者に優しい鑑賞環境を提供するための工夫が凝らされており、小さな子供連れや、体調に不安がある方でも、各々のペースでアートを楽しむことができる。体力のある人が前提とされている多くの芸術祭とは違い、「長距離を歩かず、一つの会場の中でたくさんの作品を、安心できる環境でご覧いただける美術館会場を使ったトリエンナーレ」をメリットとして挙げている。


横浜美術館
撮影:新津保建秀

このように「美術館会場を使ったトリエンナーレ」の良さを謳いながらも、同時に「まちにひろがる大きな横浜トリエンナーレ」を実現しているのが、今回のトリエンナーレの特徴の一つだ。それが当トリエンナーレの二つ目の柱となる、市内の文化・芸術活動拠点による『アートもりもり!』である。統一の「野草」テーマのもと、地域の文化・芸術拠点が幅広い展示やプログラムを展開する。無料のプログラムも含めて、子供から大人まで、そしてアート初心者から本格的な演目を好む方まで、それぞれが思い思いに楽しむことができるイベントだ。『BankART Life7』や『黄金町バザール2024』は、国際展「野草」展とのセット券も販売されている。

国際展『野草:いま、ここで生きてる』と「アートもりもり!」は共通のテーマで繋がっているだけでなく、どちらも横浜トリエンナーレが当初から掲げている「現代アートの良質の入門編」になるという目標に立ち返っている。国際展では、ほぼ全ての作品にコンパクトで専門用語を使わない、わかりやすい解説がつき、一方『アートもりもり!』では作品を現代アートに限定せず、幅広いジャンルや形式のプログラムが展開される。

会見の終わりに、蔵屋総合ディレクターが当トリエンナーレの特徴をこのように締めくくった。「国際的な視点と地に足をつけて日々を生きる中でアートを考えてきた拠点。この二つを持って国際性と地域性の側面からたくさんの方々にアートを楽しんでいただきたいと考えています。」第8回トリエンナーレは2024年3月15日から6月9日までの間で開催される。世界の、そして地域の「野草」アートが横浜の街を染めるこの貴重な機会に、是非足を運んでみてほしい。

【チケット情報】前売チケットは2024年1⽉18⽇(⽊)10時から発売開始

・横浜市にお住まいの⽅はお得な価格でチケットをご購⼊できます。
 チケット購⼊の際に居住を証明するものを確認させていただきます。
・学⽣チケットをお持ちの⽅は、各会場で在学を証明する書類(学⽣証等)を提⽰してください。
・鑑賞券、セット券を購⼊済の⽅でもフリーパスへのアップグレードが可能です。差額分を横浜美術館会場チケット窓⼝にて
 お⽀払いください。(差額は[鑑賞券]⼀般3,000円/学⽣1,800円、[セット券]⼀般2,000円/学⽣1,000円です。)
・障がい者⼿帳をお持ちの⽅と介護の⽅1名は無料です。

開催概要|第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで⽣きてる」
アーティスティック・ディレクター:リウ・ディン(劉⿍)、キャロル・インホワ・ルー(盧迎華)
会期:2024年3⽉15⽇(⾦)ー6⽉9⽇(⽇) 開場⽇数:78⽇間
休場⽇:毎週⽊曜⽇(4/4、5/2、6/6を除く)
開場時間:10:00ー18:00 (⼊場は閉場の30分前まで)| 6⽉6⽇(⽊)ー9⽇(⽇)は20:00まで開場
会場:横浜美術館、旧第⼀銀⾏横浜⽀店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路
主催:横浜市、(公財)横浜市芸術⽂化振興財団、NHK、朝⽇新聞社、横浜トリエンナーレ組織委員会
連携拠点:BankART1929、⻩⾦町エリアマネジメントセンター、象の⿐テラス、急な坂スタジオ
公式WEBサイト:こちら

【購⼊⽅法】
前売期間[1/18(⽊)10時から]
オンライン:公式WEBサイトにアクセスしてください。
会場窓⼝:セット券プログラム 会場
・BankART Station(みなとみらい線 新⾼島駅B1F)
・⻩⾦町バザールインフォメーション「⾼架下スタジオSite-Aギャラリー」(横浜市中区⻩⾦町1-6先)
 ご注意・横浜美術館で前売チケットは購⼊できません。
・フリーパスは、前売の取り扱いはございません。3/15(⾦)から横浜美術館にて販売します。
・⽇時指定(事前予約)ではありません。

会期中[3/15(⾦)〜6/9(⽇)]
オンライン:公式WEBサイトにアクセスしてください。
会場窓⼝:「 野草:いま、ここで⽣きてる」展会場横浜美術館
セット券プログラム 会場(上記前売会場のとおり)
ご注意
・「野草:いま、ここで⽣きてる」会場の、旧第⼀銀⾏横浜⽀店、BankART KAIKOではチケットは購⼊できません。
・フリーパスは、「横浜美術館」会場のみで購⼊できます。オンラインの取り扱いはございません。

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