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音楽

ヨコハマのジャズヒストリーと現在

ヨコハマのジャズヒストリーと現在

ジャズは横浜の文化史のひとつとして重要な役割を果たしてきた。

野毛〜伊勢佐木町〜関内エリアには現在、ジャズの生演奏が楽しめるスポットが40箇所近くあり、その中には日本独自の発展を遂げ今も残る“ジャズ喫茶”もいまだに存在する。狭いエリア内にこれだけ多くジャズ関連の店があるのは世界でも稀で、「ニューヨークくらいしか知らないし、ニューヨークよりも数は多い」と驚く海外ミュージシャンもいるほど。

夜の野毛本通1953年頃

夜の野毛本通 1953年頃(出典:横浜開港150周年 みんなでつくる 横濱写真アルバム)

アメリカでジャズの最初のレコードが録音されたのが1917年。横浜で最初のジャズ演奏がおこなわれたのが1925年(大正14年)。日本最古のジャズ喫茶「ちぐさ」が野毛の地に開業したのが1933年(昭和8年)。アメリカでチャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィス、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンなどモダンジャズ・ジャイアントが隆盛し始めたのが1940〜50年代なので、マイルス以前から横浜にはジャズの拠点があったことになる。横浜ジャズシーンが現代のように通信インフラが発達していない時代から、いかに港町という地の利を活かして外国の新文化を採り入れてきたかが伺える。

毎年10月に開催される「横濱JAZZ PROMENADE」は地域振興を兼ねたまちづくりフェスティバルとして、今年2017年で25周年を迎える。チケットを購入すれば、コンサートホール、ジャズクラブ、街角ライヴなど50以上の場所で同時開催されているジャズ演奏が一日中聴き放題ということもあり、2日間の会期中に毎年12万人以上が訪れる。みなとみらいエリアのレンタル自転車「baybike」の稼働率が一年間で最大になるのもこの2日間だという。レンタル自転車で街中を走り回るジャズファンがたくさんいるのだ。実行委員長鶴岡博氏によると、この25年間で当初4軒ほどしかなかったジャズクラブが現在の数にまで増えていったという。

横濱JAZZ PROMENADE」は、25周年を前に、39年の歴史があるデトロイト・ジャズ・フェスティバルと昨2016年から提携して相互交流を始めた。若手を発掘するジャズ・コンペティションを開催し、優勝した西口明宏サックストリオが今年9月のデトロイト・ジャズ・フェスティバルに出演することが決定している。また10月にはデトロイト側のコンペで優勝した若手が来日して横濱JAZZ PROMENADEに出演する予定だ。港町横浜として今後更なる国際化が進んで行く予定だ。

JP16 1009 赤レンガ倉庫1号館  Chris Collins(sax) and the Detroit All-stars (c)YJP(撮影:クルー伴)

JP16 1009 赤レンガ倉庫1号館 Chris Collins(sax) and the Detroit All-stars (c)YJP(撮影:クルー伴)

旭区で開催される「旭ジャズまつり」もまた28年を数える横浜エリア有数のジャズフェスティバルとして知られている。冬には「バレンタインコンサート」もあり、地域に根ざした活動を続けているのは「横濱JAZZ PROMENADE」と同様である。その他にも最近では、野毛地区の「ジャズde盆踊り」など、独自企画で集客をあつめるイベントが多数存在する。

横浜には、当然ながら横浜ローカルのジャズミュージシャンも多い。また年間を通して全国からジャズミュージシャンが横浜のクラブに演奏に訪れている。ジャズにはスタイルがたくさんあるのだが、横浜にいればどんなジャズでも聞くことが出来るのだ。

現代ジャズは多様化が図られ、ロバート・グラスパーを筆頭にヒップホップやポップ・ブラックミュージックとの相互影響により生まれた新しいスタイルも人気だが、横浜のミュージシャンはもっとオーセンティックに伝統的なジャズスタイルを継承する人が多い。アメリカで見てみると、ジャズの中心地ニューヨークでは、伝統的スタイルと常に生みだされる最新スタイルが混合している。地方都市となるデトロイトでは、やはり横浜と同じくして伝統スタイルが味わい深い。アメリカに近いカナダのモントリオールも大規模な街フェスティバル「モントリオール・ジャズ・フェスティバル」を持つが、保守的である。そう考えると、最先端のニューヨークを除いては、地方都市のジャズフェスティバルは、一般的な「ジャズ」というイメージそのままの、伝統スタイルが人気ということになりそうだ。

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