コンテンツにスキップ
演劇・ダンス

言葉の壁を越えたストリートダンスで世界へ! 4人組ダンスチーム「s**t kingz」インタビュー

言葉の壁を越えたストリートダンスで世界へ!  4人組ダンスチーム「s**t kingz」インタビュー

――s**t kingzさんのご活躍は、ダンスファンの方にはおなじみですが、改めてどんなダンスグループなのかをご紹介いただけますか?
 

shoji:s**t kingzは来年で結成10周年を迎えます。もともとは、みんながバラバラにクラブでパフォーマンスをしていたんですが、kazukiがこの4人に声を掛けてくれたのがキッカケで一緒に踊るようになり、アメリカで共にトレーニングを受けるうちに、「BODY ROCK」という大きなダンスコンテストで2年連続優勝するチャンスをいただきました。そこから海外でのパフォーマンスやワークショップを行う機会や、国内、韓国のアーティストさんの振り付けをする機会が増えて、3年前からは、自分たちでも舞台公演を行うようになりました。
 

s-skg_0158shoji

――身体を使った自己表現の方法にはダンスの他にも歌やバンド演奏、舞台演劇など様々ありますが、みなさんはダンスのいちばんの魅力は何だと感じていますか?
 

Oguri:僕は音楽を聴くのも歌うのも大好きなんですが、「なぜダンスなのか?」を考えると……全身で音楽を感じられるからかなと。ダンスをしているときは、頭のてっぺんから足のつま先まで、全身を音楽が流れていく感覚、プールに潜っているみたいな気持ちよさがあるんですね。その身体全体が音楽と一体になる感覚が大好きですね。
 
NOPPO:ダンスには本当にいろんなものが詰まっているんですよ。音楽と一体になれるのもそうですし、スポーツのように鍛えれば鍛えるほどレベルアップしていける、ストイックに極める気持ちよさもある。そしてショーを作る上では、ダンス以外の演劇やミュージカル、映画などのジャンルからも吸収するものも多い。そんなオールマイティなところが魅力的ですね。
 
kazuki:そう、僕らのやっているストリートダンスに限らず、ダンスは可能性が無限で。自分のトレーニング次第、曲次第、シチュエーション次第で、どんなこともできるんです。歌やお芝居をやる方も同じような感覚があると思うんですが、自分にとっては歌や演技より、さらに無限な感じがしますね。
 
shoji:そして、ダンスは言葉がいらないぶん、異文化の人たちにも伝わりやすいんですよね。世界には素晴らしいミュージカルや演劇の舞台作品が山ほどありますが、字幕がないと話が分からなかったり、字幕を読んでいる間に舞台が進んでしまって、素晴らしい演技を見逃してしまうことも起こりえる。でもダンスは事前の知識がなくても、目の前のことだけを追って楽しめますし、直感、感性で反応できる。エンターテイメントとして、とてもワクワクできるのがダンスの魅力だと思います。
 

――そんなs**t kingzさんが得意としているのが、1980年代のヒップ・ホップ音楽&カルチャーから生まれたストリートダンス。ストリートダンサーを目指す若い人たちも多く、とても人気のあるダンスのジャンルですね。
 

NOPPO:ストリートダンスは、ヒップホップもそうですけど若い人たちに流行っている音楽と密接に結びついているんですよね。そういう音楽は変化が早いし、音楽の流行に合わせて新しいダンスが発見されて流行っていく。その変化を追う面白さが、ストリートダンスの大きな魅力かも知れないですね。
 
shoji:でも、そんななかでも日本のシーンは珍しい進化をしていて……例えば、ロックダンス、ブレイクダンス、ポップダンスなど、ストリートダンスの中でも歴史のある「オールドスクール」と呼ばれるジャンルがけっして廃れないんです。若くて素晴らしいダンサーが常に生まれ、常に進化している。海外、とくにヨーロッパだと、国によっては新しいダンスしかやっていないところもある。それだけ日本は、職人型のダンサーが多いんですね。でもちゃんと、流行のスタイルにも柔軟に対応していて、むしろ新しいスタイルを生み出している若いダンサーもたくさんいます。その両方が共存しているのが、日本のストリートダンスシーンの面白いところですね。
 
kazuki:僕らも世界の全てを知ってるわけではないですが、国によってスタイルや雰囲気は全然違いますよね。日本人はすごく職人気質で、スキルフルでフォーメーションが面白い群舞が得意でバトルにも強い。いろいろなトレーニングをしっかりやっていることが分かります。ただ……僕らもそうですけど、ちょっと静か。そこがやっぱり日本人らしさなのかなと。
 

s-skg_0165kazuki

――国によってダンサーの気質も違うんですね。
 

shoji:はい、違いますね。とくにスペインとフィリピンは熱狂的。レッスンをしに行っても、笛や太鼓をワーッと鳴らしているので、僕らの話は聞いてもらえてないのかな?と(笑)。イタリアも賑やかですよ。
 
NOPPO:日本だと絶対あり得ない雰囲気なんですけど、いろんなスタイルのダンサーと出会えるのは、とても楽しいです。
 

――音楽と密接な関係にあるのがストリートダンスの魅力とおっしゃっていましたが、s**t kingzのみなさんは、それそれが日本のアーティストへの振り付けも多数手がけられていますね。日本のストリートダンスと音楽の関係性については、どう感じていますか?
 

Oguri:ストリートダンスがふだん踊る、俗に言うヒップホップやR&Bでカッコ良く踊る人もいますけど、メインストリームはもっとキャッチーで覚えやすい音楽に合わせるアイドルのダンス。だから日本の音楽の振り付けには、世界的にも独特の関係性がありますね。僕らとしては、もっとストリートダンスがメインになってくれたら嬉しいなとは思いますけど、音楽自体にも個性がありますよね。
 
shoji:ただ、僕らもレッスンなどを通じて、今は小学生や中学生のストリートダンス人口が圧倒的に増えている感じがあるので、これからもっとストリートダンスが盛り上がってくれることを期待しています。義務教育でストリート系のダンスに触れる機会も増えていますし。
 
Oguri:学校でダンスが必須科目になって裾野が広がることは、僕らにとっても嬉しいこと。そこから、例えば僕らのことを知ってくれたり、他の素晴らしいダンサーの方々に興味を持って、レッスンを始めてくれる人が増えてくれたらなお嬉しいですよね。
 

s-skg_0148Oguri

――その意味でも、s**t kingzのみなさんもゲスト出演される、11月6日開催の「第2回全国高等学校日本大通りストリートダンスバトル」は、全国の優秀な高校ダンス部が出場して腕を競う、若い人たちのダンス熱を目の当たりにできる大会ですね。
 

kazuki:こういう大会が開かれるのは、すごくいいことですよね。自分も高校時代はダンス部でしたし、学校対抗コンテストやTV番組の「ダンス甲子園」にも参加しました。NOPPOとふたりで「DANCE ATTACK!!」という高校生の全国大会にも毎年のように出ていたので……燃えますよね!(笑) 高校生限定だと、みんなだいたい同じレベルからのスタートだから、すごく刺激になるんですよ。
 
NOPPO:「同い年なのに、あの人はこんなに踊れるんだ! マジかよ、自分ももっと練習しなきゃ!」って僕もよく思いました(苦笑)。「こんな踊り方もあるんだ」と勉強になる、貴重な場でしたね。
 
shoji:僕は高校時代にまだダンスをやっていなかったので、すごく羨ましいです。自分たちの知っているエリアじゃない人たちの踊りが見られるだけでも、かなり貴重な経験。お互いが刺激しながら交流しあって、大人になってまた一緒に踊る機会に繋がったりするといいですよね。それに僕ら4人中、Oguri以外は3人とも神奈川県の出身なので、故郷で大きなストリートダンスの大会が開かれ、そこにゲストとして参加できるのはとても嬉しいです。
 
Oguri:それでいうと……僕は東京生まれなんですけど、じつは母親が昔、神奈川県庁で働いていたので、気持ちはかなり神奈川寄り(笑)。気合いが入りますよね。
 
shoji:なんせ、大会のメイン会場は神奈川県庁前を通る日本大通りですからね!(笑) そして、この大会がいいなと思うのは、観覧が無料なこと。誰でも気軽に見に来てもらえますよね。
 

――まだストリートダンスを生で体験したことのない方にも、ぜひ観に来ていただきたいですね。当日は、どこに注目すると、高校生のパフォーマンスをより楽しめますか?
 

Oguri:ストリートダンスはあまり難しく考えず、直感で楽しむのがいちばんなんですけど、踊りのテクニック以上に、踊っているときの表情に注目してほしいですね。いくらダンスが上手でも、しかめっ面じゃ楽しくない。表情のいい子は、ダンスにもそれだけ気持ちがこもりますから。
 
shoji:ストリートダンスは、技術の優劣を気にするよりも、エンターテインメント感覚で観たほうが圧倒的に楽しいですからね。全国大会に出るために、どのチームも振り付けを細かく合わせたり、すごい努力をしてきたと思うんですよ。ダンスにかける熱意や費やした時間がパフォーマンスにも表れると思うので、子どもたちの情熱をステージから感じてほしいです。
 
kazuki:選曲、衣装、フォーメーションにも、それぞれのチームの個性が出ますしね。単純にアスリート的なスキルで勝負してくる学校もあるだろうし、魅せるダンスとしてひとつのテーマですべてを統一してくる学校もあるはず。それぞれがどんなテーマで踊っているかを感じとって、いいと思ったパフォーマンスには、拍手や声援をたくさん送ってほしいです。
 
NOPPO:ぜひ大きな声で!
 
shoji:客席が盛り上がってくれると、パフォーマーもノってきますからね! ストリートダンスは踊るほうも観るほうも、楽しんだもの勝ち。踊りの最中でも、どんどん声を掛けてあげてください。
 

――もちろん出場する高校生の中には、憧れのs**t kingzさんのようなプロのダンサーを目指している人も多いと思います。みなさんにアドバイスを送るとしたら?
 

NOPPO:ダンスって「先にここを鍛えておけば、こういうことが上手くなる」というものじゃないんです。踊ってみて、自分の足りない部分に気づいたときに、そこをトレーニングしていくほうが上手くなれると思うので、とにかくいっぱい踊ることですかね。
 

s-skg_0061NOPPO

Oguri:そのときはぜひ、視野を広く持っていろんなダンスを経験してほしいです。自分の得意なダンスを武器にすることは大事なんですが、それ以外の経験も絶対に無駄にはならない。そしてセンスを磨くこと。これもダンスだけじゃなく、音楽でもファッションでも、いいものにたくさん触れてほしいです。あとは、ストレッチを欠かさず、身体のケアをしっかりすることですね。
 
kazuki:僕もいろんなダンスを経験することは大切だと思います。僕自身も高校のダンス部で、ブレイクダンスを3年間練習していました。今踊っているジャンルとはまったく違うんですけど、高校でブレイクダンスをやったことは、その後にすごく役立っていますし、あのときブレイクダンスに出会っていなかったら、一生踊るチャンスはなかったと思うんです。どんなことでも、興味が沸いたら一生懸命チャレンジしてください。
 
shoji:そして英語を勉強することですね! 外にはいろんな出会い、いろんな刺激が待っているのに、言葉が壁になって海外に出ていくのを怖がる人たちも多いんです。ダンスそのものに言葉の壁はないですが、より深く知るためには言葉が必要。日本でも海外ダンサーを招いたダンスキャンプも開かれていますし、日本から教えに行っている人たちもたくさんいます。これからもっと増えることでしょう。せっかく世界を広げられるチャンスを潰すのはもったいないので、学生時代から英語の勉強を、しっかりやっておくといいですよ!
 

――海外経験豊富なs**t kingzさんだからこそのアドバイスですね。そんなs**t kingzさんが今後、目指すものは何ですか?
 

shoji:僕らがいちばん目指しているのは、誰もが笑顔になれて楽しめる作品を作ることです。ダンスに詳しくない人には作品の内容を楽しんでほしいし、ダンス好きの人には踊りのクオリティを楽しんでほしい。今年も、9月9日から東京・Zeppブルーシアター六本木で、10日間にわたって漫画『テルマエ・ロマエ』の作者・ヤマザキマリさんに“トイレ”をテーマにお話を書いていただいた新作ダンスエンターテインメント『Wonderful Clunker -素晴らしきポンコツ』を上演します。今後は舞台作品での世界ツアーを目標に、s**t kingzのダンスとパフォーマンスの可能性を追求していきたいですね。
 

– – –
s**t kingz オフィシャルサイト:http://shitkingz.jp/

マガジン