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連続読み切りコラム『  』の虜/第4回  中川克志『生成音楽』の虜
音楽
2015.03.02

連続読み切りコラム『  』の虜/第4回 中川克志『生成音楽』の虜

『生成音楽』の虜こんにちは、中川克志と申します。
今日は生成音楽というものについて紹介させてください。
生成音楽というのは、勝手にできあがる音楽のことです。
どういうことでしょう。

1.
音楽って、作ったり演奏したり聴いたり売ったり買ったりするものです。あるいは、音楽って、深く味わったり軽く聞き流したり学問的に分析したりするものだったりもします。
音楽とは何かをヒトコトで言うのは難しいですが、「音楽とは音と音とが連なったものだ」程度のゆるい説明ですませておくと、色々なレアケースに対応できるし便利です。必ずしも歌詞やメロディがなくても音楽だし、誰かがゼロから創りだしたものでなくとも音楽です。ベートーヴェンの音楽もあれば秋元康の音楽もあるし、韓国の農楽という伝統打楽器芸能も音楽だしチンドン屋の音楽も面白いし、建築とは凍れる音楽なのかもしれないすべての芸術は音楽の状態に憧れるのかもしれないし、何も音を発さない音楽もあるし、この雨音は優しい音楽だし酔っぱらいのおじさんの鼻歌は時に心に染み入ることもある音楽です。音と音とが連なっていればそれは音楽だということにしておくと色々便利です。

2.
そんなわけで、生成音楽とは何かというと、これは自分で自分を生み出す音楽のことです。つまり、人間が管理して音の連なりを作り出すのではなく、音の連なりが、人間の手から(ある程度)離れて生み出されるものです。生成音楽ってのは湧き水のように勝手に生み出されるものだ、と言ってもいいかもしれません。水道水みたいに管理されているのではなく、自然に勝手に流れ出ているし、だいたいの音の流れは決まっているけれど少しずつ変わっていくものだという点で、生成音楽は湧き水です。

音楽家が丹精込めて作り上げた音を聴くのはもちろん素晴らしい経験ですが、人間の手から離れて勝手に動き回る音を聴いているのもなかなか面白いものです。「整理されていない音なんてゴチャゴチャでつまらないに決まっている」とも限らなくて、なんだか「自由」な気分になったりもするんです。そういうことがあるので、僕は長いこと生成音楽の虜です。

3.
音の連なりが人間の手から離れて生み出されるってことは、例えば、風鈴も風の音も波の音も生成音楽です。今僕の部屋の隣で洗濯物を洗っている洗濯機の音もそうかもしれません。でも、たいていの場合僕らはそれを音楽とは呼びません。音楽じゃないからあまりしっかりと耳を傾けない。でも、そんな音の連なりを「生成音楽」と呼んでみると、耳を傾けてみようという気になります。名前のあるものはなんだか一人前のものに思える。そんなもんです。そして、そういう勝手に動き回る音の連なりを聴いてみるのもなかなか面白いものです。つまり、生成音楽ってのは、世界のあちこちにあるものだけど、僕らが見つけてあげないといけないものなんです。けっこう世話が焼けるものだといえるかもしれません。

生成音楽を見つけやすくするためにはいろんな仕掛けがあります。例えば、(1)コンロで沸騰させた缶のなかに冷えた米を入れて共鳴音を引き起こしたり、(2)電子回路を組み立ててカオスの世界を呼び出したり、(3)ビニール弦を使って風琴を組み立てたり、(4)部屋のなかにワイヤーを張って部屋の振動と一緒に共振させたり、(5)電車に乗って山のなかにピクニックに出かけたり、…。

(1)鳴釜

この缶に米を放り込んだ後の音です。この実験、釜じゃないですけどね。

(2)チュア回路

カオスが発生しています。

(3)エオリアン・ハープ
エオリアン・ハープ

風琴とはエオリアン・ハープのことです。これは杉山紘一郎さんによるワークショップの様子です。

(4)細長いワイヤーの音楽

こんな感じのインスタレーションです。

(5)プリペアド・トレイン

岐阜は大垣の樽見鉄道で楽しい電車の旅でした。

他にも磁気テープのループでフィードバック回路を作る人もいれば、レコードをバラバラにしてバラバラのレコードから一枚のレコードを組み立てる人もいたりします。

まあ、生成音楽にもいろいろな種類があるんです。

4.
そういう音楽もある、ということをお伝えしたところで、宣伝させてください。
2015年3月14日(土)から18日(水)まで、関内のさくらWORKSで『生成音楽WSの展覧会』という展覧会を開催します。これは、「生成音楽ワークショップ」という二人組の展覧会で、いくつかの生成音楽を展示したものです。15日(日)にはエオリアン・ハープ制作のワークショップをしたり、トーク・セッションがあったり、堀尾寛太さんや杉山紘一郎さんや大山千尋(IAMAS)さんによるパフォーマンスもあります。

詳しくはこのウェブサイトをご参照ください。

ということで、「生成音楽ワークショップ」による生成音楽を見に来てください。
「生成音楽ワークショップ」が少し手助けして生まれた音の連なりが、そこでは勝手に生まれています。
ほほうこんなものかあ、という感じで、おいでください。

中川克志(NAKAGAWA Katsushi)
研究者。ゲンダイオンガクとかサウンド・アートとか音響メディア論を研究してます。日本で「サウンド・アート」が展開してきた経緯を調査したりしてます。『音響メディア史』(ナカニシヤ出版)という共著がもうすぐ出ます。バンドもしてます。

少しずつ違う方向のことをやっているのですが、とりあえずは3月の『生成音楽ワークショップの展覧会』(関内さくらwroks)の準備を頑張ってます。

http://after34.blogspot.jp
http://hs.ynu.ac.jp/staff/nakagawa_katsushi/

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