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さいたまゴールド・シアター『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』

さいたまゴールド・シアター『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』

さいたまゴールド・シアター第6回公演『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』

今回のマグカルさん:草野広樹

 
6月15日、16日にKAAT神奈川芸術劇場大スタジオにて上演された、

さいたまゴールド・シアター第6回公演『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』

今回縁あって、ボランティアライターとして、この公演のゲネプロを観劇させて頂けたので、レビューを寄せたいと思います。

大学の授業で『オイディプス王』を映像で観たことはあるものの、蜷川さんの演出する舞台を、生で見るのは今回が初めてでした。

アートプロジェクトを専門に学んでいた僕にとって、『さいたまゴールド・シアター』は、演劇集団であると同時に、

非常に面白い“アートプロジェクトの生きた教科書”であり、前々から気になっていました。

なんたって、最年少62歳から最高齢87歳、平均年齢74歳。

おそらく、今までにない演劇体験が出来るのだろうと楽しみでした。

さて、今回の公演 『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』

数十人の老婆が法廷を占拠、裁判官や検事等を人質に取り、自ら裁判を行う、というストーリーだと聞かされては、もう、興味がわかないほうがおかしい。

僕の興味の、どストライク。

そんな素敵な作品が、幸運にも神奈川にもやってくるということで観てきました。

まず、なにより「これがライブで観る“蜷川演出”なのか!」という喜びを味わえました。蜷川演出の特徴とも言われる、強烈なヴィジュアルには圧巻されます!

暗闇の中から、ぼんやりと浮かび上がる、水槽に入った数十人の老婆たち。

機動隊が突入する瞬間、老婆たちが若者たちに姿へ変える、その刹那の、美しさ。

まるで、この光景だけでも十分インスタレーション作品になるんじゃないかと思えるほど。

僕の目に焼き付きました。今思えば、あの時、僕は口も開いてしまっていた。そのくらいのインパクト。

ストーリーは、随所に笑いが散りばめられていて、痛快。

しかし、ハチャメチャに演じるのではなく、そこにいるのは、リアルな老人という面白さ。

惹きこまれる、不思議な空気感を作り出すその集団は、とても自然な存在となってました。

『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』が執筆されたのは1971年。

全共闘時代を担った青年たちを、その年の流行歌は「戦争をしらないこどもたち」と歌った。

自分は今、彼らと同じ年頃になって、この作品を観ている。

ふと、自分たち「闘うことすらしらないこどもたち」なのではないのだろうかとも思ってしまう。

演劇には、時代を超えて、今の私たちにも生き方を問う力があるのだと改めて感じました。

しっかりと笑わせながらも、主題は深く根強い。

とても良質な作品でした。

“老い”を演劇に“昇華”させるという、さいたまゴールド・シアターの試み。

一流のクリエーションがそこにはありました。

楽しい経験をさせて頂きました。ありがとうございます。
 
草野広樹
 
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草野広樹プロフィール

1990年、福島県いわき市生まれ。

大阪芸術大学芸術計画学科卒。

「ユーモア」と「ライブコミュニケーション」をキーワードに、

さまざまなアートプロジェクトやワークショップ企画運営に携わりながら、

日々、アートと人々の新たな関係について探っている。

現在、相模原市在中。

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