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伝統芸能

「静、愛と死~能とオペラの融合による創作舞台~」 ジャンルを超えて実現した物語の融合を愉しむ in かながわアートホール

「静、愛と死~能とオペラの融合による創作舞台~」  ジャンルを超えて実現した物語の融合を愉しむ in かながわアートホール

「静、愛と死~能とオペラの融合による創作舞台~」 公演概要
[日時]令和3年8月7日(土曜日)15時~17時(ライブ配信)
[配信URL]https://www.youtube.com/watch?v=ykdgnhWYbTY(アーカイブ配信)
[出演]
  第1部 
   公益財団法人鎌倉能舞台
    中森貫太(シテ)富坂唐(子方(こかた))福王和幸(ワキ)
    杉信太朗(能管)鵜澤洋太郎(小鼓)亀井広忠(大鼓)澤田晃良(太鼓)
    観世義正(地頭(じがしら))
  第2部
   日本オペラ協会 所属歌手
    砂川涼子(Sop.静)、向野由美子(M.Sop.磯の禅師)、中井亮一(Ten.義経)、
    森口賢二(Br.頼朝)山田明美(二十弦箏(にじゅうげんそう))
    櫻井亜木子(薩摩琵琶(さつまびわ))藤舎花帆(小鼓)田中祐子(指揮)
   公益財団法人神奈川フィルハーモニー管弦楽団(オーケストラ)
販売済みのチケットについて
  ご購入されたチケットの払い戻しについては、本事業の受託事業者である
  公益財団法人神奈川フィルハーモニー管弦楽団より、個別に御連絡いたします。
[予定していた開催方法]
   神奈川県立県民ホール 大ホール(横浜市中区山下町 3-1)にて有料・有観客開催
[変更後の開催方法]
   当日、無料でライブ配信を実施します。なお、配信スケジュールは変更する場合があります。
   最新の配信情報はこちらのページをご確認ください。



公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では、東京2020大会に向けて、国・地方自治体・文化団体等が連携し、日本の文化・芸術の力を国内外に発信する東京2020 NIPPONフェスティバルを全国で実施することとしています。
神奈川県も実施主体となり東京2020 NIPPONフェスティバルの共催プログラムとして、来る8月7日に、神奈川フィルハーモニー管弦楽団による企画制作により日本の古典芸能「能楽」と西洋の舞台芸術「オペラ」の融合による総合芸術の魅力を堪能できる公演を行います。

神奈川県屈指の観光エリアであり、風情漂う古都鎌倉を舞台に「源義経伝説」を素材とした物語が二部構成で上演されます。
一部は能「船弁慶」、二部はオペラ「静と義経」をダイジェスト版。
最大の見どころは、前半の能と後半のオペラの「時」が繋がっているという点。
静御前と義経の別れが描かれる部分を前半の能で上演し、その後オペラ「静と義経」に展開を繋ぐのです。
全く異なるジャンルである能とオペラが1つの舞台となり主人公が物語を紡いでいく・・これが今回の舞台の「融合」とされる所以の全てと言っても過言ではありません。

「能という芸能は純粋で、混じる事を嫌う為、なかなか他ジャンルと共演し難い高貴な世界です。今回はシテ方の中森貫太氏との共演が過去にあり、能のご法度に抵触しないように、融合部分を慎重に協議していった結果、実現に至ったという経緯があります。」
このプロジェクトのプロデューサーである神奈川フィルハーモニー管弦楽団音楽主幹の榊原徹氏は言います。

「船弁慶」は平家物語、吾妻鏡を題材に今から約500年も前に創造された物語。
そして「静と義経」は1993年に鎌倉芸術館のオープニングとして、日本が誇る作詞家なかにし礼、そして日本のみならずアジアを代表して世界で評価されている作曲家三木稔のタッグにより制作・上演された日本オペラです。
この二つの物語が本公演でまさに「繋がっていく」わけですが、これがいかに貴重で価値のあることなのか、見どころを含めできる限り皆さんにお伝えしたいと思います。
どうぞお付き合いくださいませ。

まず語るべきは、日本オペラ「静と義経」の誕生秘話。
特段歴史好きでなくとも、日本人であれば静御前の悲恋物語は知っているかと思います。なかにし氏は、1993年、この悲恋の舞台である鎌倉鎌倉芸術館の開館記念委嘱作品として、この物語を生きた舞台としてオペラ「静と義経」を制作することにしました。なかにし氏は当時「生命を与え、声と動きを与え、雪を降らせ鐘を鳴らして、真実と見まごうばかりの世界を想像してみようではないか、というのが意図」と話しています。そしてなかにし氏は、文字通り作品に命を吹き込むという意味で欠かせない作曲に、この前年、古代日本を題材とした大作であるオペラ「ワカヒメ」タッグを組み、その作曲家としての才能に惚れ込んだという三木稔氏を指名。

三木氏は日本の歴史・文化そのものが国際性を持っており、海外に通用する価値があることを証明するという信念のもと、日本を舞台にしたオペラの創作を「ライフワーク」と公言し、日本オペラを牽引し続けてきました。「ライフワーク」という通り、三木氏が37年を費やし千数百年という日本の歴史を遡り、各時代の時代精神を探求し独特な美しさを見事に表現した壮大な「日本史オペラ9連作」を完成させました。
その中でも日本オペラ協会からのデビュー作品となる「春琴抄」、イギリスの著名演出家と組み、日本オペラを世界に知らしめ定着させた「あだ」「じょうるり」は近世三部作として上映が多い作品で、現在も愛され世界で高い評価を受けています。
またその後の海外からの委嘱による英語圏で人気のある、新国立劇場での「愛怨」(ai-en)は、日本オペラ史110年の歴史上、初めて外国人による日本語上演がドイツのハイデルベルク歌劇場されるという素晴らしい偉業を成し遂げています。

また三木氏は1964年、邦楽器の合奏団「日本音楽集団」の結成に参加、邦楽器の為の作曲を多く行い、現代邦楽にいわゆる民族楽器の魅力をリバイバルさせた第一人者。
邦楽器への注力は作曲のみならず、現代音楽に適した表現力を持つ箏として13本の絃から20本(後に21本の新筝)となる二十絃箏の開発にまで及びます。
この開発は邦楽史に新たな流れと邦楽器演奏技術へ革新をもたらした非常に画期的なことでした。
三木氏の作品は、西洋の音だけにとどまらず、箏やさまざまな邦楽器による日本的な音を巧みにとりこみ、三木氏ならではの確立した作風として国内外で高く評価されているのです。

いかがでしょう、この二人の台巨頭が創り上げたオペラ「静と義経」。想像するだけで身震いしてしまうほど壮大な価値を秘めた作品なのです。

そしてついにこの名作を93年の初演から、実に26年の時を経て、2019年に待望の再演にこぎつけたのは総監督を務めた郡愛子氏。初演で磯の禅師を演じた郡氏は、この思い入れのある名作の再演を2年前に見事に実現させてくださいました。
8月の本公演の義経、磯の禅師、頼朝の3名は、2年前の再演です。
       源義経役 中井亮一                            源頼朝役 森口賢二

主役の静を演じるのは日本オペラ協会のプリマでもあり、日本を代表するソプラノ歌手の砂川京子氏。白拍子であり女であり愛する者を想い続ける姿をドラマティックに舞い歌う姿は必見です。
そして二十絃箏を演奏する山田明美氏も、初演からの演奏家。西洋楽器の中で見事に重なり、溶け込む筝の演奏で日本的な独自の世界観を生み出します。

静役 ソプラノ砂川涼子

前述したなかにし氏の言葉の通り、静と義経の愛の物語は美しく洗練された日本語と音楽で究極に悲劇的でありながらとても繊細で生命感溢れる作品となりました。

二人の「愛と死」をテーマにしたふたつを、ひとつの舞台で紡ぎ合わせた創作舞台。

前半「船弁慶」では仲違いした兄、源頼朝から離れるため、義経が愛妾の静御前と共に繰り広げる愛の逃避行。困難を極めるこの旅路、ついに乗り越えられず二人には大物浦でついに別れの危機が訪れます。離れなければならない二人の愛と悲しみに満ちた感情を表現する力強くも儚い別れの舞。この舞から第二部に時を繋げていっているわけですが、ここが見どころですよ。どのような演出をもって繋げているのでしょう。

冒頭にこの繋がり、いわば「融合」部分こそが本公演の最大の魅力だとお伝えしましたね。ここで魅力の全てを語ってしまうと楽しみが半減してしまいそうなのでヒントだけ出させてください。
ふたつの世界を繫ぐのは、静の母、磯の禅師から受け継ぎ、義経と愛し合うきっかけともなった白拍子です。これを異世界の中の静のアイデンティティとしています。

前半最後の別れの舞から第二部、八幡宮静の舞、是非に堪能していただきたいと思います。
さらにこの繋ぎや、ダイジェスト版の場面を効果的に運ぶ役、言ってみれば「ストーリーテラー」として、琵琶奏者による弾き語りが入るなど、だれでも楽しめるような工夫が満載なのもこの舞台の魅力です。

サブスクリーンで演者を映し出したり、字幕でストーリーを補完し主人公の心情の移り変わりをわかりやすくしたりするなど、大ホールのハイライト上演であっても、わかりやすく観られるよう工夫されています。
二十弦箏(にじゅうげんそう) 山田明美                  小鼓 藤舎花帆                      

そして最後に照明。舞台上に時間や光を与え、空間や登場人物をより感情豊かに表現してくれるとても重要な要素です。

「フルで仕込んだ照明も、第一部から古典的な厳かな能ではなく、現代らしく、そしてこのドラマに添って機知に富んだ明かりをデザインします。特に第二部は、冬の吉野山から、春らしい鶴岡八幡宮、そして雪降る中、再び義経と成就しながら昇天する静の美しさを描き出します。」と前出の榊原氏。

人間にとって、そして特に今を生きる私たちにとって最も普遍的で永遠である「愛と死」をテーマに、ジャンル、国、そして時代をも超えて創り上げたこの舞台。
こんな時代だからこそ、足を運んで心に素敵な栄養を与えてみませんか。

令和3年6月1日(火曜日)に記者発表しました「静、愛と死~能とオペラの融合による創作舞台~」(令和3年8月7日開催予定)については、県内の新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため、また、より安全・安心な環境で実施するため、無観客開催とし、ライブ配信(無料)を実施します。

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