今夜もどっぷりジャズ浸り
File.1 「ちぐさ」ってどんなお店?
(新村繭子/ジャズ喫茶ちぐさ)
横浜野毛の老舗ジャズ喫茶「ちぐさ」。敷居が高くて入りにくいイメージを持つ人も少なくないと思う。
でも、ジャズってなんだかカッコイイよね…そう感じているあなたへ、ちぐさスタッフからのメッセージをお届けします♪
ちぐさは昭和8年に吉田衛が横浜野毛で開業したジャズ喫茶だ。現存する日本最古のジャズ喫茶ということを譜わせてもらっているが、当初から歴史的文化財のようにいわれていたわけではない。
開店当時は最新の音楽が聴ける場所として流行に敏感な若者に受け、駆け出しのミュージシャンもよく来店した。今のように、気軽にいつでもどこでも自分の好きな音楽が聴ける時代ではなく、そんな環境もなかったので、彼らは音に対して無心で没入したのだろう。今日も続く「入りにくい」独特の雰囲気はその名残(?)なのかも…。
現在のちぐさでは、昼の喫茶タイムは「お喋り厳禁」というわけではない。だが、誰もが他のお客さまに気を使ってくださるので、集中して音を楽しむ環境が続いている。
ジャズ喫茶にはコーヒーが似合う。けれど、戦時中はコーヒーも配給制。足りない分は焼き芋を原料としていたため、店内は焼き芋の匂いがしたという。ちなみに、その「焼き芋風コーヒー」は横浜の福富町にあった木村コーヒーで製造していた…そう、のちのKEY COFFEEである。
ちぐさのコーヒーは今でも焼き芋配合!?
という心配にはおよばない。現在はちぐさ用にブレンドしてもらったコーヒー粉を、サイフォンを使ってていねいに淹れている。時間はかかるが、ジャズレコードから流れる音と時間を、店内に広がるコーヒーの香りと共に楽しんでいただけたら、と思う。
現在ちぐさでは、創業当時の喫茶スタイルに加え、もっと気軽にレコードやジャズに触れていただけるよう、18時以降にBarタイムを設けている。
お喋り大歓迎!
カウンターに入る20代のスタッフが増えたので、常連さんや年配のお客さまから様々な逸話を教わることも増えた。その一方、お客さまも若い方が増えているので、ジャズに限らずホットな音楽情報を交換し、会話を楽しむ場にもなっている。
現在、ちぐさには、核になるような強烈なマスターはいない。運営には多くのスタッフが携わっており、ジャズ喫茶文化を連綿と継承しつつ、今に即した新しい方法でジャズ文化が発信できるよう、試行錯誤の日々を送っている。
コーヒー1杯500円と、ほんの少しの勇気を出して、好きなだけ音楽に浸れる空間に足を踏み入れてみてはいかがだろう。