次世代を担う創造的演劇人を育成するとともに、20分の「短編演劇」という新たな演劇を発信する、神奈川かもめ「短編演劇」フェスティバル2019(通称「かもフェス’19」)。
フェスティバル本戦の開催が間近に迫る中、昨年優勝した「平泳ぎ本店」の松本一歩さん、昨年の審査員から挑戦者へと転身した中屋敷法仁さん(柿喰う客)、昨年は劇団で参加し、今年は戯曲コンペティション最優秀作品を執筆した小野寺邦彦さんの3名にお集まりいただき、かもフェスの楽しみ方や本戦に向けた意気込みを伺いました。
演劇に興味を持ったきっかけを教えてください
中屋敷 僕は、5歳のときにお遊戯会で『ピーターパン』のフック船長役を演ったときに気づいたんです。現実社会は面白いことばかりではないから、『ピーターパン』の世界の方が絶対に面白いって。子ども心に「なんで僕らはピーターパンの世界に行けないのだろう」と考え、そして、そこへ行ける手段が演劇だったんです。演劇は圧倒的な虚構の世界だから、違う自分になれたり、違う世界を知れたり、これまで出会ったことのない自分の感情に出会うこともできる。そしてお客様も、ただ観るだけでなく一緒に体験できる。それが劇場空間の魔法だと思っています。
松本 僕は高校3年生の文化祭で演劇に出会って「これだ」と思って、大学で演劇を専攻しました。演劇は、映画や書籍に比べて1年間に観られる本数が限られますよね。映画だと年間千本以上観ることも可能ですが、舞台はどう頑張っても1日2本が限界です。だからこそ、その1つの舞台がお客様にとっても作り手にとっても貴重な機会になる。アナログでとても効率が悪いのだけど、そこに行って時間を共有しないと絶対に伝わらないものが、劇場空間にはあると感じています。
小野寺 演劇は“わけのわからないこと”をやってもいい、というのが面白いと思っています。僕が書く戯曲はデタラメなので、現場で「何を言っているのかわからない」と言われることもありますが、それをなんとかしてくれるのが演劇(笑)。
短編演劇の面白さはどこにあると思いますか?
中屋敷 かもフェスのように短編演劇を複数上演するイベントは、いちばん鍛えられる場だと思っています。2時間あると、笑いあり、涙あり、感動ありとなんでも詰め込めるけど、20分だと「今、一番やりたいことは何なのか」という自分のコアな部分が明確になってしまうんです。自分たちは何を“演劇”だと思っているのか、お客様にどう出会いたいのか。また、短くすることでできることがたくさんあるから、ワクワクする。それが短編演劇の面白さだと思っています。
松本 僕らは昨年初めて短編演劇に挑戦しました。20分という制約の中で伝えられることもあれば伝わらないこともあるので、そこが工夫のしどころだと思います。自分達はなにで勝負するのか、作品の中で注力するポイントを考えることが必要で、アレもコレも詰め込めない分、かえって強いモノができる。
小野寺 僕も昨年初めて短編演劇を書きました。それまでは自分に時間の制約を与えたことがなかったのですが、案外収まるものですね(笑)。先日、戯曲コンペティションの際に、最終審査にノミネートされた他の作品をリーディングで聞かせていただいたのですが、僭越ながらすごく上手だと思いました。それに比べて自分はなんて不器用なんだ、と。パッと終わった方がアラが見えなくていいのかもしれませんね(笑)。
中屋敷 自分はそういう意識ではやっていないですよ(笑)。
松本 かもフェスでは全国から集まった5団体の作品を一日で観られます。全国から集まった劇団の面白さが凝縮された作品をつまんで観られるという贅沢感は、20分という制限があるからこそ得られるものだと思います。
中屋敷 そうそう。お客様にとっては「いろんな作品を観られる」という楽しみがあると思います。その劇団の一番の魅力を短い時間で掴める…というか、僕らとしては掴んでもらわないと困るんですけど(笑)。「短編だからモノ足りない」と思われがちですが、そう思わせないだけの“濃さ”があると思っています。
昨年も参加されていますが、かもフェスの魅力とは何でしょう?
松本 全国から集まったいろんな人、団体に会えることです。僕らは普段、東京で活動しているのですが、自分たちの力ではなかなか外に出て行くことができません。昨年は島根県や宮城県、韓国から参加した劇団もあって、そうした方々と出会えるのが一番の楽しさです。
小野寺 僕は日ごろ外の世界と交流がないので、他の劇団が何をしているかほとんど知らないんです。たまにお会いすると、自分が浦島太郎になったような気がする(笑)。僕にとってかもフェスは、モード(流行)を知る場かもしれません。楽屋が相部屋で、他の劇団の方々と話ができたのも楽しかったですね。
中屋敷 昨年は審査員として参加したのですが、今回は純粋にアーティストとして参加したいと思いました。他の団体と交わると、自分の弱さや新しい面が見えてきます。自分たちがやらなければいけないことに気づかされるので、劇団はかもフェスに参加して短編演劇をやるべきです!
松本 今年は高校演劇の団体も参加されますよね。今、高校演劇は本当に面白いと言われているので、すごく楽しみです。同時に、僕らはプロとして違いを生み出さないといけない。カンパニーとして、今までよりもう一歩精度を上げ、密度を高め、練度を上げなければ、と思っています。
中屋敷 お客様からみたらプロもアマもないし、年齢も関係ありませんからね。演じる側からすると、みんな演劇が好きで、お客様に何かを届けたいという思いは1つだと思います。
松本 昨年、講評で中屋敷さんに戯曲への取組みについて「ジャストではあるけど、ベストではない」と言われたのをよく覚えています。武重守彦さんの脚本は前回が初めてでしたが、その後、劇団の公演にも書き下ろしていただき、今回は三度目の挑戦になります。ひとつ殻を破って、これまでとは違うシーンの立ち上げ方ができればと、一同意気込んでいます。
小野寺 昨年は劇団として参加したので、自分も役者として舞台に立ちました。その際、審査委員だった中屋敷さんに「脚本はよし、演出は僕がやろう」と言われたことを覚えています。だから今回は戯曲で応募しました(笑)。
中屋敷 あ、そんなこと言ってました? でも小野寺さんとのコラボは今回が初めてだから、僕は滑っても仕方ないかと。松本さんは昨年の成功体験があるから、プレッシャーですよね。
松本 確かに、ちょっとやり辛い部分はあります(笑)。昨年は演劇祭の後、受賞記念公演として5月の神奈川県庁公開日に神奈川県庁大会議場で上演させていただけたことがとても印象に残っています。GWイベントの一環だったので、演劇を観に来たわけでもなく、偶然フラッと立ち寄ったお客様がほとんどでした。それでも会場が超満員になるくらい、多くの方が足を止めて観てくれて。そうしたいわゆる劇場の外での活動を通じて、もっといろんな人と接点を持っていきたい、と思うきっかけになりました。
その点、かもフェスは日ごろ演劇に興味のない方でも足を運びやすい企画です。いろんな団体が参加するので、きっと好みの作品に出会えると思います!
中屋敷 チケット代もかなりお手頃ですしね。なんと1000円で5団体観られる。全作品を観ても2000円ですから、これは絶対にお得です(笑)。ぜひいらしてください!
《スペシャルメッセージをいただきました!》
《神奈川かもめ「短編演劇」フェスティバル》
本戦スケジュール
【公開リハーサル】3月21日(木・祝)
*入場無料で全作品の練習を観ることができます。
【本戦/Aグループ】
① 3月22日(金)開場 18:00/開演 18:30
② 3月24日(日)開場 15:30/開演 16:00
湘南テアトロ☆デラルテ(神奈川県)(公募)
エンニュイ(東京都)(公募)
劇団120○EN(福島県)(公募)
中屋敷法仁=柿喰う客(東京都) 戯曲コンペティション最優秀作品 『モダン・ラヴァーズ・アドベンチャー』作:小野寺邦彦 を上演
劇団ヒロシ軍(長崎県)(劇トツ×20分優勝団体)
【本戦/Bグループ】
① 3月23日(土)開場 13:30/開演 14:00
②3月24日(日)開場 11:30/開演 12:00
21g座(神奈川県)(公募)
横浜翠嵐高校全日制演劇部(神奈川県)(22世紀飛翔枠優勝団体)
ルサンチカ(京都府)(公募)
武重守彦×平泳ぎ本店(東京都)(前年度最優秀賞受賞団体)
星くずロンリネス(北海道)(教文フェスティバル優勝団体)
【会場】
KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
【チケット】
tvkチケットカウンター TEL.045-663-9999( 10:00〜15:00/平日のみ)ほか
*オフィシャルサイト
http://kamofes.jp/
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★プレゼントの応募は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。
《スペシャルプレゼント》
小野寺さん、中屋敷さん、松本さんからマグカル・ドット・ネット読者のみなさまに、サイン色紙をいただきました!
いずれか1枚をプレゼントいたしますので、ふるってご応募ください!
【応募概要】
マグカル・ドット・ネット公式Twitterアカウント「@MAGCUL」をフォロー&リツイートでサイン色紙を2名様にプレゼントいたします。
*2枚のうちいずれかの色紙が当たります。(色紙の選択はできませんので、あらかじめご了承ください)
【応募方法】
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【応募締切】3月24日(日)24:00まで
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当選発表は、ダイレクトメッセージの当選連絡をもって代えさせていただきます。その際にお申込者のお名前・プレゼント送付先ご住所を確認させていただきますので、ダイレクトメッセージにそのまま返信してください。
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