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アート演劇・ダンス

森下真樹が挑む?! ベートーヴェン交響曲全制覇プロジェクト第2弾

森下真樹が挑む?! ベートーヴェン交響曲全制覇プロジェクト第2弾

芝居が生まれる現場
File.7 森下スタンド『ベートーヴェン 交響曲第9番 全楽章を踊る』
今井浩一(編集ライター)

神奈川県立青少年センター スタジオHIKARIのこけら落としで、自身のダンス人生を投影させた『てんこもり』を上演したダンサー・振付家の森下真樹が、未来のライブパフォーマンスを創造する若い才能の発掘と育成を目指すマグカルシアターに採択された新作を上演する。しかし、なぜか浮かぬ顔。
「いろんな方から『森下さんがソロで踊っていたベートーヴェンの第5番“運命”を群舞でやるんでしょ』って言われているんですよ。今回は第5番“運命”ではなく“第9”です。新作です! ゼロから私が振付を担当し、森下スタンドが踊ります。勘違いされる方が多いので、困っているんです(苦笑)」
*4月城崎国際アートセンターでの滞在制作(試演会)©️igaki photo studio

森下は、2016年3月に可児市文化創造センター(岐阜県)「オーケストラで踊ろう!」という企画(市民の皆さんが地元の交響楽団の生演奏で踊るという試み)で、“運命”を振り付けた。それをきっかけに“運命”に魅せられ、第1楽章をMIKIKO、第2楽章を森山未來、第3楽章を石川直樹、第4楽章を笠井叡に振り付けてもらい(改めてバラバラですごいメンバーだと思うが)ソロで踊った。その後も、今回も音楽監督を務めている指揮者・海老原光がタクトを振る日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で第1楽章を踊ったり、ピアニスト・今西泰彦の生演奏で踊ってきた。『てんこもり』でも、森下スタンドのダンサーが出演する中、第4楽章を踊った。まさに“運命”な女、なのだ。
*4月城崎国際アートセンターでの滞在制作(試演会)©️igaki photo studio

では、なぜ今回は“第9”なのか?

「実は“運命”をやったときに、ベートーヴェンの交響曲第1番から第9番まで全部やらないと死ねないな、という気持ちになったんです。もともとベートーヴェンが好きだったわけでもないんですけど、出会ってしまって、使命になりました。生きているうちにできますかね? 海老原さんには音楽監督として関わっていただくんですが『次は“第7番”だね』とか、すでに先々の構想まで進んでいて、全制覇を目指すプロジェクトになろうとしている(笑)。
“第9”ですか? 来年はベートーヴェン生誕250年だし、やりたいものからやっていこう、ということで選びました。“運命”もまだまだやるんですけど、ゆくゆくは“運命”と“第9”の対バンみたいなことができたらいいな、とも思いますし、“観る第9”として、年末どこかの演奏会に呼んでいただけたらうれしい。神奈川県立青少年センター スタジオHIKARIでの初演を経て、例えば、神奈川県民ホールで神奈川フィルさんと共演とか、してみたいなぁ」

このところ際立ってユニークな企画を構想し、周囲を巻き込み、何気に実現させてきている森下。“第9”の運命やいかに!
*スタジオHIKARIでの演出プランを真剣に説明する森下氏

“第9”といえば、多くの人がラストの大合唱を思い浮かべるだろう。だから群舞で挑戦する、というのが本作のコンセプト。
「先日、海老原さんに、森下スタンドの若手ダンサー10人とともに“第9”のレクチャーを受けました。ベートーヴェンについて、“第9”の魅力について伺い、合唱の指導もしていただきました。海老原さんは指揮者ですから、言ってみれば音を束ねる演出家。その海老原さんの言葉で印象的だったのは、『“第9”は演奏を合わせることを目的としておらず、それぞれの演奏家がそれぞれの解釈で演奏するのを、バラバラにならないようにつなぎとめるエネルギーこそが特徴だ』と。実は森下スタンドもそうなんです。バレエからストリートダンス、モダンダンス、新体操、演劇などバックグラウンドがバラバラで、個が強く、それぞれ自分で作品をつくっているメンバーばかり。“第9”をやるぞ、ということで、ギリギリ均衡を保っている(笑)。私も含めて群舞に不向きな人たちなんですけど(たぶん)、でも最終的に振りを自分のものにする力はすごくあるんです」

*4月城崎国際アートセンターでの滞在制作(試演会)©️igaki photo studio

森下スタンドは、森下真樹が横浜ダンスコレクションなどで出会った若いメンバーが、森下のもとに集ったカンパニー。身体性やダンステクニックは凄いのに、いざ作品をつくるとなると「惜しいなぁ」と感じるところがあり、「私が振り付けたらどうなるんだろう」という興味から、オーディションを経て結成した。
そして今回は、カンパニー森下スタンドとしての初の新作本公演。「カンパニーならいろんな実験もできるし、そのことによって自分も成長していきたい」と森下は語る。

4月に城崎国際アートセンターで2週間のレジデンスを行い、作品のスケッチを描き、すでに全体像は見えている。あとはそれを1カ月かけて踊り込んでいく。

「踊っていて思うのは、テーマは“運命”も“第9”も同じだということ。逆境を乗り越え、新境地に至り、そして最後は歓喜へ。でも“第9”の方がいろいろな音があって、いろいろな景色が見える、という印象があります。世界中を旅している、という感じがする。歓喜を探すフレーズの旅ですね。私たちの踊りからもいろんな景色が見えるといいな、と思っています」

舞台好きの黒岩神奈川県知事にも「ぜひ見ていただきたいんです」という思いよ、届け!

★こちらのイベントは終了しました。
森下スタンド 新作ダンス公演
『ベートーヴェン 交響曲第9番 全楽章を踊る』
[日時]10月3日(木)〜6日(日)

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