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横浜三溪園観月会に寄せて〜ジャンルを超えて音を楽しむこと

横浜三溪園観月会に寄せて〜ジャンルを超えて音を楽しむこと

横浜で生まれ育った私には子供のころから身近で愛着のあるスポットがあります。山下公園、マリンタワー、港の見える丘公園、野毛山動物園、山手の瀟洒な西洋館、美しい日本庭園の三溪園、鎌倉の荘厳なお寺や神社、海岸など。子供のころは親に連れられ遊びに行ったり、遠足でも訪れる観光地でしたが、音楽の仕事を始めてからは、山手西洋館~イギリス館、ベーリックホール、エリスマン邸、ブラフ18番館、三溪園で度々演奏させていただく様になりました。

子供のころから比べると横浜も随分変わりました。小学校の社会科の授業では先生が桜木町近くの東京湾を指さして「21世紀にはこの海の上に街ができます」と言われていたのを覚えています。当時は『まさか海の上に⁈』と思っていましたが、本当に海の上に大きな素敵な街が出来ましたね。新しい街と昔ながらの街並みや建物、貴重な文化財は大切に保存していくべきだと思います。

私は現在、主にシャンティドラゴン(金剛督・サックス/林あけみ・ピアノ、作曲、アレンジ)、このメンバーにチェロのクリストファー・聡・ギブソンが加わったシャンティドラゴン3のユニットで演奏活動を行っています。シャンティドラゴンのレパートリーはクラシック、ポピュラー、童謡、民謡、映画音楽、歌謡曲、オリジナルと多岐に渡りそれらの曲にオリジナルのアレンジを施し演奏しています。

私は子供の頃から鎌倉の親戚の家にピアノのレッスンに通っていました。親戚の松谷穰先生(1910~1995)と松谷翠先生(1943~1994)に師事しクラシックはもとより様々な音楽に触れる事が出来ました。今ジャンルに拘らない音楽を楽しみ演奏出来るのも両先生のお陰と有り難く感じています。穰先生は芸大(東京音楽学校)の出身ですが戦後ジャズのビッグバンドを率いて演奏活動をされていたそうでまさにクラシックからジャズまで幅広いジャンルを弾きこなすピアニストでした。ボーカルの指導もされ、渡米後アカデミー賞を受賞したナンシー梅木氏、細川綾子氏、上野尊子氏、東郷輝久氏、丸山茂雄氏、山崎瑞江氏、他著名なジャズボーカリストを多数輩出、一方日本のポップスシーンではキャンディーズや太田裕美さん他の指導もされていました。ある日ピアノのレッスン中に「はい、今日はソルフェージュ(西洋音楽学習における読譜を中心とした基礎訓練)の練習をしよう」と一枚の楽譜を渡された事があります。初めて見る譜面を間違えないように視唱したのを覚えています。それは太田裕美さんの新曲で、後になってからTVの歌番組にその曲が流れ判明(笑)そんなテクニックだけではない楽しいレッスンでした。
翠先生も芸大、ベルリン芸大出身のクラシックのピアニストですがドイツから帰国後は現代音楽の演奏にも大変力を注がれていました。多くの録音がある中で80年代にリリースされたLP「ラプソディ・イン・ブルー/松谷翠プレイズ・ガーシュウィン」(1997年CD化)は私が最も好きなアルバムの一枚です。クラシックとジャズの雰囲気を併せ持つガーシュウィンの素晴らしい世界を見事に表現された演奏です。

さて今年の秋も三溪園では観月会が催されます。
三溪園は魅力溢れる日本庭園、美しい四季折々の花々、趣のある古建築は国の重要文化財、横浜市指定有形文化財建造物も含まれています。園内の木々、花々、建造物、空間には良い気を放つオーラに溢れ訪れる度に心癒され幸せな気分に浸ることができます。自然と建造物の調和も素晴らしいものがあり、臨春閣から臨む三重塔の上にぽっかり現れた中秋の名月、自然と人の創り上げた建造物が寄り添うその美しさは言葉では表せない程でした。

今年の三溪園観月会は9月18日から23日まで開催されます。毎年観月会にはお子様からご年配迄幅広い年齢層の方々にお越しいただいています。皆様にお楽しみいただきたく今年も月に因んだ曲、童謡、映画音楽、アニソン、Jポップ、昭和歌謡迄、太田裕美さんの木綿のハンカチーフも演奏いたします。今年の観月会はシャンティドラゴンでの出演で、演奏は21日(火)18:20より始まります。日本庭園とお月様と音楽のコラボレーション、ぜひ皆様お運びください。

【プロフィール】

シャンティドラゴン3 / Shanti Dragon Trio
シャンティ(Shanti)とはサンスクリット語で「内なる平和」を意味する。ドラゴン(Dragon)は、欧米で捉えられている竜ではなく、アジアに於ける強力で縁起の良い力を象徴する龍であり、水の神様である。
シャンティドラゴンは元々ピアノ林あけみと、サックス 金剛督とのデュオだが、林のピアノとソルフェージュの生徒でもあった、チェロ奏者クリストファー聡ギブソンが参加する時、シャンティドラゴン3と表記する。
このトリオの始まりは横浜アートLive2003での横浜美術館ホールコンサート、同年の林あけみ全作曲によるCD/夢ふた夜、レコーディングからになる。その他、障害者施設へのボランティア演奏等を積極的に行ってきた。
クリストファー聡ギブソンが日本を離れ、アメリカの大学へ進学してトリオの活動を一旦休止にしていたが、帰国後様々なシーンで活躍する中、2019年から再びシャンティドラゴンに参加。シャンティ・ドラゴン3として活動を再開した。

林あけみ(ピアノ・作編曲)

ピアニスト、作曲家、編曲家。横浜出身、在住。
幼少より、ピアノ、電子オルガンを始め、ピアノを親戚でもある松谷穣氏、松谷翠氏に師事。 両氏の指導のもとクラシックから現代音楽、ポピュラー、ポップス、ジャズまで幅広い音楽に触れ、音大在学中より演奏活動を開始。
音大卒業後、横浜コンテンポラリー音楽院他、音楽教室講師、横浜市立高校吹奏楽部ソルフェージュ指導等を経て、メープルピアノ・スクール設立(横浜市磯子区)。 ピアノ指導のキャリアとプレイヤーとしての経験を活かし、幼児から大人まで後進の指導に努めている。  
横浜市主催コンサート、山手西洋館(イギリス館、ベーリックホール、ブラフ18番館)三溪園「観月会コンサート」、横浜ジャズプロムナード等、横浜、東京のホール、ライブハウスを中心に各地で演奏活動を行っている。オリジナル曲を演奏することも多く発表したオリジナル曲はCD収録曲を含め100曲以上にのぼる。今までにCD5枚をリリース。
ボランティア演奏も積極的に参加している。

クリストファー・聡・ギブソン(チェロ)

アメリカ・ミシガン州生まれ。4才よりチェロを始める。高校在学中に Tanglewood, Indiana University, Interlochen の夏期プログラムに参加。横浜インターナショナルスクール卒業後、2005年に米イェール大学に進学、哲学・政治学を二重専攻。
在学中、チェリストAldo Parisot氏とのオーディションに合格し、Pierre Fournier氏の最若年の弟子であり、Janos Starker氏の助手も長年勤めたイェール音楽院のOle Akahoshi氏にチェロを師事する。また、同音楽院のWendy Sharp氏に室内楽を師事する。2009年、同大学FOMコンクールにて入賞。2012年冬、国際演奏家協会新人オーディションにて入賞した際、審査員の一人であるバイオリニスト川畠成道氏から「曲の世界に入り込むことの出来る演奏」という賛辞を受ける。
2017年にはNPO法人Emotion in Motion主催のもと、“BACH Solo” 無伴奏チェロリサイタルシリーズをみなとみらい小ホール、ティアラ江東、所沢ミューズ、サントリーホール「ブルーローズ」にて開催。ヴァイオリニスト川井郁子氏とテレビ東京「100年の音楽」番組収録やコンサート、BLUE NOTE TOKYO (2020), セルリアンタワー能楽堂(2019), 三越劇場 (2018)などで共演を重ねる。東京、鎌倉、長野などを中心に活躍中。

金剛督(サックス)

12歳からサックスを始め、牟田久壽氏(日本吹奏楽指導者協会会長、元警視庁音楽隊長) 須田寔氏(武蔵野音楽大学教授)に師事。世界三大サックスメーカーの一つ、柳澤管楽器株式会社入社。
楽器の製造、研究、インストラクター、管理職を経て独立。1995年Congo Saxophone Studioを設立、サックス のリペア、レッスン、パフォーマンスのサービスを開始する。1997年リリースしたCD /OUR TRIBAL MUSIC にてJazz Life誌最優秀新人賞。横浜市教育委員会の辞令を受け、横浜市立港商業高校講師を4年務める。横浜美術館ホール、みなとみらいホール、神奈川県立音楽堂、三溪園、山手西洋館、他でのコンサートやレコーディングの他に、横浜市立大学附属病院や東京、神奈川、九州、北陸にある障害者施設や福祉施設等、ボランティア演奏活動も積極的に行なっている。
今までに日本のトップミュージシャン、イギリス、イタリア、スイス、フランスからの来日ミュージッシャンとの共演や書道家中谷翠泉氏、舞踏家大野一雄氏、俳優スチアート・バーナム・アトキン氏、朗読児玉朗氏、重要無形文化財保持者望月朴清氏、他。ジャンルを超えたコラボレーションも多い。バッハのコラールを中心に演奏する市民サックスアンサンブルの指導も行なっている。
今までに数枚のCDとDVDがリリースされている。

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