(TOP画像)ニック・ケイヴ《回転する森》(2016/2020)©Nick Cave
3年に1度開催される芸術祭「ヨコハマトリエンナーレ2020」が開幕しました!
2001年の初開催から数えて7回目となる今回は、インドのアーティスト集団、ラクス・メディア・コレクティヴ(以下、ラクス)がアーティスティック・ディレクターを担当。「AFTERGLOW-光の破片をつかまえる」というタイトルのもと、国内外から約70組のアーティストが参加しています。
まずは主会場のヨコハマ美術館へ…と、来てみてびっくり。建物の正面がストライプの布で覆われているのですが、まさか改修工事中…?
いえいえ、もちろんこれはアート作品です。風を受けてプリントカーテンが揺れ、常に変化する様子は、今ここでしか体験できないアートの世界だと感じます。
そして美術館に足を踏み入れると、グランドギャラリーを埋め尽くすキラキラの装飾に目を奪われます。
これはアメリカの住宅の庭に飾られる「ガーデンスピナー」と呼ばれるものだそうですが、よく見ると、きらめくオーナメントの中に銃や弾丸を思わせるモチーフが混在しています。作者のニック・ケイヴがアフリカ系アメリカ人であることを考えると、ただ美しいだけではない、社会問題に根ざした作品であることがより強く伝わってきます。
こちらは発光する「オワンクラゲ」の遺伝子を蚕に移植して開発された光る糸「蛍光シルク」を使った作品。壊れたお碗や皿などを布で包み、その上から蛍光シルクで破損箇所を修復したものだとか。思い入れのある生活道具を修復する行為は、トリエンナーレのソースのひとつ「ケア──互いを慈しむ」とつながるようです。
*ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景 竹村京《修復されたY.K.のフォロ》(2020)ほか©Kei Takemura
大型の映像作品が多数出品されているのも、今回の特徴のひとつ。密にならないよう配慮しながらスツールなどが用意されている作品もあるので、時間が許す限りじっくり鑑賞できます。
*ヨコハマトリエンナーレ2020展示風景 岩間朝子《貝塚》(2020)©Asako Iwama
「洗浄」をテーマに活動するアーティスト・岩井優は、オンラインを主軸に「エピソード06 岩井優《彗星たち》」を展開。一般参加者と共にディスカッションと清掃にまつわるアクションを行います。会場にはその“断片”が展示されています。
*詳しくはこちらをご覧ください。
広々とした明るい展示室に進むと、エレクトロニクス的な大蛇が…。
有機的な形状は数学の結び目理論に基づいたもので、264個の異なる形状をした部品が組み合わさり、結び目が複雑につながったひとつの輪を作り出しているのだとか。
展示室の中央に広がるレッドカーペットは、靴を脱いで自分の足で“体験”できるアート作品。障害物競走を強いるかのような凸凹を歩き、新しいものへ向かっての「助走」に踏み出してみる…?
3階通路には巨大な立体作品が横たわっています。作者は「肩こりをほぐす指圧グッズのように、人間のからだにとって気持ちのいい形や触感」に興味を持ったとか。なるほど、表面は柔らかで中身は指圧グッズっぽい気もします。
そう、これもまた触れて感じることができる作品のひとつなのです。側には除菌ジェルが用意されているので、手指をきちんと消毒してから“体験”してみましょう。
ちなみに、ラクスはこの造形から腸内細菌がつくりだす世界へと想像を広げました。
フィギュアをコラージュした立体作品は、近年は舞台美術も手がける金氏徹平の作品。身近なものがテーマになっていると、現代アートが身近に感じられます。
こちらの巨大な立体作品は、中央アジア原産の植物、ジャイアント・ホグウィード(和名:バイカルハナウド)を巨大化させたもの。かつて観賞用として世界中に広まったものの、触れるとかぶれを引き起こす毒性をもつことから駆除対象となってしまった植物です。ラクスが掲げたソースのひとつ「毒──世界に否応なく存在する毒と共存する」とつながるものといえそうです。
もうひとつの主会場、プロット48へは歩いて10分弱。
シンガポールと東京を拠点に活動するデニス・タンによる、自転車のベルを鳴らすインスタレーション作品が出迎えてくれます。デニス・タンは、次のトリエンナーレまでの100日間を旅するものとして、会期中および閉幕以降、展示と連動したパフォーマンスも実施するそうです。
*エピソード09 デニス・タン《自転車ベルの件》
南棟の入口でまず目に入るのは、エピソード00でもパフォーマンスを披露してくれたイシャム・ベラダの作品。
「わかる」「わからない」という世界を超えて楽しめるのが、2階で展開するエレナ・ノックスの作品群。「何をしたらエビをセクシーな気分にさせられるのか?」という共通テーマのもと、過去のワークショップで制作された作品などを集めたものです。
発端となるのは、1980年代、宇宙探索の際に動植物が人間の生命を維持する方法を科学的に研究するために使われた「エコスフィア」という循環システム。なぜそこからセクシャルな作品が生み出されるのか…その詳しい説明は、ぜひ会場で作品群と合わせてご確認ください。
こんなところにもアート作品が…! フロア全体がお化け屋敷というか、宝探しのようでドキドキします。
VRゴーグルが用意された体験型の作品も展示。フェイスガードが用意されているので、手指の消毒と合わせてしっかり対策しながら“鑑賞”しましょう。
屋外に展示されているのは、ハノイを拠点に活動する建築設計事務所ファーミング・アーキテクツの作品。植物と水槽を組み合わせ、魚の住む水が植物によって浄化される循環システムです。
北棟では、参加者同士が協力してアクションを起こす飯川雄大の作品が”展示”されています。画像として紹介できないのが残念ですが、タイミングが合えばぜひ“体験”してください。
*参加するにはWEBからの事前予約が必要です。