『かなフィル×仙台フィル緊急対談!』 “中の人”などいな・・・、いや、やっぱりいた!! ふたりの中の人が明かす、オーケストラ広報の裏ばなし
クラシックやオーケストラを知らなくてもなんだかおもしろい!? かなフィルさんと仙台フィルさんの絶好調なつぶやきたち
−ついに、中の人登場ですね。Twitterでは、かなりユニークなつぶやきもしていて、とても人気だとか?
【仙台フィルさん】ありがたいことですが、正直、反響に自分たちが驚いている面もありますね。これまでで、とくに反響が大きかったのは2017年1月につぶやいた「空前絶後のォォ!!!」の件。お笑い芸人のサンシャイン池崎さんのセリフをお借りして仙台フィルの紹介をしたのですが(笑)・・・、これがみなさんに受け入れられた。1000件以上リツイートされ、いくつかのテレビ番組でも取り上げていただきました。
あと、「飴」の件も。パインアメってありますよね? ドーナッツのように真ん中に穴の空いた飴ですけれども、あれは笛ラムネのように吹いても音が鳴らないんですよ。でも、プロの演奏家だったら鳴らせられるんじゃないか、と。それで、かなフィルさんと一緒に楽団員のメンバーに試してもらったら、みごとに成功者が出た。その様子を動画でツイートしたのですが、こちらの反響も大きかったです。
【かなフィルさん】かなフィルでは、「メンバーが入れ替った演奏会」の件ですね。このときは、私も思わず楽しんでしまいました。常任指揮者・川瀬賢太郎が出演した演奏会なのですが、本編が終わったアンコールでのこと。それまで指揮をしていた川瀬が突如指揮台を降りて、代わりにコンサートマスターの石田泰尚が指揮を取りはじめる。すると、今度はコンサートマスターが不在になるわけですが・・・、いつのまにか出演予定のなかった﨑谷直人がしれっと(笑)。いわゆるドッキリ企画だったのですが、演奏メンバーも私も知らされてなかったので、おかしくて、おかしくて。お客さんにもとても楽しんでいただけて、動画ツイートの反響もよかった。このように、ライブ感を伝えられるのもTwitterの大きな魅力ですね。
その様子がこちら
指揮:川瀬賢太郎
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
ハイドン:交響曲第94番ト長調「驚愕」(アンコール)
−よい意味で、クラシックや公的な楽団というイメージに捉われない情報発信に取り組んでいるのですね。Twitterを活用した経緯を教えてください。
【かなフィルさん】実は、かなフィルはもともとそういったことに前向きな楽団なんですよ。かなフィルは2010年ころからTwitterを開設しているのですが、前任者がSNSなどに詳しく、以前から「Ustream」や「フェイスブック」なども活用してきました。ただ、現在のようなスタンスになったのは、仙台フィルさんとの交流が大きいですね。同じ中の人として、楽団やクラシックの魅力をどう広げていくか?など、さまざまな情報を適宜共有しながら、企画を練っています。確かに、内容のユニークさについては、楽団内で意見が分かれることもありますが、大切なのはより多くの方々に興味を持っていただくこと。私としては今のようなスタイルがとても有用だと感じています。
【仙台フィルさん】仙台フィルも同様です。以前からTwitterを活用していて、私は2014年から担当になりました。前任者からやってみないかと誘われ、ぜひ!と。でも、Twitter担当を誘われる以前から、つぶやきは逐次チェックしていて、自分ならこういう情報を発信したいなと。具体的には、演奏会のみの情報だけではなく、楽団自体の魅力を伝えたいということですね。なので、つぶやきは制作サイドの視点から企画したものが多いんです。
ひとりでも多くの人に魅力を届けるため、より身近で親しめる情報を
−Twitterを担当する中の人として、大変なことはありますか?
【かなフィルさん】そうですね・・・、「これまで演奏会に足を運んだことがない人」や「クラシックに馴染みがない人」にいかに興味を感じてもらうかですね。年齢でいえば10代〜20代の若者ですが、そこが大変です。若い方にスムーズに受け入れられるようにと、言い回しや言葉尻を考え込んでしまうこともあります。あとは、タイムリーな話題を収集しなければならないので、常にスマートフォンを手放せないことでしょうか。
【仙台フィルさん】あと、作業環境もですよね。
【かなフィルさん】ああ、確かに(笑)。同僚はみな、私が中の人だと知っているので、本当は気にしなくてもよいのですが・・・、スマートフォンを片手にパソコンを見ていると、なんとなく後ろめたさを感じてしまうんですよ。
【仙台フィルさん】今は席が違うので気になりませんが、かつては仕事中にTwitterをみている時、同僚が私の席の後ろを通ると、「遊んでるんじゃないか」って思われるのがイヤでした(笑)。
−広報の手法としては、ずばり集客効果を実感していますか?
【仙台フィルさん】はい、効果はあります。ただ、つぶやきの目的は集客ではないんですよ。正確には、“のみではない”ですね。確かに、主題は運営ですから、集客は大切です。でも、本懐はそこではなく、あくまでも目的は「多くの人と仙台フィルの距離を縮める」こと。ユニークといわれるつぶやきに関しても、どうすればクラシック、オーケストラという垣根を感じさせず、仙台フィルハーモニー管弦楽団自体や一人ひとりのメンバーに興味を持っていただけるかを考えてのことでした。純粋に“なんか面白そうなことやってるな”など、なんでもよい。一人でも多くの方に僕たちの存在を知っていただきたいんです。そして、そこからクラシックやオーケストラに関心を持っていただければなおよしだと考えています。
つながるオーケストラ。楽団の枠を超えるあたらしい活動の息吹きは今、全国へと
−かなフィルと仙台フィルの交流もTwitterがきっかけだそうですね。
【かなフィルさん】そうなんです。それも大きなメリットですね。というのも、主に首都圏の楽団にいえることですが、常に切磋琢磨で、良くも悪くもお互いライバルだという意識が強い。積極的に交流しようとすることはほとんどありません。でも、Twitterから仙台フィルさんと出会い、こうして交流もできている。これは素晴らしいことだと感じますね。楽団の取り組むべき課題を共有し、改善策を練ることもできますし、今までにない演奏会の企画を立てることも。なので、Twitterは楽団間の相互交流の大切さを実感させてくれたツールでもあるんですよ。また、私たちを事例にして、全国の楽団がつながっていくかもしれないという期待があります。そうなれば、個々の運営だけではなく、クラシック界全体にも寄与できることだと思っています。
−最後に、今後の活動を教えてください。
【仙台フィルさん】ふたつあります。ひとつは、オーケストラの楽しみ方を伝えていくこと。例えば、観光イベントとしての提案ですね。それは、旅行でもよいし、出張の空いた時間でも。各地の名物やスポットを楽しんでもらいつつ、気軽に地方の楽団の演奏に触れてもらう。そういった、提案や環境づくりもどんどん行っていきたいと思っています。
もうひとつは、先ほどのかなフィルさんのお話にもありましたが、「つながり」です。全国の楽団が交流を行える機会はなかなかない。とくに、私たち中の人はお客さんとオーケストラをつなぐ最前線にいるにも関わらず、他楽団の情報には疎いんです。それで、いろいろなことを忌憚なく話し合える場が必要だと感じていました。
実は今日、「中の人会」の日なんですよ。かなフィルさんと楽団の中の人が集まって座談を行う会を開催しているのですが、5回目の今回は、全国から19人の中の人が集います。まだ情報共有の段階ですが、いつかこの会から全国の楽団が一丸となれるような大きなイベントを実現してみたいですね。
【かなフィルさん】実は、かなフィルには一大転機がありました。2011年からスタートした「ブルーダル基金」なのですが、私自身はそこから楽団員の心持ちが変わったと思っています。それは、お客さんの支援・応援あってこそのかなフィルなんだ、という自覚です。ですから、今後もみなさんにとって身近な存在で、かつ深い感動を与えられる楽団であり続けたい。そのために、まだ見ぬ方と楽団のよい架け橋になれるつぶやきに、これからも取り組んでいきたいと思います。
<神奈川フィルハーモニー管弦楽団>
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