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アート演劇・ダンスその他

神奈川からはじまるマグネット・カルチャー

神奈川からはじまるマグネット・カルチャー
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黒岩:今日は「マグネット・カルチャー~エンターテインメントの魅力」というテーマで語り合いたいと思います。まずはここKAAT神奈川芸術劇場で2015年11月に初演され、人気を博したオリジナルミュージカル「HEADS UP!」についてお聞きします。ちょうど今月の14日からここで再演されますね。

ラサール:ここKAATで12月14〜17日までやって、1月には富山、長野、2月には大阪、名古屋、3月には赤坂で公演があります。私は喜劇を中心に活動してきましたが、このミュージカルは10年前から構想していたんです。その企画をKAATが取り上げてくれて、そこから試行錯誤を重ね、念願のミュージカルを創れることになりました。とてもうれしかったですね。KAATと神奈川県の協力がなかったらできなかった。

黒岩: 今、マグネット・カルチャー、略して「マグカル」といって文化芸術によって人を集めようとしています。イメージはブロードウェイですね。ブロードウェイに行くと必ず面白いものやっている、そういうところに神奈川もしたいなという思いがあって。ここに来なければ見られない、見たいときはまた神奈川に来てくださいねというものができればと考えていたので、「ここで生まれたもの」として、ラサールさんがKAATでオリジナルミュージカルを創ってくれたのは本当にうれしかったです。
「HEADS UP!」は舞台の裏の話なのですが、僕の予想をはるかに超えた面白さで多くの人を引きつけてくれました。
神奈川では、こんなに面白いことをやっている、こんなに面白い人に会える、そうした人をマグネットのように引きつけるマグネット・カルチャー(マグカル)を推進していますが、「HEADS UP!」のようなコンテンツを、もっと創っていきたいですね。

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ラサール:最初に知事から横浜をブロードウェイにすると聞いたときは、あまりに壮大なお話にとても驚きましたが、同時に勇気も湧いてきました。

黒岩:今回の再演は初演と同じ形になりますか?

ラサール:今回も、ほぼ同じメンバーでやります。あれだけ忙しい人たちが日程を空けてくれたというのも、やっぱりもう一度やりたいという皆さんの気持ちがあったからだと思います。

黒岩:いま僕ら、KAATの舞台の上でしゃべっています。このKAATは、お客さんにも見やすいと評判だし、演じる人にとってもすごく評判はいいのですが、制作側にとってはどうですか。

ラサール:魅力的ですね。舞台が広いし、奥行きが深い。前からの映像も後ろからの映像も、十分な距離がとれるので、リア(※1)で映像が打てる。例えば後ろから本当の車をグアーと出すこともできるし、舞台を張り出すこともできる。オケピ(※2)もできるし。何よりプロセニアム(※3)が動きますから、広くもなる。こんなところは他にない。「HEADS UP!」もここだから誕生できた。

黒岩:「HEADS UP!」ってKAATという劇場があったからこそできたんですね。

ラサール:本当にそうです。まさにここで稽古していたので。照明さんが電動で上がっていくジーニーっていう昇降機があるんですが、あれなんて舞台上で使う人ほとんどいないのです。他の稽古場で稽古していて、他の劇場であれ使いたい、といったときに絶対に使わないですから。KAATで使わせてほしいといったら使わせてもらって、そのまま他の公演にも持って行かせてもらっているから、KAATがなかったらできなかったですね。

黒岩:それこそがマグカルそのもの。まずはここKAATが、エンターテインメントの発信源となり、神奈川全体に広げていきたいと思っています。ラサールさんには文化芸術活動へ専門的な立場からアドバイスをいただく「マグカル・テーブル」のメンバーにもなっていただいています。ラサールさんの提案をもとにして、「マグカルナイト」という企画を11月から始めました。この企画では、毎週水曜日に、スタンダップコメディ、ジャズ、大道芸などを継続的に上演します。

ラサール:僕自身も日本スタンダップコメディ協会会員ですから、そうした仕掛けをどんどん創っていけるように、できるだけ協力していきます。

黒岩:ブロードウェイには素晴らしいミュージカルがあり、お芝居がある。それを見るために、世界中から人が集まります。そういうところに神奈川もしていきたいので、ぜひ力を貸してください。

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神奈川県の文化プログラムにご期待ください

~対談を終えて~
神奈川では、2019年にはラグビーワールドカップ2019TMの決勝が開催されますし、2020年には東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において、セーリングなどの競技が実施されます。海外から来られるお客さんに楽しんでいただくためにも、文化芸術のイベントをいつでもやっているという、言葉を超えてつながってくる演劇空間を文化プログラムとして創っていきたい。
これまでも、地域の個性を生かしたミュージカルや短編演劇の祭典などを行ってきましたが、こうしたプログラムをKAATを拠点としてどんどん増やしていきたい。異次元の感動体験ができるような、新たな文化面でのレガシー(遺産)となることを目指したいですね。

黒岩祐治

※1「リア」:リア・スクリーン。スクリーンの表と裏から照明を照らすことができる一枚物の幕。
※2「オケピ」:オーケストラ・ピット。オペラ等でオーケストラが演奏する舞台と観客の間にある一段掘り下げられた場所。
※3「プロセニアム」:プロセニアム・アーチ。舞台と客席がプロセニアム(額縁)で明確に区分されている劇場の方式。
(出典:(公社)全国公立文化施設協会「劇場・ホールで働く人のための舞台用語ハンドブック」(2014年3月))

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