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講座・ワークショップ

3年に1度、世界の現代アートが横浜に ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス

3年に1度、世界の現代アートが横浜に ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス

横浜美術館で押さえておきたい作品はこれ

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アイ・ウェイウェイ(艾未未)《安全な通行》2016《Reframe》2016
ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景(横浜美術館)撮影:加藤健©Ai Weiwei Studio 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

横浜美術館のエントランスにある外壁には、中国・北京生まれの現代美術家アイ・ウェイウェイ(艾 未未)自身が取り組んでいる難民問題に関連した大規模なインスタレーションが展示されています。アイ・ウェイウェイは、常に自らの置かれた社会状況に関わり、芸術概念を拡張するかのような活動を推し進めていているアーティストです。これは、中東や北アフリカから地中海を渡り、レスボス島に漂着した難民たちが実際に着用していたライフジャケットや救命ボートで構成されています。生きるか死ぬかという、極限状態の人々が着用していたライフジャケットの大群からは無言の叫びが聞こえてきそうです。

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ジョコ・アヴィアント《善と悪の境界はひどく縮れている》2017
ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景 撮影:田中雄一郎 写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

エントランスを抜けてすぐのグランドギャラリーでは、日本古来のモチーフであるしめ縄のような巨大な竹のインスタレーションがお出迎えをしてくれます。この作品は、自国で失われつつある伝統文化、人間と自然の共生について考察を重ねているインドネシア・東ジャワ生まれのジョコ・アヴィアントによるもの。アーティスト自身が約1500本にも及ぶ母国の竹を使い、独自の手法で編み上げて作りました。かなり大きく、2階から眺めても存在感がたっぷりです。

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ザオ・ザオ(赵赵)《プロジェクト・タクラマカン》2016 イメージ

日本で初めて本格的に紹介される若手アーティストで、現代の中国が抱える諸問題に正面から切り込む作品を発表する中国・新疆ウイグル自治区出身のザオ・ザオ(赵赵)。作品「プロジェクト・タクラマカン」は、アーティストの出身地であり、世界で2番目に広い砂漠のタクラマカン砂漠の真ん中に巨大な冷蔵庫を運んで配線し、冷えたビールを飲むという行為を映像にしたものです。使われた100kmにも及ぶ電線も展示され、広大な砂漠で現代の孤立した状態などについて思いを馳せます。

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オラファー・エリアソン「Green light─アーティスティック・ワークショップ」 2016 Co-produced by Thyssen-Bornemisza Art Contemporary Photo: Sandro E.E. Zanzinger / TBA21, 2016 ©Olafur Eliasson

現代アートシーン最重要人物と名高いアーティスト、デンマーク・コペンハーゲン生まれのオラファー・エリアソンの作品も見逃せません。「Green lightアーティスティック・ワークショップ」は、ウィーン、ヒューストン、ベネツィアで開催してきた難民・移民支援を目的に発足したワークショップです。難民や帰宅困難者らがスタッフとともに希望の光となるグリーン・ライト(青信号)を組み立てる行為を通じて、社会に接続する意義や共生の意味をより広い層の人々と考え、共有することを目標に実施されます。

横浜赤レンガ倉庫1号館で、「横浜」関連の 新作を披露

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クリスチャン・ヤンコフスキー《重量級の歴史》2013 Photographer: Szymon Rogynski Courtesy: the artist, Lisson Gallery

ドイツ・ゲッティンゲン生まれのユーモアに満ちた作品で知られるクリスチャン・ヤンコフスキーは、身体と公共彫刻の関係性について言及する3部作を出品しています。重量挙げのポーランド代表チームの現役選手が、ワルシャワ市内の歴史的人物の彫刻を持ち上げようとするものや、オリンピックを目前にした日本の「気の流れ」を良くしようと、横浜の公共彫刻を揉みほぐそうとするマッサージ師の映像を実際に治療用ベッドや椅子に横たわったり座ったりしながら鑑賞します。

他にも、東京都生まれの宇治野宗輝による家電製品や改造されたエレキギターなどが動きや音を発し、演劇的な空間を現出させる映像作品も興味深いです。舞台は戦争後、工業化の進んだ20世紀日本の日常で、物質社会に個人がどう向き合い、いかに接続し、それを再構成できるのかをアーティスト自身による英語の語りで試みています。流れる映像の中で淡々と語る状況描写が、私たちの住む日本の今と、均質化する世界の存在を浮き彫りにしていきます。

普段は中に入れない横浜市開港記念館の地下にも作品を展示

今年開館100周年を迎え、現在は国の重要文化財に指定されている横浜市開港記念会館。普段は中に入ることのできない地下に入り込んで作品を鑑賞することが出来ます。かび臭く、暗い地下では静岡県生まれの柳幸典による廃材で作られたゴジラが待ち受けています。瓦礫から大きな目でこちらを睨みつけてくるゴジラは迫力があります。ほかにも、憲法第9条をLEDで表したものや日本の国旗がモチーフで崩れていく様の作品など、日本の「今」に問いを投げかける作品が並びます。あまり移動で歩きたくないという人は、みなとみらい線日本大通り駅すぐにある同館から見始めるのがいいかもしれません。ここからBankART Studio NYKまで数分歩き、バスを利用して他の会場へ移動すると良いと思います。

会場間無料バスも運行

横浜美術館と横浜赤レンガ倉庫間は30分毎に、アーティストの手によって装飾された会場間無料バスが運行されています(土・日・祝日の昼間は15分毎に運行)。他にも、黄金町バザール会場やBankART Studio NYKを結ぶバスもあるので、運行情報を確認しながらアート巡りを楽しみましょう。

無料の音声ガイドアプリをインストールしてみよう

スマホに「ヨコハマトリエンナーレ2017音声ガイド」アプリをインストールしておけば、作品のガイドやアーティストのインタビューを聞くことができます。各会場では無料でWi-Fiが使用できるようになっているのでアプリをダウンロードして活用してみてください。

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ミスター《まるで胸に穴が開いたような、僕の知っている街、東京の夕暮》2016
©2016 Mr./Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.Courtesy Perrotin

フリーWi-Fiが使用できる場所

・横浜美術館(グランドギャラリー、展示室、ショップ、カフェ)
・横浜赤レンガ倉庫1号館(2階・3階)
・横浜市開港記念会館(地下)

ヨコハマトリエンナーレ2017と一緒に楽しめるアートプログラムも要チェック

「セット券」で鑑賞できるプログラムとして、まずBankART Studio NYKで開催される「BankART Life Ⅴ-観光」をご案内しましょう。ここは、同会場の大規模な空間を活用した大型の作品群と黄金町地区へ向かう都市的な道草がテーマとなっています。さらに、黄金町バザール会場で開催される「黄金町バザール2017 Double Façade 他社と出会うための複数の方法」では、アートとコミュニティの関係、アジアとの交流をテーマにアートフェスティバルを開催しています。作品展示のほか、制作プロセスの公開や参加型プログラムなど多彩な内容が展開されています。
また、YCC ヨコハマ創造都市センターでは美術家、鬼頭健吾の展覧会「YCC Temporary」を開催する他、象の鼻テラス周辺では「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017」と「スマートイルミネーション横浜2017」が開催されます。ヨコハマ・パラトリエンナーレは障害のあるなしに関わらず、多様な市民やアーティストらが対等な立場で芸術活動に取り組み共生社会の実現を目指すアートプロジェクトです。また、スマートイルミネーションは環境技術とアートの創造性を融合させた光の国際アートイベントで、今年度からは市内のイルミネーションと連携して横浜の夜を彩ります。
横浜都心臨海部(大岡川~象の鼻パーク周辺)では、「Creative Waterway 川と海でつなぐ創造の拠点」として、海や川の水辺を舞台に様々なアート作品を展示する屋外展示型のアートプログラムも開催しています。

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パオラ・ピヴィ《I and I(芸術のために立ち上がらねば)》2014 Photo: Guillaume Ziccarelli Courtesy of the Artist & Perrotin

3年に1度、横浜市内をあちこちアート巡りできるヨコハマトリエンナーレの開催を心待ちにしている人も多いことでしょう。難しく考えず、世界の現代アートに身を任せ、作品と一緒にただ感じる時間を過ごすことで、明日からの自分の価値観が変わることもあるかもしれません。今回ご紹介しきれなかったアートプログラムもまだたくさんあるので、詳細は公式サイトでご確認ください。

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