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映画『立候補』プロデューサー・木野内哲也インタビュー

映画『立候補』プロデューサー・木野内哲也インタビュー

2月に都知事選のニュースを見ながら昨年印象に残ったある映画の事を思い出した。
それは第68回毎日映画コンクールでドキュメンタリー部門を受賞した映画『立候補』である。
その映画は選挙で「泡沫候補」と呼ばれている人達。悪い言い方をすれば「絶対に当選はありえない」と思われている人達に迫った映画だった。
しかし選挙や政治に対しての批判的なドキュメンタリーと思いきや…見事にその予想は裏切られ、
「感動と疑問」が入り交じるなんとも不思議な感覚に襲われる映画だった。
「いったいあれは何だったのか。なぜマック赤坂だったのか」
いろんな疑問から調べてみたところ、なんと制作に携わったプロデューサーが神奈川在住という情報を聞きつけ、
マグカルではその疑問を解くべく、インタビューを敢行。
また今回はゲストインタビュアーとしてドキュメンタリー作家の玄宇民(げんうみん)氏を迎え、制作側の視点も交えながら
映画『立候補』を制作された木野内哲也(きのうちてつや)プロデューサーに今回の映画についてお話を伺いました。
あの映画はどういった経緯で生まれたのだろうか…。

 
撮影協力:一心太助 新高円寺店 http://tabelog.com/tokyo/A1319/A131904/13123087/
Guest Interviewer:玄宇民
Photo・Interview&Text:西野正将
 
木野内哲也(きのうち てつや) 
製作&撮影 1971年東京都出身
Massachusetts College of Art, San Francisco Art Institute 映画学科卒
2005年「フジヤマにミサイル」藤岡利充監督作品で撮影を担当。以後、多くの藤岡作品に携わる。
映画『立候補』WEBサイト:http://ritsukouho.com

■玄 宇民 (げん うみん)
1985 年生まれ。かつて韓国の済州島で海女をしていた祖母の墓参りを追った『to-la-ga』(2010)、
多様な韓国系のルーツを持つ若者をソウルで撮影した『NO PLACE LIKE HOMELAND』(2011)などの作品を制作。
生まれた地を離れ、移動を続ける人々をテーマとして扱う。
現在は韓国の旅客フェリーを舞台にした新作の撮影を控える。
2011 年 東京芸術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了
2012年 第13回東京フィルメックス Talent Campus Tokyo 参加
高山明氏の演劇ユニット PortBの作品にも数多く参加。

 
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■今回のインタビューに合わせ、シネマ・ジャック&ベティ支配人の梶原俊幸氏よりコメントをいただきました。
「映画「立候補」』は2013年7月参議院選挙の直前の6月末に東京で封切られ、横浜のシネマ・ジャック&ベティでは、同年8月に、横浜市長選挙の時期に、同じく選挙を題材にしたドキュメンタリー映画『選挙2』、『ムネオイズム 〜愛と狂騒の13日間〜』とあわせて上映した。いずれも見所のある優れた作品で、そのタイミングまとめて紹介できて良かったと思っている。『映画「立候補」』を上映していて印象に残っているのは、鑑賞後のお客さまが、みんな口々に「感動した」と言うことだった。泡沫候補の選挙活動に笑い、驚き、違和感を持った分だけ、最終的には感動し、自分に返ってくる。“気付いたら、すごい勇気もらってるじゃん”。当館の普段の上映作品と比べて、より多くの若い人に見てもらえた理由は、ドキュメンタリー映画にはなかなかない、笑いあり、涙ありのエンターテイメント性とメッセージ性があるからかもしれない。若者の政治離れだけでなく、映画・映画館離れも進む中、藤岡利充監督、木野内哲也プロデューサーは、ミニシアターシーンにおいて、今最も注目される存在である。
 
シネマ・ジャック&ベティ 支配人 梶原俊幸
http://www.jackandbetty.net
 


 
 

−映画制作のきっかけ/監督との出会い−

玄:木野内さんはマサチューセッツ留学中は映画の勉強をされていたんですか?
 
木野内:うん、そう。でも最初は彫刻で入ったんだよね。
 
玄:じゃあ元々「絶対映画で」っていうのでアメリカに行った訳ではなくて。
 
木野内:絶対っていうのはなかったですね。興味はあったんだけど。
映画《立候補》の場合は藤岡利充君が監督だから、僕はどっちかというと、カメラだったり、後は編集を見てどういうところが弱点なのかぁとか。

 
玄:編集も藤岡さんなんですか?
 
木野内:そう。彼が全部編集してるんだけど。それを一ヶ月に一回ぐらい二人で見るの。
 
玄::編集はどのくらいやってたんですか?
 
木野内:なんだかんだ言って1年ちょっとやってたんじゃないかな。
 
玄:編集だけでですか?
 
木野内:いや、選挙期間って17日間しかないから、前後して20日間くらいの撮影期間なんだけど、その20日間くらいの撮影素材をベースにしながら、編集を組み立てていくんだよね。で、その照らし合わせの作業というか、彼が作ってくる編集を2人で見て、ノートに書き出して、「ここの部分でこういう言葉を入れたらいいんじゃないか」とか、「ここの説明が足りてないからここの素材をこっち持ってこよう」とか、そういう詰めの作業をやりながら「ちょっと足りねぇな」って言ってまた撮りにいく(笑)。
 
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玄:それは期間中ですか?
 
木野内:いや、終わったあと。撮影期間は述べでいうと1年ちょっとくらい。しつこくやってたから。
 
玄:撮る前に構成表みたいなものはあったんですか?。
 
木野内:ないない。藤岡くんが書いた「夢追い人」というペラいちの企画書だけ。
 
玄:あ、もう全然ないんですね。ちなみにこの映画のきっかけは何だったんですか?
プロフィールを拝見したら以前、今回の監督でもある藤岡利充さんと劇映画を制作されていましたよね。
 
木野内:うんうん。『フジヤマにミサイル』ですね。
もともと藤岡くんとは何年くらい付き合ってんのかな。10年くらい付き合ってると思うんだけど。二人ともCMの制作会社にいたのね。彼が入社してきて僕の下に付いてくれたんだけど、すごく優秀で。でも突然彼が「辞める」って言い出したから「なんで辞めるの」って聞いたら「山口から映画撮るために出てきたのに作れてない」みたいなこと言い始めて(笑)。それじゃあ、俺も映画好きだから台本見せてもらって。そしたらすごく面白かったの。で、これはと思って。
 
玄:うんうん。
 
木野内:で、その時点で俺もサラリーマン7、8年やってたからもう、いいかってなって。
 
玄:ずっとその会社だったんですか?
 
木野内:そう。で、「俺も辞めるから一緒に作ろうぜ!」て言って二人で辞めちゃったの。
 
玄:えー。
 
木野内:映画作るために辞めて、まあ作品は公開できたんだけどレイトとか2週間の上映が関の山で。あといろんな映画祭とかにも送るんだけど一切引っかからなくて、結構ショックでかくて。
 
玄:なるほど。だって二人それに身を賭して…。
 
木野内:そうそう。だって俺子ども二人いたからね(一同:笑)
 
玄:反対はなかったんですか?
 
木野内:まあタイミングっていうのもあったし、その本が面白かったから。
これはもうなんか、『狂い咲きサンダーロード』を目指せ!くらいの勢いで。
 
玄:なるほど。
 
木野内:『狂い咲きサンダーロード』と、ジョン・カサヴェテスの『こわれゆく女』ぐらいのやつをぶっかましてやろうと思って。そしたら全然…(笑)。
で、やっぱ食えないし、俺はまた新しい会社で仕事始めて、新しく入った会社も広告関係だったから彼に監督としてお仕事をお願いして一緒にCM作ったりだとか。
 
玄:あ、なるほどなるほど。その後も二人の関係は続いたんですね。
 
木野内:そうそう。で、基本同じスタイルで。自分がプロデューサーなんだけど大体予算が少なかったりとかするから彼がディレクターと編集やって、俺がカメラとプロデューサーやるっていうスタイルかな。けど、その彼が、その帰っちゃうのよ山口に。実家が新聞の販売所をやってるんだけど、お父さんが怪我しちゃったりだとか、結婚みたいな話があったりだとか。で、「映像を諦めて帰ります」みたいな。結構そこも二人で話したんだけどね。「もうちょっと頑張れば飯食えるようになるから、また一緒に映画撮ろうぜ」って。けど、もうなんか決めちゃってたし、まあ一人だけの事でもないし。
 
玄:はいはい。
 
木野内:で、もう結婚式とか行くじゃない。行くともうお母さんとかが、「東京では弟のように接してくれて本当にありがとうございました。ただもう利充(監督の名前)は新聞屋を継ぐことを決めたんです」って(一同:笑)。
 
玄:それいつ頃だったんですか?
 
木野内:5、6年前くらいかな。
 
玄:じゃあ前作のを撮って2、3年。
 
木野内:そうじゃないかな。だから今回のやつとかも作品としてドキュメンタリーというのはもちろんだけど、それ以上に「映画監督・藤岡利充」という大きなストーリーになってるんだと思う。結局、山口戻って新聞販売所を続けてたんだけど、やっぱり夢を諦めきれなかったっていうか…。そこから映画ははじまっちゃってたんじゃないかな。
 
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映画立候補のメインビジュアル。現在マック赤坂氏が大阪市長選に出馬表明しているため
公平性を主張するデザインに変更されている。

 

ーなぜドキュメンタリー/なぜマック赤坂ー

 
玄:藤岡さんともう一回やり始めてなんでドキュメンタリーだったんですか?
 
木野内:それは、藤岡君が新聞配達やりながら「やっぱもう一回映像に戻りたい。でも自分の出来る範囲のなかでやるためにはどういったやり方があるのか」って考え始めて。そもそも彼は今回の題材を映画にするつもりは当初なくて。初めはYouTubeとかに挙げる、「インタビュー動画みたいなもの」って話は聞いてたの。
 
玄:こういうのをやりたいってプランはあったんですか?
 
木野内:うん。インタビューはUFOを信じてる研究家の矢追純一さんとか、
あとは徳川埋蔵金を追いかけてる人だとか、『月刊ムー』の人達とか、藤岡くんそういうの好きなのよ。
 
玄:なるほどなるほど。
 
木野内:で、本当にその人達が信じているのか。信じているならどうやって実現させようとしてるのかって事を聞きにいって、それをYouTubeにシリーズとしてアップしようと計画してたのね。
 
玄:はいはい。本当に肩ならしみたいな感じで。
 
木野内:そうそう。ちょっとずつリハビリみたいな感じ。
 
木野内:それで、政治的な部分で言えば外山恒一さんで、「政府転覆だ」って掲げている人が真剣にそれを考えているのかって事を確認しに行ったわけだよね。そしたらいわゆる「泡沫候補」っていうジャンルがあるなっていう事で羽柴誠三秀吉さんが出てきたりとか、マック赤坂さんが出てきたりだとか。
 
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©word&sentence (画像左より外山恒一・羽柴誠三秀吉)
 
西野:そういう気になる人を探している中でたまたまマック赤坂さんがいたって事なんですね。
 
木野内:そうそう。
 
西野:最初から選挙とか政治にまっすぐ向かっていった訳ではないと。
 
木野内:そうねー、ただ藤岡君のお父さんずっと議員だし、おれも政治が好きだから、そういう話はしてて。
 
玄:あー、なるほどなるほど。
 
木野内:そういう政治とか歴史とか映画とか、単純に好きだから。でも俺UFOとかはよくわかんないけど(笑)。
で、「外山さんにアポがとれたんでちょっと行ってきます!」って彼一人で九州行って、撮ってきたから「次どうすんの?」って聞いたら「とりあえずマックさんって人にアタックしてみます」って事になって。それで手紙を山口から送って、電話で話したら「会いにくれば?」みたいな話になって。
で、行ったらマックさんが「俺、今度、大阪府知事選出るし、羽柴さん来るはずだからおまえそれ撮れ」と。「羽柴さんが秀吉だったら俺は信長だ」みたいな。
大阪奪還宣言(笑)。
 
玄:マックさんがプロットを(笑)
 
木野内:「奪還選挙撮れるから、おまえそれ撮ったらいいじゃないか」みたいな。
で、いよいよ藤岡君から電話かかってきて、これは面白くなると思うから一緒にやろうって話になった。
だからあんまり公開とかそういうの全然考えてなかった。まあ「できたらいいな」くらい。
藤岡君がまた映像の世界に戻ってくるって言うのは自分としては涙が出るくらい嬉しかったから、もう何でもやろうって思って。ただ前作の件があったから、次やる時はもうとことん全部やりきろうって。藤岡君はマックさんの所に行ってその話があったから手応えというか、「これは画になる」って思ったんじゃないかな。
 
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玄:なるほど。なんか僕は最初から「泡沫候補」っていう問題があってその全体を等しく撮ってきた中でマックさんが立ってきたのかなって思ってたんですけど、どっちかっていうと外山さんに引っ張られてマックさんに引っ張られてどんどん中に入っていったって感じですかね。
 
木野内:そうだね。きっかけはそこだったんだけど、やっぱりその泡沫候補の人達が負けると分かってる。普通だったら負けるとわかるというのになんで打って出るんだろうと。それを探る上で、候補者のプロパガンダになっちゃいけないから、均等に撮ったんですよ。その出演してる人達というか、選挙に出ている人達というか。なかなか、泡沫候補の人達って撮らせてくれないんですよ。だから結構ギリで撮れてて…。断られるというか、捕まらないの。電話取んないし、家行ってもいないし。だから昭和の新聞記者っていうか昭和の刑事ドラマみたいな感じで待機してそれで一日潰れるとか。
 
玄:追いかけっこしてるんですね。
 
木野内:そう。自宅の前で早朝から待機して「まだ朝刊が取られていない!」とか。本当にもうアンパンと牛乳の世界で(笑)。
 
玄:でもそこで粘ったんですよね?「やっぱり効率が悪いから変更しよう」とかはなく。
 
木野内:そこはやっぱ監督の決めてたそのプロットていうか、やっぱ公平に撮らないといけない。
で、編集している時も最初は2時間半とか3時間くらいあったの。
 
玄:完成版は100分くらいですよね。
 
木野内:うん。公平に入れてたからね。で、恐ろしくつまんなかったの(一同:笑)。
 
玄:一回違うバージョンがあったんですね。
 
木野内:うん。恐ろしくつまんなくて「どうすんだこれ!」みたいな。
そっから寝かせて、もう一回手を加えて…。で、だんだんマックさんにしぼられていった。
 
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©word&sentence (画像:演説中のマック赤坂氏)
 
玄:なるほど。撮影が既に始まった後から撮りだしたとかって話もありましたけど、
そういう編集の段階も経て「あ、これはマックさんだ」って方向になったんですね。
 
木野内:そう。でも途中でマックさんにいくらインタビューしても僕らが想定の中で必要とする言葉って出て来なかったの。出てくるのは「スマイル」だけだったから、もう訳わかんなくなっちゃって。まあ、俺もプロデューサー兼カメラマンだし、藤岡君は監督だから、悩むわけ。これまずいって(笑)。
で、「これはもうどうしょうもない」と判断して、大阪戻って、別の新しい素材を撮影に行く感じだったかな。
 
西野:それは木野内さんの判断だったんですか?
 
玄:いやいや、それは藤岡監督の。やっぱりディレクターの直感っていうか、「これはもうだめだ」と。
で、秘書の櫻井さんとか、周辺を同時に追いかけ始めて。マックさんはしゃべらないし、聞かれても返してくる言葉は「スマイル」だから分からないの。
だから、マックさんを逆に輪郭から説明していくっていうか。
 
玄:はいはい。
 
木野内:「泡沫候補っていう実像を周りで固めていく」とかね。その中心核そのものを説明しちゃうともう別に映画にする必要ないから。
 
玄:確かに。
 
木野内:インタビュー映像って見直すと必ずどこかに取材対象者が選んでいる言葉ってあると思う。
それをもう一回符合させていくと、いろいろ見えてくると思うんだよね。
で、またそこに時間軸っていう作用を付加させたりすると一気に深みが出てくるっていうか、面白いか面白くないかは置いといて…。
平坦だったものが立体的に見えるというか奥行きが出る。なんかドキュメンタリーの面白いところって多分そこだと思うんだよね。観賞に耐えうるドキュメンタリーって10年後、20年後にもう一回必ず見直されるんで。
 

ー撮る側、撮られる側/予想と裏切りー

 
玄:なんか今の話聞いてると、止め時ってどうやって決めたんですか?
 
木野内:あーそれはやっぱり、秋葉原のラストシーンがあるでしょ?
 
玄:はいはい。
 
木野内:あれが撮れちゃったから。
 
玄:なるほど。
 
木野内:「あー、もうこれがラストだろう」みたいな。最後にマックさんの息子さんが豹変するじゃない。
要は、映画の中で豹変する人間が撮れたらそれである程度はなんかいけるっちゅうか、それはドラマだから、
そこでもうストーリーが自ずから語り始めるというか。「なぜ豹変したんだろうか」っていう。まあ、豹変っていうか変容だよね。
 
西野:その画が撮れた段階ではドキュメンタリーというよりも、一つのドラマのようにまとめるイメージはあったんですか?
 
木野内:当初のラストは、2011年の選挙期間中に画が撮れてて、それをクライマックスに使ってたんだけどね。無料の上映会とかやって反応見たりとかしてた。
 
西野:途中で一度完成していたんですよね。
 
木野内:そうそう。橋下知事の選挙演説のところをクライマックスに置いたバージョンで上映会をやって。ま、とりあえずみんなに見せようみたいな。でもイマイチな反応しか返ってこなかったりだとか、そうこうしているうちに、あれは…2012年の都知事選かな。
あのラストのシーンは一度完成してから1年後の映像なんだよね。
 
西野:結局はその撮るモチーフから終わりまで全て、予想出来ていなかったっていうことですよね?
 
木野内:うんうん。以前、森達也さんも「あれ、君たち狙って撮ってないでしょ?」って。「いや、その通りでございます」(笑)。
まぁ、なんとなくは考えていたけど、ああなるとは思っていなかった。
 
西野:マックさんは先日の東京都知事選に出てらっしゃいましたけどもう追いかけてはいないんですよね?
 
木野内:んー、続いているというか、一応まだ追っかけてはいるというか。橋下さんの方に取材申し込んだりとかしてます。今度、マックさん大阪の市長選に出る予定でしょ。今度は橋下さんの視点から撮れたらと。
 
玄:それで2本並ぶと今回の作品が橋本さんに対しての「フリ」みたいになりません?橋下さん結構キャラが立ってるからやっぱり記憶に残る人は多いじゃないですか。最後の記者会見のシーンとか。
 
木野内:けど、藤岡君のプロットに従うと、政治家に限らず「全ての立候補者をたたえる作品に」っていうものなんだよね。やっぱ世の中そうでないと。すぐみんなディスったりとかするじゃないですか。なんかツイッターで炎上だとかよくある話で。けどそういうのってあんまりいいと思わないんですよね。人の揚げ足取って、ああだこうだ言ったりだとか。で、それってやっぱ世の中というか人の意識を萎縮させるというか、本来であればいろんな可能性もあってしかるべき世の中であったほうがいいと思う。そうやって人の揚げ足をとったりだとか、笑ったりだとか、それはすごく残念なことだと思っている。
 
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西野:なんかそういうのもラストシーンに収束されている感じはしますね。確かに「撮れちゃった」っていう感じが凄くする。
 
木野内:だからドキュメンタリー作品ってけっこう難しいよね。本当にマックさんがいい人かって言ったらよくわからない。
 
玄:撮ってる時の被写体に対して嫌になる時もあると思うんですが。
 
木野内:あー、あるよあるよ。いまだにある。
 
西野:それをどう撮り続けたか気になるのですが…。「愛」はあるんですかね?
 
木野内:あーそれはね、監督がけっこう頑張ったと思うよ。だってマックさん急に怒り始めたりとか結構理不尽だったりする場面もあるから。けどこっちは撮らせてもらっているわけだし、そういった所も全部見て、ああいう風にになったんだけど、それは藤岡君の意志表明だったんじゃないかな。「もう一回、映画にチャレンジしてみよう」っていう。その部分はマックさんや泡沫候補者と言われている人達みたいに、馬鹿にされるとわかっていながらも前に出ていくっていうのと、変わらないと思うんだよね。で、マックさんを否定するってことは自分自身を否定するってことになるから、だからそれはやんないっていう…。信念みたいなものもあったんじゃないかな。ダークサイドに転ぶ事ってすごい楽だから。その撮影対象を批判するとか、別にそれは悪いことじゃないと思うんだけど。
 
玄:藤岡さんの場合はそっちの方ではないと。
 
木野内:うん。
 
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西野:でもなんかそこが最終的にすごい裏切られるというか、フィルターになった気がするんですよね。
始めは、マックさんは「面白い人だな」みたいに映っているように感じたんですけど、途中で観客も呆れるような醜態も全部撮影しているわけで、学園祭に乗り込んで嫌がらせのような演説をしたり、酔っぱらって道路に飛び出したりだとか…。
「この映画って結局マックさんをにどう扱いたいんだろう」って、いい意味で混乱させられるみたいな。
 
木野内:そうだよね。
 
玄:見てる方は、「俺この人好きになれないよな」とか思いながらマックさんのことを見てたら最後がああいう事になって、「俺らもそっち側で見ていたのかな」みたいな感覚になって。
 
木野内:ブーメランね。だって俺らもそうだったから。カメラの置き位置も最初は引いているでしょ。最初のうちは引きで構成してるから。あれは引かざるを得ないんだよね、自分の気持ちが引いているから(笑)。
 
西野:あ、確かに。それ面白いですね。
 
木野内:自分のカメラマンとしての気持ちももちろんだけど、周りの人の反応も含めての画作りだから。
  
玄:なるほど、最初の選挙管理委員会の部屋とかまさに。
 
木野内:そうそう、だから引くじゃない。
 
西野:すごい引いてましたよね。
 
木野内:けど、段々こう近づいて行くっていうか。マックさんがだんだん面白くなってくるっていうか、こっちが引き込まれて行くっていうことなんだけど。で、カメラのポジションも最初は高いところからなんだけど、だんだん低くなっていく。橋下さんの演説のシーンでこう大きく変わったっていうか、あの時俺たちは4mくらいのブームの先にカメラつけて見下ろしてたんだけど、あの戦った後に、何かもう…どうしようもない人間の悲哀溢れるドンキホーテの顔を見たら、「参りました」って言わざるを得ないよね。カメラは下がらずを得ない(笑)。カメラを下げて、被写体を見上げるように撮る。あれはやっぱりそういう風に見えたから、本当にそういう風になんかこう、人間というか、神々しい英雄像みたいに思えたから。で、あれが撮れたから自分たちもガラっと変わっていったんじゃないかなって思う。当然、それは編集に反映されているんだと思う。藤岡君の編集の秀逸さもそうだと思うけど、やっぱり自分達自身も変容したっていうね。そこはストーリーに沿ってお客さんと歩調は同じ。
 
玄:撮り手もそう感じてたって事ですね。
 
マックと息子
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画像左:マック氏の息子が群衆と口論になるシーン。初めてマック氏の演説を見学していた。
画像右:マック氏が演説を見つめながら寂しげな表情を見せるシーン

ー主題歌『街明かり』/内容と歌詞のリンクー

 
西野:今回の映画では木野内さん自らが主題歌を歌ってますよね?プロデューサーとしてはとても珍しいスタイルだと思うんですけど…。
個人的にはTHA BLUE HERBみたいで好きです。
 
木野内:あ、初めはTHA BLUE HERBにお願いしようかって。監督がTHA BLUE HERBの「野良犬」って曲を使いたいって言ってきて。
 
西野:そうなんですね!
 
木野内:で、音源とか送ってきてくれて聞いてみるとまぁ、歌詞の内容とかね、やっぱすごい近いっていうか。
 
玄:はいはい。
 
木野内:で、イル・ボスティーノ(THA BLUE HERBのMC)の書いた歌詞の内容と映画『立候補』の内容がすごくリンクしてるっていうか。歌詞の中で、ある日、首輪をつけた飼い犬がたった一人で生きている野良犬とすれ違う瞬間があるの。当然その歌詞はその野良犬目線で書いているんだけれど、すれ違う瞬間に目線が変わって、飼い犬が寂しそうな目をしながら「お前もいつかこの人生の絶望を知るさ」みたいな事を野良犬に語りかけるわけ。で、それって映画『立候補』で最後に突き付けるそのブーメランと同じ効果が多分あったんだよね。おそらくそこに藤岡君が引っかかったんだと思う。だからそれを使いたいって言って。で、イル・ボスティーノにコンタクトを取ったの。
 
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西野:打診はしたんですね。反応はどうだったんですか?
 
木野内:もうナシの礫(一同:笑)。
 
西野:反応すら無いと(笑)。
 
木野内:そうそう。まぁ一応何回かやったんだけど辿り着けなくて。
まぁ、これ以上追っかけても無理だなあって。でも「これ、俺書けるぞ」って。だって、一緒に映画作ってっから。
 
西野:一番わかってますからね。内容というか、目線というか。
 
木野内:そう。だから目線にそっただけなんだよね。『街明かり』って楽曲なんだけど、歌詞は全部、映画『立候補』をなぞってるから。
 
玄:なるほど。
 
木野内:歌詞の「胸倉掴まれて、唾はきかけられて、踏みにじられて嘲笑われて」っていうのはマックさんの目線だよね。で、その「英雄が向かう先は吹き溜まりのウエスト。」「ウエスト」っていうのは、マックさんが橋下さんと対峙した後にすごく悲しそうな顔をするんだけど、その背景に「ゴーウエスト」っていう馬鹿でかい看板が出てるの。だから英雄が向かう先っていうのは、西遊記じゃないんだけど、「西に向かえ、インドに向かえ」っていう話だったりだとか、「すれ違う撚れたジブラーンが耳元で叫び囁く」っていうね。で、ハリール・ジブラーンっていう詩人がいるの。そのジブラーンが書いた詩集で『The Prophet(予言者)』っていう詩集があるんだけど、それを誰がかたどっているかというと外山恒一なの。
 
玄:あー。
 
木野内:だから有名な政見放送の「有権者諸君!」て、もう予言なの。予言者。イメージ合うでしょ。
 
玄:ああ、確かにあの人は!最初マックさんの映画だと思って見はじめて、「あれ?この人かっこいいな」みたいな。
 
木野内:けど、残念なことにその予言者は2007年の都知事選以降、選挙に出なくなっちゃった。だから追いかけられなかった(笑)。
 


 

ーエンタテイメントして何が悪い!/ドキュメンタリーを演出するという事ー

 
玄:さっきの音楽の話もなんですが桜井さんやラストの息子さんのシーンって情緒を喚起するじゃないですか、やっぱり。
で、やっぱ映画として観てると、音楽だったり、ああいうところが見る方としては持ってかれちゃうんですよね。
 
木野内:はいはい。
 
玄:やっぱ持ってかれちゃって。でもなんかこう一歩引いたところからみると、そういうのが、なんだろう。「情緒に持っていっちゃってるんじゃないか」っていうような批判もできると思うんです。
 
木野内:そうだね。いわゆるドキュメンタリーっていわれるジャンルの中で話をした時に、音楽を乗っけることがどうなのかと、あとグラフィックの処理の仕方だったりだとか、その点を指摘する人もいたよね。うん。
 
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(画像:桜井さん(左)の家族とのプライべートシーン。彼はマック赤坂氏の秘書を務めている)

 
西野:そういった点ではポスターもすごいスタイリッシュっていうか、グラフィックロゴやコピーもキャッチーで、導入とかすごく徹底されてますよね。
 
木野内:そうねー。そこはまあ僕に聞くより、藤岡君に聞いた方がいいと思うんだけど、別にジャンルにこだわるというより「何を伝えたいか」だから。編集はその延長でしかないと思うんだよね。あんまり語る人いないんだけど、言うなれば、この映画って「音楽映画」っていう捉え方も出来たりだとか。マックさんの選挙演説中に音楽使い放題だし。改めて発見したのが、ナレーションをつけるか、つけないか問題だった。で、藤岡君的には、あのSE、例えばマックさんが鬼ころしをジュルジュルジュルって吸うシーンとか、足音だったりとか、あれ藤岡君が足しているのね。
 
玄:あれ、実際の音じゃないんですか?
 
木野内:そう。撮影2人でやってるからマイク届かないの。藤岡君がストローでジュルジュルジュルって。また下手じゃん、あの人(笑)。もうちょっと自然にやろうと思えば出来るんだけど、あれ全部藤岡君が一人でやっているから限界がある訳で。けど、藤岡君的には、「あれがナレーションだ」って言ってて。
 
西野:なるほど。
 
木野内:で、やっぱりあの字幕のタイポグラフィとかモーションみたいなのもやっぱり彼にとってはナレーションで説明なんだよね。やっぱり編集の延長でしかないし、音楽っていう要素もやっぱりそれはナレーションなんだよね。
その言語に、言葉はないんだけど、視覚であったり聴覚であったり、その説明として付加させるっていう。
 
玄:じゃあ特に「これはドキュメンタリーだからこうしなきゃ」みたいな決め事はなし?
 
木野内:いや、面白いほうがいいでしょ?だって、面白くないと見てくれないから。最低限のマナーじゃないけど、見てもらうためにそれは貪欲にならないと。で、一切そういうのを排除して、構成されるものがあったとしてその映画が興行収入が100億いくっていうんだったらそれはそれでいいじゃない。
人が1000万人見てくれたって言うならそれはいい事だと思うんだよ。
それを目指さないといけないから。「全世界の人に見てもらう為にはどう戦うのか」って事だけだと思うんだよね。「いや、1000人に届けばいいんです」っていうんだったら別にそっちにふっちゃってもいい。それで食えるんだったらね。今、俺が言ったのはちょっとプロデューサー的な話だけど、「どう仕掛けていくのか」って話だと思うのね。だから、型にこだわる必要はないんじゃないかな。「どう伝えるか」って話であって。
 
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西野:その戦い方に関してなんですけど、今回みたいなドキュメントの映画を作るまでに影響を受けた監督とか、よく参考にしている作品とかって木野内さんの中であったりしますか?
 
木野内:そうねー、やっぱりタルコフスキーだよね。大体タルコフスキーかコッポラ『ゴットファーザー』の1、2あたりだったり、あとは、『ディア・ハンター』ていうのはあの辺りだとか、えーと…カサヴェテスとか!いや、すごい好きだね。
 
玄:戦ってるって感じですね(笑)。戦い方って言ったら僕もドキュメンタリーだけど、タルコフスキーなり、コッポラと同じ戦い方は考えたりしますね。
 
木野内:藤岡君なんてあれだよ、『風の谷のナウシカ』だからね。
 
玄:ナウシカ!えー(笑)。
 
木野内:彼にとってのマスターピースってナウシカだから。
 
木野内:歴史上の民族間の争いをなぞっていたりとか、その中で「人間はどう生きていけばいいのでしょう」って投げかけだったりとか、あれって大きなロマンスじゃない。そこに藤岡君が思いを馳せるっていうのは横から見ててすごい面白い。で、この間、毎日映画コンクールの授賞式の時に、ジブリの鈴木さんが来てて初めて会えたから、「次は風の谷を実写でやらせてください!」とか言って(笑)。
 
西野:実写(笑)!
 
木野内:うん。で、「どうやって撮るんだ?」って聞かれて、
「トルメキアから撮ります!風の谷サイドからじゃなくてトルメキアサイドから撮るんです!」って(笑)。
 
西野:なるほど。徹底してますね。
 
木野内:うん、まあ、スターウォーズだよね(笑)。
 

ー彼らはなぜ立候補したのか/5つの選択肢ー

 
玄:あとすごく聞きたかったのが、彼らはなんで立候補したんですかね?木野内さんが思う答えってありますか。
 
木野内:それはねー、藤岡君が見つけたのよ。5つの選択肢しかないの。
 
玄:はいはい。
 
木野内:一番始めに出てくるんだけど、5つの選択肢。
それに辿り着くまでにすごい時間かかったんだけど(笑)。
 
玄:あー。
 
木野内:あれしかないんだよね。政治参加における選択肢は、
「家の中でグチる。」、「家の外でガナる。」、「投票へ行く。」、「立候補する。」、「革命を起こす。」っていうその5つしかないの。
 
玄:なるほど。
 
木野内:で、彼らは「立候補する」って選択をした訳なんだけど、なぜ選択したかという事に関して言うと、現状の政治に不満があるからっていう。
 
玄:うーん。それはやっぱり共通している?
 
木野内:じゃないかなー。他の言葉に置き換えられるかもしれないけど、それしかないかなぁ。
で、家でグチるのもみっともないし、外でガナるのも意味がないし、選挙に行くっていうだけでも効力がないし、だったら革命か立候補するかっていう。
 
玄:なるほど。タイトルはその段階で?
 
木野内:「立候補」ってタイトルは撮り終えて、1月か2月くらいで編集を見て選んだんですよ。なんか100案くらいあったんだけどその中で、一番シンプルっていうか一番ダイレクトなのが「立候補」だったの。俺だったらもうちょっと情緒的なタイトルになっちゃいそう。
 
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ー映画『立候補』の反応/今後の展望ー

 
玄:そういえばマックさんが選挙演説をしている時に通りがかった外国人の人が「こんなのあり得ないよ」みたいなこと言ったりするじゃないですか。
あそこも結構印象に残っているんです。
 
木野内:ああ、そうね。
 
玄:なんかその、今回のそのパフォーマンス騒動を追っかけてみて、日本の政治とか民主主義っていうのが、どういうレベルなんだろうていうことを考えたりしたんですか?
 
木野内:結構ね。外国の投票率とか調べたりして、意外と日本は政治の意識が高いなっていうのは思ったよ。で、その反応ていう意味では、ブログの感想とか見てみると、結構理解してくれた人が多かったと思った。単なるコンテンツとして見るんだったら非難の対象にもなる作品だと思うんだけど、なんかこう結構ポジティブな意見が多かったような気がした。けど、それは、逆説的に言うと、やっぱ届いていない証拠でもあるんだよね。だってどんなマスターピースって言われるような作品でもダメだって言う人はダメだって言うしさ。けど、それは届いているからだと思うのね。『ゴットファーザー』とか『2001年宇宙への旅』がダメだとか言ってる人もいるじゃない。「もう、シェイクスピアか!」っていうくらい良く出来ているのに(笑)!
 
玄:そうですよね(笑)。
 
西野:ちなみにマックさんも今回の映画でツイッターのフォロワーとかも増えていると思いますし、実際映画も自主上映から始まって、次々とちゃんとした劇場で公開するまでに発展していったわけじゃないですか。それって、この映画を受け入れている層が存在しているってことだと思うんですけど、そういう人達が映画『立候補』をどういうかたちで受け止めているのか制作側からの予想とかありますか?
 
木野内:「負けるとわかっていてなぜ戦う」っていうコピーにそもそも引っかかる人とか、その、泡沫候補っていうジャンルの人に引っかかる人達って何かしら社会からちょっと迫害っていうか、阻害を受けている人達なんじゃないかなと思う。
 
西野:僕は阻害を受けてたのかな…。(一同:笑)
 
玄:マックさんのツイッターのフォロワーが40万とか凄いですけど、やっぱり面白がっているだけなんですかね?
そういう人達が『立候補』を見に来たりするんですか?
 
木野内:あまりいないと思う。よっぽど好きな人は来たかもしれないけど、やっぱり観にきてくれたのは結構コアな「映画ファン」なんじゃないかなって。うん、まあ次の課題なんじゃないかなぁ。
 
西野:今回の作品で藤岡監督も木野内プロデューサーも『立候補』を作った人というイメージが付いてしまったと思いますけど、始めは劇映画を撮られていたわけじゃないですか。今後は政治的なモチーフを扱っていくという考えはあるんですか?それとも別にそれは気にしないとか。
 
木野内:ああ、好きだからね。そこにやっぱロマンスを感じる。(一同:笑)
だからその時点で、なんか見る人限定しちゃうんだろうなって気持ちもある。
 
玄:でも、それすごいいい話ですね。本当は凄くしんどくて「またこういうのやってくださいよ」って言われても、「もうやりたくない」ってわけではないって事ですもんね。
 
木野内:そうそう。
 
玄:このテーマだけでも何かやれると。
 
木野内:好きだから(笑)。
 
西野:好きだからってコメントはもらえるとは思わなかったんで(笑)。
 
木野内:あぁ。なんかもう限りなく趣味に近いよね。だからなかなか食えないんだろうなっていう(笑)。
 
kinouchi
 
 
<編集後記>
インタビューを終えて感じた事はやはり映画『立候補』は選挙や政治に対して批判するための映画ではないということだ。もちろんメインとなっているマック赤坂氏の映画でもないし、泡沫候補者を馬鹿にする映画でもない。そこにあるのは「負けるとわかっていてもあきらめずに戦う人間」の姿とそれに自分達を重ね合わせた監督とそれを支えるプロデューサー自身だったのかもしれない。戦い方は人それぞれだし、誰もそれにとやかく言える立場もない。映画のキャッチコピーを引用させてもらえば「あなたはまだ、負けてすらいない」のだ。今後、木野内プロデューサーと藤岡監督がどのような作品を生み出してくれるのか。それは全く予想ができないが、個人的には最高のエンタテイメントしてるドキュメントを期待しております!
 

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