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演劇・ダンス

文句なしに面白い! 知事、かもめ短編演劇祭の魅力を熱く語る

文句なしに面白い! 知事、かもめ短編演劇祭の魅力を熱く語る

2016年に始まった「神奈川かもめ演劇祭(以下「かもさい」)は、20分以内の短編演劇を上演する演劇祭です。全国から選ばれたバラエティに富んだ複数の作品が一堂に会し、同じ期間に、同じ会場で見ることができます。
文化芸術好きとして知られる神奈川県知事の黒岩祐治さんと、かもさい実行委員会委員長の丸尾聡さんに、次回開催に向けた思いを伺いました。

—1月に開催された第3回「かもさい」では、全出場団体の作品を観劇されたそうですね。

黒岩 はい。知事が全部観るなんて、普通はまずないことですよね(笑)。でも、日頃知ることのない方々の作品が一堂に会するのは滅多にない機会です。しかも上演時間は1本20分。20分間で物語が完結するわけですから、一瞬たりとも目が離せない緊張感があります。それぞれに個性があって、これは文句なしに面白かったです。

丸尾 演劇は「ちょっと敷居が高い」と思われがちで、わざわざ出かけて行って2時間以上の作品を観るというのは、結講負担です。その点、短い時間で楽しめる作品を集めた「かもさい」は、演劇への入り口になり得るんです。ジャンルもスタイルも様々で、「これは自分にはわからなかったけど、こっちの作品は面白かった」、そんなスタンスでご覧いただけるのではないでしょうか。
今の日本の演劇は長編がメインですが、歴史的にみると、短編演劇が人気を博していたこともあります。かつて帝国劇場には、様々な短編演劇を上演する「みどり」と呼ばれる公演形態がありました。「よりどりみどり」の「みどり」ですね。東京にやってくる観光客に好評だったようです。「かもさい」も、「神奈川に行けば面白い短編演劇が見られる」と全国に響く可能性があると思っています。そのためにもレベルの高い作品を発信していきたいですね。

—神奈川の魅力づくりとしても、重要な役割を担っているのですね。

黒岩 神奈川県では、文化芸術の魅力で人を引きつけ、地域のにぎわいをつくり出す「マグカル(マグネット・カルチャー)」に取り組んでいます。そして「かもさい」には、才能を発見する楽しさがあります。短編作品なら簡単に作れると考えるかもしれませんが、実際には相当な力量が求められます。脚本を書く人の力、演出の力、演じる人の力。全国から集まる人々の中から新しい才能を見つけるのは、私たちにとって大きな楽しみです。そして若い人たちには「神奈川へ行けば、自分の才能を発揮できるチャンスがある」と思ってもらえる。そんな循環を作っていけたら素晴らしいですね。

丸尾 先日、短編演劇の審査員を務めるために、沖縄へ行ってきました。これは「かもさい」に参加した沖縄チームの代表が「かもさいに沖縄から素晴らしい作品を」ということではじめたものです。「神奈川には新たな出会いのチャンスがある、ぜひ上演したい」という神奈川への期待を強く感じました。

—運営面でも工夫があるのでしょうか。

丸尾 もともと演劇は多種多様なものなので、作品に点数をつけて評価するべきではないという考え方もあります。けれど、そこから生まれる切磋琢磨が、普段の活動では接点のないお客様や審査員、劇場、ほかの作品との出会いが、交わされる感想や意見が、作り手の、そして観る側のレベルアップにつながります。僕らも「選抜する」なんて上から目線ではなく「様々な地域から多種多様な作品に来ていただく」という視点を大切にしていこうと思います。

黒岩 今回は韓国のチームが参加してくれましたが、国際化は当初から意識しています。言葉の壁はありますが、字幕を出すなど工夫次第で面白い芝居はできます。そもそも、演劇にはセリフがなくてはいけない、というルールはありません。神奈川がアート面で海外からも注目されるようになることが、「マグカル」の目指すところです。

—来年のラグビーW杯、2020年の東京オリンピックパラリンピックに向けた取り組みはいかがでしょう。

黒岩 スポーツの祭典を観るために、世界中から沢山の人が日本を訪れます。中には、空いた時間にエンターテイメントも楽しみたいと思う方もいるでしょう。そうした方に「マグカル」を楽しんでいただきたいと思っています。

—4回目の「かもさい」では、新しい取り組みがありそうですか。

丸尾 今年は「神奈川かもめ短編戯曲賞」を設立する予定です。20分の短編戯曲の賞は、日本で初めてになります。そして、受賞作品が「かもさい」などで上演される流れがあれば、書く方も意欲的になるし、コンテンツの質の向上にもつながるでしょう。将来的には、年に1度のお祭りにとどまらず、常設劇場でいつでも短編演劇が見られる、そんな環境があったらいいな、と思っています。

黒岩 今後はさらに裾野を広げることを考えていきたいですね。たとえば、各地で盛んに上演されている市民ミュージカル。作り手はプロではありませんが、「やるぞ!」となったときのパワーは計り知れないものがあります。私自身、中学で演劇部を創設し、早大ではミュージカル研究会に所属していたので、エンターテイメントが持つパワーや広がりには大きな期待を寄せています。「かもさい」のような文化芸術イベントを手掛かりに、今後もマグカルを推進していく所存です。


第2回最優秀作品賞「しらずのうちに」
作・演出 大島寛史/出演 チリアクターズ


第3回最優秀作品賞「机上の空論」
作 武重守彦(めがね堂)/演出 松本一歩(平泳ぎ本店)/出演 平泳ぎ本店

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