コンテンツにスキップ
音楽

ジャズ散歩 長者町の老舗ジャズバー「FIRST」

ジャズ散歩 長者町の老舗ジャズバー「FIRST」

横浜という街は、日本のジャズを語るうえで欠かせない存在である。「旭ジャズまつり」や「YOKOHAMA本牧ジャズ祭」など数多くのジャズフェスティバルが開催され、野毛~伊勢佐木町~関内エリアにはジャズを楽しむことのできるスポットが集中する。
本連載では、ジャズ喫茶やライブハウスに足を運んだことのない方でも気軽にジャズを楽しめるように、県内にあるジャズスポットを取り上げて紹介していく。

過去の連載 ジャズ散歩 「ジャズ喫茶ちぐさ」から「Jazz Museum Chigusa」へ

連載第2回で紹介するのは、長者町で横浜のジャズを50年以上支え続けているジャズバー「FIRST(ファースト)」だ。京急・日ノ出町駅から徒歩3分。長者橋を渡って大岡川を越えると、駅前とは一味変わった空気が漂ってくる。路地に入ると、暗くなり始めた町に白く光る「JAZZ BAR – FIRST」の看板が浮かび上がった。レトロなミントグリーンのドアの横には、洋酒のボトルやライブ情報を載せたポスターが並ぶ。

1968年7月21日に創業した「FIRST」は、今年で創業55年の節目を迎える。今のように、スマホ一つで気軽に好きな音楽を聞くことが出来なかった時代。ジャズのレコードを海外から集めていた「FIRST」は「ジャズが聴ける店」として、学生を初め多くの人々の憩いの場となった。50年以上経った今でも、常連さんに愛され続けている店だ。

ドアを開けると、店内に響き渡るジャズの音色が心地よく体に振動する。入口と同じ黄緑調の店内は、ブルーのライトで照らされたシックなカウンター席と、木彫のテーブルと椅子が備え付けられたテーブル席に分かれていた。入口のすぐ横にはピアノやドラムなどの楽器が置かれている。筆者が訪問した日は生演奏のライブがなかったため、楽器にとっては休息日のようだ。

正直に言うと、ドアを開ける際は少し緊張していた。ジャズを聴くのは好きだが、ジャズバーを訪れた経験は殆どなかったため、「横浜の老舗ジャズバー」に対しては敷居の高さを感じてしまっていたのだ。しかしそんな緊張は店に入るや否やゆるやかに溶けていった。店内は前述した通り、シックで落ち着いた雰囲気であるが、同時にアットホームな温かさも感じられたのだ。その温かさを醸し出しているのが、「FIRST」のオーナー夫妻であった。当日、荷物の多かった筆者がゆっくりと座れるようにと、ママさんが大きめのテーブルに案内してくれ、店主の山崎昭さんはカウンターのお客さんとの会話を楽しみながら迎え入れてくれた。

来店時に流れていたのはラテンやモダンジャズから、誰もが知っているようなスタンダードナンバー。色とりどりの音色のジャズを楽しめる。それもそのはず、カウンターの奥には数多くのレコードがずらりと並べられていて、まさにこの店の歴史を物語っていた。

更に嬉しいのは当店のメニューの豊富さだ。ドリンクの種類は勿論のこと、フードのメニューも通常のバーよりも充実しており、ママさんの作る料理は味・ボリューム共に、多くの人々に愛されている。

前述した通り、「FIRST」では定期的に生演奏のライブやジャズセッションが開催されている。若手のプレイヤーから、名の知れた演奏家まで、様々なミュージシャンの演奏を聴くことができる。ライブ情報はホームページからも確認できるため、生演奏が聴きたい方はライブ情報をチェックしてから訪れることをお勧めする。

老舗さながらの落ち着きと、ゆるりとリラックスできる温かさ。お店の歴史と、オーナー夫妻の作る優しい雰囲気を感じながら、思い思いにジャズを楽しめる。肩肘張らず、ゆったりとジャズに向き合える「FIRST」へ是非訪れてみてほしい。

マガジン