能・狂言紹介施設「OTABISHO 横浜能楽堂」
2024年1月から長期休館して大規模修繕工事中の横浜能楽堂が、みなとみらい・ランドマークプラザに休館中の活動拠点「OTABISHO 横浜能楽堂」をオープンしました。商業施設内に能・狂言スポットが出店されるのは全国初、新たな試みが注目を集めています。
見る、知る、体験する、学ぶがコンセプト
御旅所(おたびしょ)とは、神社の祭礼で神が巡業の途中に休む場所のこと。
「OTABISHO 横浜能楽堂」のネーミングには、能・狂言になじみのなかった人も気軽に立ち寄り、古典芸能に触れる場所になればという思いが込められています。
OTABISHOというアルファベット表記も、国際的な横浜の街にぴったり。2024年4月18日のオープン以来、国内はもちろん海外からの訪問も多く、能・狂言ファンの裾野が広がっています。
【入口】
「能・狂言相関図」は、能・狂言に親しんでもらいたいとスタッフが制作したもの。起こりから現代までの歴史を分かりやすく、日本語と英語で記しています。ノリがいい、三拍子揃う、番組など、能から生まれた言葉の紹介もユニークです。
【展示スペース】
ギャラリーの中央部分には、能・狂言の面と能装束の実物が。3つ並んだ面はおよそ1か月で、鮮やかな能装束は2か月おきに変わります。
取材時の面の展示(中央)は、若い女性を表す「小面(こおもて)」。ふっくらとした肌とつやのある黒髪が特徴の代表的な能面です。
他ではなかなか拝めない、面の内側も鑑賞できるのには驚きました。クリアパネル越しに目元の穴から覗けば、演者の視界を疑似体験できます。
能装束は、種類と組み合わせでさまざまな役とその人物の内面まで表現する能専用の舞台衣装です。写真は、主に女役の上着に使われる華やかな唐織の一枚。
江戸期の能装束の厳密復元で世界的にも知られる「佐藤芳彦記念 山口能装束研究所」が、文様・技法はもちろん、絹糸などの素材にまでこだわった一品。繊細な織りを拝見すると、能装束をきっかけに能・狂言に興味を持つ人がいるのもうなずけます。
【小上がりスペース】
ギャラリーの奥は、能舞台を思わせる板張りの小上がり。能「道成寺」の舞台を模したフォトスポットになっていました。能に欠かせない扇(おうぎ)と音楽を支える4つの楽器の展示もあり、太鼓・大鼓・小鼓・笛それぞれの音色とそれらを合わせた音楽「囃子(はやし)」を視聴できる二次元コードサービスが興味深かったです。
個人的には、小鼓の装飾が精巧で華もあって気に入りました。貴重な展示を見ていたら、能・狂言の舞台で本物の音色やお囃子を聴いてみたくなりました。
横浜能楽堂を飛び出して
工夫を凝らした展示に加えて、さまざまな公演・講座を催すのも「OTABISHO 横浜能楽堂」の役割です。厳かなたたずまいの横浜能楽堂とはひと味違った、多彩なイベントや講座などを計画しています。
今年の夏休みは、杉田劇場で狂言の公演鑑賞と実技指導をセットにした「こども狂言ワークショップ」を開催します。公演は解説つきで、実技指導は正座・ごあいさつ・礼節などのお作法から狂言の基礎まで。ワークショップの対象は、小学1年生から中学3年生です。
【こども狂言ワークショップ(2024年)】 会場:横浜市磯子区民文化センター 杉田劇場
<公演鑑賞>8/17(土)14:00-15:30 普及公演「こども狂言堂」
詳細:こちら
<実技指導>8/17(土)公演鑑賞+8/19(月)、20(火)、21(水) 各日13:00-15:00(予定)
こども狂言ワークショップ ~入門編~
詳細:こちら
能と狂言をこれからも横浜で
横浜能楽堂が新しく生まれ変わるのは、2026年6月の予定です。お披露目となる2年後を待ちながら、「OTABISHO 横浜能楽堂」で能・狂言を身近に感じるきっかけを探してみてはいかがですか。
文/志村麻衣(編集ライター)
OTABISHO 横浜能楽堂
住所:横浜市西区みなとみらい二丁目2番1号 ランドマークプラザ5階
営業時間:11:00-20:00(年中無休) ※入場無料・予約不要
電話番号:045-263-3055(横浜能楽堂)
運営:横浜能楽堂 公益財団法人横浜市芸術文化振興財団
公式HP:こちら (横浜能楽堂)