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柴田聡子 インタビュー

柴田聡子 インタビュー

interview & photo : Masanobu Nishino
Text by Akiko Inoue
 

横浜の印象について

 
— 柴田さんは、現在黄金町に住んでいらっしゃいますが、率直に黄金町や横浜の印象はいかがですか?
柴田:めっちゃすきです。わたしは北海道なんですが、東京の学校に行ったり高知に移り住んだりしたうえで、横浜は一番すきな街です。ちょっと地方都市っぽくて、いかがわしいところが近くにあって、いい感じだなあと。
 
— 大学卒業後に半年間高知で活動されたあと、こちらに戻ってこられたわけですが、東京ではなくて横浜を選んだのはどうしてですか?
柴田:もともと、あまり都内にすむ気はなかったですね。横浜いいなあと思って。あと家賃がすごく安いところをみつけちゃって、
そのおかげでいまやれているようなものです。
 

1stアルバム『しばたさとこ島』から現在製作中の2ndアルバムについて  

『ふわふわしていたんだと思います。つくろう!みたいな強い心はほんとなくて・・・』
 
— インディーズレーベルからリリースして、異例の枚数を売り上げた1stアルバム『しばたさとこ島』ですが、個人的なイメージとしては、自分の経験や周りの人のことを歌っているけど、引きこもっているという感じではなく、ふわふわあちこち動いているような印象をうけました。CDジャケットにも離島みたいな写真が使用されていましたが、それも寂しいイメージとかではなく、自由に漂っているようなイメージなのかなと思って聴いていました。
実際あのアルバムはどういうイメージで仕上げたんですか?

柴田:実はあのアルバムでは、わたし弾き語りしかやってないんです。あのアルバムを作るきっかけになったのは、仕事で高知に行くってなったときに記念に作ろうみたいな感じになって、三沢洋紀さん、DJぷりぷりさんをはじめ、いろいろな方が一緒にやってくれたんですけど、私は3日で10曲の弾き語りを録って高知へ行ってしまい、そこから先はおまかせで時間をかけてアレンジをしていただきました。
 
— 出来上がってみたら、いろんな音が重なっていたわけですね。
柴田:そうなんです。
 
–はじめは高知に旅立つ記念だったんですね。
柴田:記念というか、流れがあって実現して、私自身はふわふわしていたんだと思います。みなさんについていった感じです。
 
— 現在アルバムレコーディング中とのことですが、1stの「しばたさとこ島」では周りの人の力に引っ張られた部分が強かったとお聞きしましたが、2ndとなる今回はどうですか。
柴田:今回はまずは自分で演奏、録音、ミックスをしようと思っています。
 
— 柴田さんの1stアルバムには大学の友人も参加されていますよね。大学には、音楽好きが多かったんですか? MEDIA PRACTICEの公式サイトにもそれが現れていたように思います。
柴田:そうです。あれ、よく産まれたなあ、と思います。
 
柴田使用
 

□MEDIA PRACTICEについて

『ちょうどいい人たちがいてできるんだな、と思ってます。』
 
— 柴田さんが参加した東京芸術大学の修了展「MEDIA PRACTICE 2011-2012」の公式サイトが大学の修了展のサイトとしては異例の、文化庁メディア芸術祭で審査員特別賞受賞という快挙を成し遂げましたが、サイトを作るときにテーマ曲をつくるという発想はどこからでてきたんですか?
柴田:なんだっけな、あれは確か広報班で話しあってて、多分煮詰まってたと思うんですけど、みんな、「どうするー?みたいになった時に、たまたま音楽を好きな人が多くて、「じゃあテーマソングつくろうよみたいな感じで、半ば好きなほうに流れるように決まっていったというか…(笑)
 
— その場の苦しい状況を打破するように、音楽という共通の友達がいた、みたいな(笑)
柴田:ただセッションとかが好きで、したかっただけかなとも思いますけど、なんていうか、広報の方法に行き詰まってたんだと思います。今までやってた感じじゃうまくいかないだろうと感じるなかで、じゃあ歌はどうかって話になって、一応テーマソング作ろうっていうので集まって、夜中にセッションずっとやってる日をつくったんです。偶然、卑猥な掛け合いの歌を作ろうって言って、あの曲の断片がでてきて、なんかいいんじゃない?みたいな…。で、曲ができて、いつしかああいうホームページになったと思います。
 
–ある意味窮地の状況だったからこそ生まれたわけですね。
柴田:そうですね、でも、わたしはそのプロセスをあんま覚えてないです。
 
— でもはじめから曲をつくろうっていうよりは、苦しい状況を楽しくしようとする方法を探してたらいいのができあがったという感じみたいですね。
柴田:そうですね、そんな感じだったような気がします。
 
— 展示内容よりも歌を前面に出すという…笑
柴田:(笑) 結局うまくいってよかったと思います。いい曲ができたなあと、みんな思っていたんではないかな…。「ほんと、これいいよねえ」みたいな…。
 
— でも結果的に賞をいただけたんですよね!
柴田:すごいですよねー、あんなに反響あるのも意外というか…。みんなビデオとか録音とかいちいちがんばったんですけど、でも、別に賞とかは考えてなくて、公開したときに主にTwitterですごい反響があったんです。あれはすごいですよね、有名な人とかがつぶやくと一発なんだなと思ってびっくりしちゃった。
 
— 「いい」とかじゃなくて「なんだこれー!」っていうツィートが多かったようですね。
柴田:web作ってた人から、「アクセスすごいんですけど!」みたいなメールがきて。なんかうれしかったのを覚えています。あと、みんな曲を最後まで聴くから、滞在時間がすごい長かったらしいです。(しみじみと)いい日々だったなあ…。
 
— MEDIA PRACTICEのホームページも、なんでできたかって言うと、ちょうどいい人がいたからとしかいえないですよね。
柴田:ほんっとーにそうだと思います。でも、なんかそんなんなんだろうなと思って。ちょうどいい人たちがいてできるんだなと思ってます。
 

□ライブについて

『ほんとうに恵まれていて、人生よかったと思えてうれしいです。』
 
— 影響を受けたミュージシャンっているんですか
柴田:そういうのほんと思い浮かばなっくって…。ユーミンとか松田聖子とか… 全然マニアックじゃないんですよね…。
 
— 今までも、名だたる方々とお仕事をされていて、今回も山本精一さんとのライブが6月2日(日)に日ノ出町のシャノアールでありますよね。山本さんとは何がきっかけで一緒にライブすることになったんですか?
柴田:Ya-to-iっていうユニットのアルバムに参加して、山本さんとお会いしたときに、お願いしました。
あ!でも、さっきの質問の答えは山本さんかもです。高校のときからずっと好きで。
 
— やっぱりそうだったんですね。
柴田:大好きです。私が山本さんを初めて聴いたのは、『なぞなぞ』っていう弾き語りのアルバムだったんですけど、それが衝撃的で。それは友達に貸してもらって、今でも、ことあるごとに『なぞなぞ』聴いてます。大好きです。
 
— そんなに好きな人と共演できるなんて、今度のライブは本当に幸せなライブですね。
柴田:夢のようです。毎日、そうなんですが、ほんとうに恵まれていて、人生よかったと思えてうれしいです。
 
— そんな山本さんとの共演ライブですが、お二人で一緒に歌うこともあるんですか?
柴田:まだ、なんとなく未定というかんじです。
 
— 先ほど話が途中になってしまいましたが、ya-to-iで絡むことになったきっかけはなんだったんですか?
柴田:1stの時から広報を手伝ってくれている人がいて、その人がムーンライダーズと関わりが深くて、ya-to-i再活動ってなったときに、その人経由で声かけてもらいました。嬉しかったです。
 
柴田使用_1
 

□パフォーマンス作品について

『言葉があるということは貴重だなと思います。』
 
— 話は変わりますが、学生の時は、パフォーマンスもよくされてたと思うんですが、最近はどうですか?
柴田:最近は、なんというか、あのかたちに近いものは、してないです。
 
— 何度か拝見させてもらってるのですが、パフォーマンスの方は演劇的な要素が強いというか、普段の歌ってる柴田さんの印象しかない人には、「あ、柴田さんこんなこともやってるんだ」っていう驚きがある内容だと思うんですね。曲をつくっている柴田さんと、パフォーマンスをしている柴田さん、二つの柴田さんの違いってありますか?
 
柴田:答えになっているかはわからないんですが、修了制作の時のパフォーマンスはわざとらしいというか…。わざとやらないと私は、ああいうことできないんだと思って、ちょっとそれが、最近気持ち悪くなってきちゃったところがあって、パフォーマンスからは遠ざかってます。いや、むしろ私は自分を表現することはどうでもいいんですと思いたくて…。まだ自分に固執しているとは思うのですが、ゆくゆくそうなりたい。今もそうなんですけど、人間とか動物の不思議なとこはいいなって思うのはありますよね。生き物って不思議…とか。普通に不思議なことがおこるなーっていう。テレパシーみたいなのがあるなあ…とか。
 
— その興味のある部分をさぐるのに、音楽とパフォーマンスの両方をやってたけど、パフォーマンスの方は違和感がでてきたって感じですか?
柴田:いや、ていうよりかは、割と学校っていうとこが自由度が高くて、何やっても観てもらえるし、成立するところがあったんですけど、外に出るとやっぱちょっと違うなみたいな。歌を歌うことはできても、ああいうパフォーマンスっていうのは、外にでるとなんかあざとかったり、無理があったり、嘘っぽかったりするとだめだなーって感じで今はできてないんです。
 
— ギャラリーとかだと、「そういうことをする場所」っていう何か成立している部分があるけど、大学は「展示空間」っていうより「教室」っていうイメージがあるから、そういう空間がちょうどよかったってのもあるのかな。
柴田:いや、多分それは甘えてただけだと思います。だからあれぐらいのクオリティでもやれたんだろうって感じです。
 
— もし場所があればまたパフォーマンスもやりたいとは思っていますか?
柴田:自然にやれるうまいことが思いつけばいいなあって感じです…自然自然って言っても最初からそういうのはないと思うし、どうやってそれをやればいいのかわかんないんですけど、興味みたいのは間違ってないとは思ってるんで、方向だけ探り探りやろうと思ってます。ああいうところで、一番おもしろくやるっていうのはどういうことなんだろうって、今は探っているところです。
 
— 曲で音がつけられて、歌詞がつけられて、それでも表現しきれない部分ていうのを、パフォーマンスの方で発散してるのかな、と思ったんです。
柴田:もっとシンプルな方法はあると思うんです。言葉があるというのは貴重だなと思います。結局は言葉かなとも、最近思ったりもします。そんなことないとも思うんですが。いったりきたりです。どっちにしろ。しっくりいくものを、だしていくことしかできないなあ、と思っています。
 

パフォーマンスの様子:「図解・ひびきあう、犬と子どもの第六感」/2012
 
— 個人的には柴田さんのパフォーマンスすごく好きなんですけどね。
柴田:ほんとですか?わたしほんと歌う以外の自分が結構耐えられないんです。こういう状態とかも。この間、あるところに提出した文章があって、それが“離人症”みたいだねって言われて調べたんですけど、なんか、その症状が結構自分と似通ってると思って怖くなりました。自分をもう一人の自分がみているという変な客観性があって、私は常に3人ぐらいがお互いを見張っている感じがしてます。でも、歌ってるときはあまり無理がない感じで楽なんですけど、しゃべったりしてるときは一番だめですよね。
 
— 詞を書いてるときはどうですか?
柴田:私は、普段からポエムとしての詩っていうのはあんまかかないんですが、日記は書きます。日記書いてるときと、歌うたってるときの自分ぐらいですかね、自分が許せる自分…。
 
— そうとう疲れるんじゃないですか?
柴田:疲れます。だから遣り切れない夜があります…。あ、でもそんなこといっても気楽に生きてますけど(笑)
 
— 曲を作るときは詞が先ですか?メロディが先ですか?
柴田:曲が先のときもあれば詞が先のこともあって、同時の時ももちろんあります。ほんとにそれはまちまちなんですが、人の曲に詞をつけるっていうのはむずかしいです。
 
— 自分から出てきた音じゃないですしね。
柴田:どうやって言葉をだせばいいのか全然わからなくて、単純に意味のある言葉がのっけられないんです。Ya-to-iっていうユニットの、再活動にあたって、新曲の作詞をさせてもらったことがあるんですが、それは、ほとんど意味を持たない詞で、響きだけで作りました。最終的には、自分なりの意味のかけらみたいのは、浮かんだと思うんですが…。岡田徹さん(注:ya-to-iのメンバーでムーンライダーズのキーボーディストでもある)に、詞が全然かけませんって言ったときに、「多分メロディが内包している言葉があるからがんばってー」って言われたのを覚えてます。結局、仮歌をいれる10分前くらいまでかいてました。どれがいいっていうのが、わからなくて。
 

□今はまっていることについて

— 今一番はまってることって何ですか?
柴田:私無趣味なんですよね、でも録音かなあ…。
 
— いろんな機材を試したりしてるんですか?
柴田:そうですね、いろんなの試してます。コレクションするほどはないんですけど、でも今はお金の使いどきだと思って。お金を使うとハイになってかなり楽しいです(笑)
 
— すごい告白を聴いているような気分になってきました(笑)
柴田:いや、でもそんなたいした額使ってないんですけど、すっからかんに近いぐらい使ってるなーって。
 

— 今まで買った中でも、お気に入りのものって何ですか?

柴田:AKGのマイク買ったのが一番楽しかった。マイクはそれしか持ってないんですけど、それが自分の音の基準になったんで、他を試すときが楽しいです。今までこの音がいいとかほんとになかったんですけど、そういうのがでてきました。あ、最近ギター貸してもらったりして、それが手作りでめっちゃかわいいんですよ。
 
— 最近はいろいろ音を試してるんですね。
柴田:物心つきましたって感じです。
 

□神奈川のオススメスポットについて

 
— では、これで最後の質問になりますが、神奈川県の柴田さんのおすすめスポットを教えてください。
柴田:24時間やってる中華屋で、横浜にある「中華一番」ていう店があるんですけど、だいたい横浜で飲んだくれるときは必ず漂流してそこへ辿りつくんです。毒されたって感じもあるんですけど、なんか好きです(笑)とにかく安すぎるんですよ、みんなで飲みにいっても一人800円とかで!なんかもう、行くとこなくなったらそこが一番です。もう、あまりにも行き過ぎてて中毒みたいになってます(笑)
 
— 是非、「中華一番」の柴田さんおすすめメニューを教えてください。
柴田:パイコーチャーハン!!一番にいったらパイコーチャーハンは絶対食べろっていわれて食べたんです。あとカツカレーもおすすめです。
 
–今度いってみます!今日はありがとうございました!
 
柴田使用_5
 

日時:6月2日(日) 開演19:00(開場18:30)
場所:日ノ出町シャノアール(横浜市中区日ノ出町1丁目76−1)
料金:前売り2000円/当日2500円(ともに別途1ドリンクオーダー)
出演:柴田聡子、山本精一
予約:電話045-242-9784 (18:00-24:00 ※日曜定休)
〈このイベントは終了しました。〉
 
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実は柴田さんは不定期ではあるが「BAR聡子」としてお店で働くこともあります。
直接あってみたい方はホームページで日程を調べてその日を狙って行ってみるのもいいかもしれません。
 
(編集後記)
 
この日のインタビューは午前中だったため、柴田さんと別れたあと、さっそく「中華一番」へ取材に行ってきました。創業52年というだけあってさすがの風格がただよう外観とは裏腹に、看板には「食べたい時がうまい時 24時間営業」と親しみたっぷりの文字が。いざ店内に入ると13時を回っているのにも関わらず満席で、ほんのり香る昭和の香りにタイムスリップしたような感覚を味わいました。柴田さんおすすめパイコーメンとカツカレーはさすがのボリューム。実はこれ、単品なんです。セットはさらに半ラーメンと温泉卵がついて+100円。信じられない価格設定ですよね。味もかなり中毒性があり、通ってしまう理由もうなずけます。創業当時からかわらぬ味を守り続けている「中華一番」でした。
 
パイコーチャーハン のコピー
 
カツカレー のコピー
 
■ 中華一番 本店(神奈川県横浜市中区曙町3丁目43)
電話:045-261-0968
アクセス:市営地下鉄「阪東橋駅」から徒歩5分/阪東橋駅から260m

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