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手と体で作り上げる、懐かしくも新鮮な感動を届ける「手影絵」の世界

手と体で作り上げる、懐かしくも新鮮な感動を届ける「手影絵」の世界

芝居が生まれる現場
File.4 かかし座『Hand Shadows ANIMARE(ハンド・シャドウズ・アニマーレ) 』
今井浩一(編集ライター)

1952年、日本初の影絵劇団として旗揚げして以来、国内外の名作童話を中心に上演し、“影絵劇”というジャンルを牽引しているかかし座。皆さんも、舞台やテレビなど、どこかで接したことがあるのではないでしょうか。
そんなかかし座にアーティスティックな側面があるのはご存知ですか?『Hand Shadows ANIMARE(ハンド・シャドウズ・アニマーレ) 』がそれです。「ANIMARE」とはラテン語で「生命を吹き込む、元気付ける」という意味。つまり『ハンド・シャドウズ・アニマーレ』は、手と体だけでさまざまな形をつくり出すオムニバス形式のパフォーマンスで、懐かしさの中に新鮮な驚きが感じられます。

かかし座の代表、後藤圭さんに『ハンド・シャドウズ・アニマーレ』について伺いました。

「きっかけは今から30年前くらいでしょうか。高名な演出家の方から『君たちは影絵劇団なのに、どうして手影絵をしないのか』と言われたことです。手影絵は非常に豊かな表現ができるのだから挑戦するべきだ、と。
その頃私たちは、紙を切ったり板物の人形を使った影絵がメイン。手影絵については“伝統的な遊び”と捉えており、モダンな舞台がつくれるとは考えてもいませんでした。でも、その方が言うのだから何か可能性があるかもしれない、やってみようと、少しずつ研究を始めたんです。その中で、あれもできる、これもできると、手影絵のレパートリーが増えていきました。ただ、手影絵の表現は非常に体力を使うので、それだけで1時間のステージを作り上げるのは難しいのではないか、という思いはありました」

一方でかかし座では、本格的な海外進出を考えていました。ただし、海外となると荷物の運搬に手間や料金がかかるため、最小限の装備で移動しなければなりません。それはかかし座に限らず、海外に挑戦するカンパニーが必ず直面する切実な問題です。
また、後藤さんには「せっかく海外に行くのなら、これまで日本で製作してきた作品ではなく、国際コミュニケーションを前提とした作品で挑戦しなければ意味がない」という思いがありました。そこで、成熟してきた手影絵により、せりふのない、音楽にのせてスピーディに、時にはダンサブルに展開する『ハンド・シャドウズ・アニマーレ』で世界に挑戦することを決意します。
ときに2009年、ドイツで開かれた第8回 シュヴェービッシュ・グミュント国際影絵劇フェスティバルでのことでした。

「それまでも、手影絵のシーンを作品の中に盛り込むことはあったのですが、全編を手影絵でやるのはこの時が初めてでした。何より大変だったのは、手影絵だけで1時間の作品ができるとは、それまでの常識からして、だれも思っていなかったことです。まずその意識を改革することに苦労しましたね。そしてドイツに出発する1週間前、ギリギリまで試行錯誤してやっと作品が完成しました。
最初にドイツのフェスティバルに参加したメンバーが異口同音に言うのですが、我々が手で影絵を作っただけで会場が沸いたんですよ。上演中もものすごい拍手をいただけるなど、素晴らしい体験でした。世界的にもこういったアンサンブルは例がなく、実際にやってみるまではどんな評価を得られるかわからなかったので、これはうれしかったですね。その場で、いろんな海外のフェスティバルから『次はうちに来てほしい』と依頼されるなど、ものすごい反響でした」

その後、オランダ、ドイツ、スペイン、フィンランド、チェコ、ブラジルなどの海外フェスティバルに参加。今では手影絵のレパートリーは100種類ほどになり、『ハンド・シャドウズ・アニマーレ』の中に取り入れられている作品は50〜60あるそうです。その中から、さまざまな組み合わせでステージが構成されます。

しかし、劇団メンバーの誰もがここに参加できるわけではありません。担当するのは、舞台部20人の中で、手影絵の抜きん出た技術、1時間のパフォーマンスに耐えうる体力、一定のかかし座の訓練を受けているなどの条件を満たした5、6人。もちろんかかし座本体の活動もあるので、『ハンド・シャドウズ・アニマーレ』の公演は貴重なものです。
そんな『ハンド・シャドウズ・アニマーレ』初演から10周年となる今年、3年ぶりに地元・横浜で公演が行われます。「TPAM」(国際舞台芸術ミーティング in 横浜)のプログラムとして、フリンジ公演されるのです。

「TPAMでは『ハンド・シャドウズ・アニマーレ』のスタンダードな形で上演をしようと思っています。地元の皆さんにたくさん来ていただき、お客様が喜んでくださる姿を海外のディレクターにも見ていただきたい」と後藤さん。
影絵に偏ったイメージを持っている人々にも、新鮮な驚きを与えてくれることでしょう。

*『ハンド・シャドウズ・アニマーレ』とはこんな舞台です!
https://www.youtube.com/watch?v=Dm2rWio8Td0

★こちらのイベントは終了いたしました。
《『Hand Shadows ANIMARE』》

■日程:2019年2月14日(木)
■開演時間:16:30/19:00
■会場:横浜人形の家 あかいくつ劇場
■構成・演出:後藤 圭
■音楽:クニ河内/石川洋光
■舞台美術:齋藤浩樹
■衣装:中矢恵子
■音響:都藤 守(Sound Method)
■照明・龍前舞台照明研究所
■影絵美術制作:劇団かかし座美術部
■影絵美術監修:後藤圭/小田純治(design Bee)
■チケット料金:全席指定2,500円/当日3,000円、小学生以下1,500円
※3歳未満無料。ただし座席が必要な場合は有料。
※この作品は主に小学生以上を対象にしております。
※TPAM参加登録者 2,000円
■問合せ:劇団かかし座 Tel045-592-8111

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