2月公演、こども歳時記 ~古来より継承される「ささら踊り」に触れる~
来る2月11日、神奈川県立青少年センター紅葉坂ホール・ホワイエにて公演される「かながわ伝統文化こども歳時記」。
私たちの身近な地域で大切に受け継がれてきた踊りや風習、美しい言葉、歌など、この素晴らしい伝統文化のある風景を未来に継承していく一歩として、まずはより多くの人にその魅力を伝え、楽しみながら触れてもらえるよう本公演が企画されました。
公演は、「未来につなげたい4つの風景」をテーマに、大きく2部構成となっていて、
第1部では、各地域に伝わる歌や踊りでふるさとに想いを寄せる伝統芸能を鑑賞できるほか、木版画摺りや、郷土玩具や紙芝居など、昔ながらの伝統文化を実際に体験することができます。第2部では「伝統芸能でめぐるかながわの名勝」と題し、神奈川県の誇る景勝地である江の島を舞台に、語り継がれてきた物語を、講談師によるナビゲートと共に伝統芸能の世界で活躍する名アーティストたちが能や琵琶、箏などにより壮大な昔話の世界に引き込んでくれます。
今回は、その中でも第1部で上演される古来より神奈川県に伝わる「ささら踊り」に焦点を当ててみました。さらに「ささら踊り」が持つ豊かな世界をコンテンポラリーダンスで表現した演目「SASARA」で振り付け・構成・演出を担う、振付家・演出家・ダンサーのスズキ拓朗さんにインタビューをさせて頂きました。とっても面白く興味深いお話が伺えましたよ。
その前に、ささら踊りについて、少し紹介しておきましょう。
今の神奈川県西部に伝えられているささら踊りは、江戸時代に流行し、盆踊りのルーツの1つともいわれているそう。
禁止令や関東大震災によって一度廃れたものの、踊りの記憶が残るうちに復活を遂げ、現在ではそれぞれ歌詞や踊りの異なる7つのささら踊りが厚木市や秦野市、足柄市などで継承されているそうです。(※諸説あり)
輪踊りがメインとなり、笛などはなく「びんささら」という竹でできた打楽器を使う、とてもシンプルで素朴な響きが特徴です。当時は出会いを期待して未婚の女の子が踊るものだったそうで、男女の出会いや色恋沙汰を描いた歌詞や、各地域の魅力や生活風景を踊り唄うなど、土地と人に根付いた素朴ながらとても奥深い伝統芸能です。
現在ではそれぞれの地域の保存会により、大切に受け継がれており、平成20年には「相模のささら踊り」として県の無形民俗文化財に指定されました。
そんなささら踊り、本公演の第1部の中で、愛甲ささら踊り盆唄保存会(厚木市)、長谷ささら踊り盆唄保存会(厚木市)、そして秦野ささら踊り保存会(秦野市)のみなさんによる「相模のささら踊り」、そして前述したダンサーで振付師スズキ拓朗氏率いるダンスカンパニーCHAiroiPLINによる「SASARA」の二本立てで鑑賞することができます。
セリフやオノマトペをふんだんに取り入れ、「ダンス×演劇」をコンセプトに世代を問わず、既成概念にとらわれない楽しいパフォーマンスが魅力のCHAiroiPLIN。
お待たせしました。
一体、彼らがこの伝統あるささら踊りをどのように魅せてくれるのか、スズキ拓朗さんにお話を伺いましょう。
■ささら踊りの背景を知って、感じたことを教えてください
まず、今回のお話しを頂くまで、ささら踊りという存在を知らなかったので、自分でも調べましたし、保存会の方に話を聞かせてもらいました。
その中で感動に近いというか驚いたのは、地域によって歌詞の内容や成り立ちが異なるということ。つまりその地域地域の生活や文化を唄や踊りに乗せることでしっかりと伝承できている証ですよね。そうやって自分たちの生活風景や想いを後世にちゃんと残そうとしている人がいるということが知れて、素直に嬉しかったです。
踊りの場では男女の出会いがあったとか、当時の人々の生活をまるで思い出話をするように話すのを聞いていると、代々の踊り手たちに染み付いた当時の記憶、匂い、思い出、雰囲気、そういった生きたエピソードがあってこそ現代までこの踊りが伝えられてきたんだなと感じました。
■SASARAの見どころ、そしてささら踊りの未来に向けて
今回構成する際、土台にどの地域のささら踊りの歌詞にも入っていた七夕を取り入れました。星、天の川といった宇宙という未知なる世界に、みんなで集まって願い事をする風習。
一見ありえないけれど、願いが叶うという言い伝えに込められた何かを信じて現代まで続いていますよね。そういった昔ながらの言い伝えや昔話、妖怪なんかの怖い話、そんなものをいかに「記憶」に残していくかが大事なんじゃないかなと思うんです。それには全てを生真面目にありのまま伝えるのではなくて、みんなの記憶や心に残るように、面白おかしくしたり少し工夫したりしないといけないんじゃないかと思います。
勿論、原型をありのまま残すことも大事だし、そうするべきだと思うけれど、今、そのまま次世代に伝えるにはハードルが高すぎるというか、素直に楽しめないんじゃないかなと。
だから今回、SARASAではCHAiroiPLINらしく、老若男女だれもが楽しめるようにと、各歌詞に出てくる花や虫を登場人物にしています。
人間を描く時、花や虫といった儚い者が登場する方が人間そのものより魅力的でドラマも存分に伝えられますからね。
とんぼ、菜の花、カボチャの花、キリギリスといった6人が、色鮮やかに七夕を祝うパーティーで踊るんです。それも着物ではなくハットや燕尾服、パーティードレスで。そこでの様々な出会いをよろこび、踊って心を通わせるわけです。
僕たちは言葉をダンスにするのが得意なので、原型を僕たちなりに解釈、咀嚼して振り付け、色付けをする。それを見てくれたほんの何パーセントかの子が興味を持って、原型まで知りたくなってくれたらそれで良い。僕たちは知るきっかけをつくる。
そうやってこれからも継承していくことに携わっていられるんじゃないかなと思います。だから世代を問わず、まずは家族みんなで観てほしいですね。
楽しい唄と踊りがみんなの心象に残って、そうだな、10年後くらいに子供たちが、あっこれってささら踊りだったんだ!みたいに言ってくれたら嬉しいですね(笑)
CHAiroiPLIN おどる童話「AZUKI」上演時の様子 神奈川県立青少年センター・スタジオHIKARIにて
■鑑賞を楽しみにしている皆さんに一言お願いします。
なんといっても、ささら踊りは盆踊りのルーツと言われ、出会いを求める踊りだった。
劇場に来たら新しい出会いがきっとあるはずです。
SASARAは古くからあるものを大事にしようとする人たちと、新しいものも大事にしたい僕たちとの出会い。それを観る人もまた、今までの自分にはなかった何かに出会えると思って劇場にきて欲しいです。新しい感覚かもしれないし、考え方かもしれない。
何かはわからないけど、帰る頃には少し違う自分になっていると思います。
是非、変わることを恐れずに、自分に挑戦する気持ちで来てほしいなと思います、待ってます!
令和3年度 かながわ伝統文化こども歳時記
[日時]2022年2月11日(金曜・祝日)
13時~17時30分
[会場]神奈川県立青少年センター紅葉坂ホール・ホワイエ
[入場料]無料(要事前申し込み)
※ワークショップの一部は有料
[お申込み方法]下記【A】・【B】いずれかの方法でお申し込みください。
【A】申込フォームからお申込み
【B】往復はがきよりお申込み
往復はがきに、
①行事名“こども歳時記”とお書きください
②申込代表者の、氏名(ふりがな)、郵便番号、住所、電話番号
③観覧希望のプログラム
『第1部』と『第2部』の両方・『第1部』のみ・『第2部』のみから選択
④参加人数(申込代表者を含む)※5名まで
を明記し、下記の住所まで送付してください。
お申込み先 〒220-0044 横浜市西区紅葉ケ丘9-1
県立青少年センターホール運営課<こども歳時記>係
[お申込み期間]2021年12月9日(木曜)~2022年1月31日(月曜)必着
[主催]神奈川県・かながわ伝統芸能実行委員会 神奈川県
[助成]一般財団法人地域創造・芸術文化振興基金助成事業
令和3年度日本博イノベーション型プロジェクト
[お問い合わせ]神奈川県立青少年センター ホール運営課
電話:045-263-4475(9時から17時まで)
[公式ホームページ]こちら