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音楽

「渡辺俊美のINTER PLAY」インタビュー

「渡辺俊美のINTER PLAY」インタビュー

渡辺俊美が発信する「生活の中にジャズを」

−「渡辺俊美のINTER PLAY」は、もともとDJスタイルのイベントが発端とお聞きしました。

そうだね。でも、実はいちばん最初はそこじゃなくて、『INTER PLAY』というコンピレーションCDなんですよ。2000年のことだけど、当時まだ若手だった「PE’Z(ペズ)」とか「SOIL&”PIMP”SESSIONS(ソイル・アンド・ピンプ・セッションズ)」とか、勢いのある日本のジャズバンドの曲を僕が選曲・監修して発表したのがはじまり。それを、公開DJイベントに発展させて−−、っていう流れです。

イベントの方は、各地のスペースを借りて、トークを交えながらいろいろな曲をかけて、最後に僕が弾き語りするスタイル。2005年から、たくさんの場所で、たくさんのお客さんと音楽を共有でき、僕も最高の体験をできました。それを経て、2016年10月からラジオをスタートさせ現在に至るんだけど・・・、『INTER PLAY』の制作も、イベントもラジオも、「より多くの人に、ジャズの魅力を伝えたい」っていうのが基本にあるんです。

ほら、ジャズって、 一般的に“おしゃれ”だったり“ハードルが高い”っていうイメージがあるじゃないですか? 特にハードルでいえば、理論を知らなければ楽しめないというイメージも。でも、そんなことないんですよ。もっと気軽で直感的なものだと思うし、また、アグレッシブな音楽、癒しの音楽でもあり、さらに人と人を繋げる音楽でもある。そういう豊かさ、深さに触れてもらいたいな、と。だから、「生活の中にジャズを」をコンセプトに、番組ではステレオタイプのイメージとは違う切り口で、さまざまな曲を紹介しています。

−あまりジャズに触れたことがないリスナーからの反響はありますか?

“カッコいい”とか、“お気に入りに出会えた”とか、うれしい声が多いね。あと、“すごい親切ですね”なども(笑)

というもの、特に若い世代の子にとっては、やっぱり知らない曲が多いわけです。だから、リスナーが、「おっ、いいな」っていう曲があったときに、いつでもバンド名や曲名を調べられるよう、SNSに情報を掲載するなど工夫しています。あと、「“新譜”として受け入れられる」ことも、大切にしている。ただ、新譜といっても、あたらしく出たという意味じゃなくて、「聴いたことがなければ、あたらしいものだよね」という、こと。つまり、ジャズの歴史が、このテクニックが云々より、リスナーができるだけ固定概念を抱かずジャズに触れられるようにしたい。

だって、すごいじゃないですか。半世紀以上続き、いまだに何十年もの昔の曲が現代のミュージシャンに当たり前のようにカバーされている。聞き手にしたらそういうところも魅力だし、また時を経るごとに愛着やインスピレーションが深まる音楽って、なかなかないよね。だから、僕はリスナーとジャズの架け橋になれればって、考えているんですよ。

ジャズアーティストの音色から知った、「ありのままの自分」

−ご自身のライフスタイルに影響を与えた、アーティストはいますか?

まず、ジャズとの出会いはもうずっと前から。TOKYO No.1 SOUL SETのアプローチのひとつにヒップホップがあるけど、刺激を受けたヒップホップの元ネタを辿ればジャズに至るとかね。だから、日常的に聴いていたし、レコード屋にも足繁く通っていた。

そのなかで、あえて挙げるとすれば、『Wes Montgomery(ウェス・モンゴメリー)』と『Chet Baker(チェット・ベイカー)』かな。

以前、レコーディング中に体調を崩したことがあるんですよ。TOKYO No.1 SOUL SETの音づくりって、絶えず新しいことに挑戦してきたんだけど・・・、それが逆にプレッシャーとして働いたのかもしれないね。体調も悪い、気分も冴えない・・・、そんなときに彼らの音楽から、すごい勇気をもらった。さらにいえば、その時、「自分のありのままを肯定できた」とも感じたんです。だから、さっきの話に戻れば、「生活の中にジャズを」というのは僕の実感であり、その素晴らしさもどんどん伝えていきたい。

音楽ファンだけじゃなく、“ハート”を持つ人々すべてに向けて

−番組では、街情報なども発信しているそうですね。

クリエイティブから衣・食・住まで、面白くて活気のあるローカル情報が中心だね。

これまでのライブや東日本大震災の復興支援活動で、全国各地を訪れた経験からもそうだけど、僕は以前から地方の街に魅力を感じているんです。かつて、地元・福島から上京したころ、地方の人間が夢を追うのは、東京しかなかった。「絶対、負けてなるものか」って、僕も気負いがあったけど、でも今は、必ずしも大都市じゃなくてもいいのかなという思いが強くなっている。それは、どこにいても情報を入手・発信できる時代だし、ハートを持って行動すれば場所に関係なく、あたらしいカルチャーを確立できる時代だと思うから。

そして、地方にはそれを受け入れる土壌が実はある。ジャズの話でいえば、岩手県・一関市にあるジャズ喫茶の老舗「ベイシー」もそう。各地の人が手軽に行ける場所ではないけど、全国からファンが集まり、また世界中のジャズアーティストに愛され続けている。もちろん、こだわり続けた結果なんだろうけど、こういうカルチャーって実は、音楽に限らず各地にたくさんあるんだよね。だから、そういう情報も発信して、ハートを持つすべての人のきっかけになれる番組にしていきたいですね。

あと、地方を考えたときに、神奈川県って、すごい魅力的な場所なんですよ。横浜や藤沢に住んでいたことがあるので、これは僕の実感。街ごとにちゃんとプライドを持っていて・・・、なかなかないことだよね。そもそもカルチャーって、行動したいという思いを、そういう環境が支えて生まれてくるものだとも思います。

−最後に、茅ヶ崎のカフェでライブを控えているとお聞きしました。

そう。茅ヶ崎にある『MOKICHI WURST CAFÉ(モキチ・ブルスト・カフェ)』主催の「FRIDAY NIGHT LIVE」というイベントなんだけど、このカフェがすごくよいんだよ。湘南で現存する唯一の蔵元「熊澤酒造」併設のカフェで、古民家の雰囲気がよくて、アルコール&料理とも充実。ファンもたくさんいるお店です。

MOKICHI WURST CAFÉのファン、僕らアーティストたちのファン、さまざまな人が集まって、音楽やアルコール・料理を介して、あたらしい交流が生まれる。そんなライブになると思う。

どんな大きなカルチャーも、はじめは少人数からはじまると思うんですよ。そんな期待感が、今度のライブにもありますね。

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