劇団四季『オペラ座の怪人』スーパーバイザー 北澤裕輔さんインタビュー
――『オペラ座の怪人』は世界的なヒットミュージカル。日本でも1988年に初演して以来、『ライオンキング』や『キャッツ』に次ぐ上演回数を誇る、劇団四季の代表作ですね。北澤さんの初舞台も、『オペラ座の怪人』だったと伺いましたが?
北澤:はい、じつは。さらに言うと、僕がミュージカルの面白さに目覚め、劇団四季に入りたいと思ったのも、音大生時代に観た『オペラ座の怪人』がきっかけでした。
――北澤さんの人生の転機となった作品なのですね。
北澤:そうなんです。クラシックの声楽を勉強していていた僕は、それまでミュージカルは畑違いのものだと思っていたんです。でも劇団四季の『オペラ座の怪人』を観たら、まず楽曲が素晴らしかった。パリのオペラ座を舞台にしているので、劇中劇のオペラも出てきて自分との距離も近く感じたし、オペラとは違うキャッチーな曲も多くて面白かった。すぐにサウンドトラックCDを買って、毎日聴いていました。ストーリーも感動的ですし、「ミュージカルは素晴らしい、劇団四季ってすごいな!」と驚きましたね。
――そんな思い出の『オペラ座の怪人』は、パリ・オペラ座の地下に住む醜い怪人ファントムと怪人が恋い焦がれ手塩にかけて育てた歌手・クリスティーヌ、クリスティーヌと運命的な再会を果たして恋に落ちるラウル・シャニュイ子爵の物語ですね。
北澤:はい。怪人は作曲の才能にあふれた天才肌の人物ですが、周囲から醜いと言われ、そのせいでオペラ座の地下に閉じこもっていました。そして、オペラ座のコーラスガールのクリスティーヌを見初め、愛情を感じながら密かに歌の稽古をつけた。彼女はどんどん成長し、あるオペラで主役のソプラノ歌手が公演を放棄したことで、急遽代役に抜擢。しかし、クリスティーヌはラウルと恋仲に。ファントムは嫉妬に狂って・・・というお話です。
――とてもミステリアスでドラマティックなラブストーリー。北澤さんは、この物語のどこにいちばん魅力を感じていらっしゃいますか?
北澤:やはり、ファントムの切ない生涯ですね。彼はクリスティーヌを心から愛しますが、それはとても苦しい片思いなんですね。僕自身は、ラウルを演じさせていただきましたが、いちばん感情移入していたのは、じつはファントムで。いち観客であったときも、ラストシーンではファントムの悲哀に、涙していましたね。
――ミュージカルファンは女性が多い印象ですが、男性も心が揺さぶられますね。
北澤:好きな人に振り向いてもらえないことは、皆ありますよね。そういうリアルな感情が、すごくフィードバックするんです、『オペラ座の怪人』は。とくにラストシーンは、誰もが自分の“愛とはなにか?”を重ね合わせてしまうのではと。キャストとしてはもちろんですが、僕がスーパーバイザーで本作に関わるときも、やはりラストシーンの感動を大切にするように出演者に伝えていますね。
――そのドラマ性に加え、北澤さんが感動したという音楽の素晴らしさも、大きな魅力ですね。作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバーは『キャッツ』や『ジーザス・クライスト=スーパースター』も手がけ、現代のモーツァルトとも称されているそうですね。
北澤:アンドリュー・ロイド=ウェバーはクラシックにも造詣が深いので、『オペラ座の怪人』の音楽はとても上質。音楽的にも高度なテクニックが要求される、歌い応え、聴き応えのあるナンバーが揃っています。ファントムのソロナンバー「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」、誰もが聞き覚えのあるタイトルロールの「オーヴァチュア」、ラウルとクリスティーヌが1幕の最後で歌う2重唱「オール・アイ・アスク・オブ・ユー」、2幕の頭の「マスカレード」もとてもいい曲です。オペラ座が舞台なだけあって、劇中劇として有名なオペラの曲調やシチュエーションにあえて似せた楽曲があったりもして、音楽好きにもたまらない作品ですね。
――北澤さんも、サウンドトラックを聴き込んでいらっしゃったくらいですし!
北澤:そうなんですよ(笑)。他のミュージカルも、「この作品ならこの曲!」という代表曲がいくつかありますが、『オペラ座の怪人』は名曲ぞろい。誰もが耳にしたことのあるメジャーな楽曲が、たくさんあるんです。また、お芝居が歌でスムーズに綴られていくのも特徴です。セリフもメロディーで語られていく、とても正統的なグランドミュージカルです。
――パリのオペラ座を再現した舞台美術が豪華なのも、見どころですね。
北澤:劇場に入ってまず目を奪うのは、舞台を囲む額縁状のプロセニアム・アーチだと思います。黄金の彫像がとても豪華で、大きなシャンデリアも素晴らしい。本物のオペラ座と遜色ない光景が広がっているので、僕も時々、「ここはどこ? 本当に日本なのかな?」と思うくらいで(笑)。ドレープ(吊り幕)や衣裳も、贅沢な生地でデザインを凝らした初演時のものを丁寧にメンテナンスして使っている。そこにも『オペラ座の怪人』の重みを感じていただけるはずです。
――19世紀のヨーロッパを表現する衣裳も素敵ですよね。
北澤:はい、本当に。とくに俳優にとって、衣裳というのは役を演じる気持ちの上でも大切なもの。『オペラ座の怪人』の衣裳は、早替えはかなり大変ですし、重さもありますが、そのぶんリアルな重厚感があり、妥協がない。着ている我々も、そこに本物を感じて背筋が伸びますね。
――そんな『オペラ座の怪人』で、北澤さんご自身がお好きなシーンは?
北澤:まずは冒頭ですね。この物語はプロローグを終えると劇中オペラ『ハンニバル』のリハーサルシーンへと場面が変わるんですが、プリマドンナのカルロッタがいきなりカデンツァを歌っているんです。その曲に「え? オペラが始まっちゃうの?」と驚かされる。その導入は見どころです。
――他には、どのようなシーンが印象的ですか?
北澤:個人的に印象深いシーンは、支配人のオフィスの場面ですね。クリスティーヌが怪人ファントムに連れて行かれて脅迫状が届く。支配人、カルロッタやラウル、おのおのの想いがそこで交錯し、7重唱の「プリマ・ドンナ」は歌われます。この曲はテクニカルで、最後は圧倒的な迫力を感じてもらえます。僕が『オペラ座の怪人』に観客としてハマったのも、このナンバーあってこそでした。
――では、北澤さんが演じられていたラウルについては、どう感じていらっしゃいますか?
北澤:ラウルは、地位もお金も人望もすべて持っていて、コンプレックスが一切なく生きてきた。クリスティーナを光のほうへと導いていく人物です。そこにクリスティーヌも希望の光を感じ、惹かれていったんだと思います。彼自身も1幕、2幕と物語が進むと、クリスティーヌに対する態度も変化していきますし、クリスティーヌの気持ちが彼にどう向いていったかにも、ぜひ注目してもらいたいですね。三角関係、それぞれの人物の感情の動きを想像することで、より深く物語を楽しめると思います。
――お話を伺って、来年3月からの上演がますます楽しみになりました。
北澤:劇団内にも、とてもワクワク感がありますね。会場となるKAAT神奈川芸術劇場の近辺は、コンサートや演劇が盛んな地域なので、そこで公演ができる喜びも大きいです。KAAT神奈川芸術劇場はとても美しい劇場と伺っていますし、横浜は古くから文化的な香りが色濃く、お客様も目が肥えていらっしゃる。そして我々、劇団四季の本拠地も横浜(青葉区あざみ野)なので、この街にとても愛着があります。地元のお客様に恥ずかしいものはお見せできないと、劇団員全員、今からとても気合いが入っているんですよ(笑)。8月までの約5ヵ月間、最高の『オペラ座の怪人』を楽しんでいただけるよう、劇団員一丸となって稽古に取り組んでいきます。本番を、ぜひお楽しみに!
劇団四季ミュージカル『オペラ座の怪人』 横浜公演情報
◇公演期間 : 2017年3月25日(土)開幕~8月
◇会 場 : KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>
(神奈川県横浜市中区山下町281)
◇第一期発売日程: < 3月25日(土)~6月30日(金)公演分 >
11月20日(日) 午後10時より
( 「四季の会」会員先行予約:11月12日(土)より )
◇料 金 : S席10,000円 (税込10,800円) /サイドS席 10,000円(税込10,800円)
A席 8,000 円 (税込8,640円) / サイドA席 8,000円(税込8,640円)
B席 6,000 円 (税込6,480円) / サイドB席 6,000円(税込6,480円)
C席 3,000 円 (税込3,240円)
サイドイス付立見席3,000円(税込3,240円)
※「四季の会」会員料金 :
S席9,000円(税込9,720円)/ サイドS席9,000円(税込9,720円)
◇予約方法 : ・ネット予約 SHIKI ON-LINE TICKET http://489444.com
(24時間受付。ただし、発売初日は午前10時より)
・電話予約 劇団四季予約センター 0120-489444(午前10時~午後6時)他
・直接購入 各劇団四季専用劇場(自由劇場を除く)
チケットぴあ チケットかながわ 他