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音楽

神奈川県民ホール開館40周年記念|オペラ「金閣寺」のススメ

神奈川県民ホール開館40周年記念|オペラ「金閣寺」のススメ

三島由紀夫の代表的小説『金閣寺』

金閣寺と言えば、京都を代表する観光スポット!修学旅行や京都旅行で訪れた思い出がある方も多いかもしれませんね。正式名称は鹿苑寺(ろくおんじ)といい、三層の楼閣である舎利殿「金閣」が特に有名なため、一般的に金閣寺と呼ばれています。実は金閣寺、1950年に同寺学僧の放火によって焼失しており、現在私たちが目にしている姿は1955年に再建されたものです。この金閣寺放火事件を題材として、1956年、雑誌『新潮』に10号に渡り連載され、世界的にも高い評価を得たのが三島由紀夫の小説『金閣寺』です。

それでは、『金閣寺』の登場人物をご紹介していきましょう。  

オペラ「金閣寺」のススメ

溝口(みぞぐち)
本作の主人公で、生まれつき障害(原作では吃音、オペラでは片手の不具)を持つ少年。この障害は、「言葉を話す」という生活上の基礎的な行為を持って外の世界と接触することを妨げ、内なる認識世界を拡大空想することを増長させることになる。小説は溝口が金閣寺を放火するまでの内面独白という形で綴られていく。

オペラ「金閣寺」人物紹介

有為子(ういこ)
溝口が永遠に憧を抱き続ける異性であり、生きた美のシンボルとも言える少女。溝口を拒絶したまま、悲劇的な死を遂げる。溝口が求めても届かない苦悩の源泉はここにあり、溝口が金閣とともに消し去ろうとした美でもる。

鶴川(つるかわ)
父親が逝去し、徒弟として金閣寺に住み込むことになった孤独な溝口に暖かい眼差しを向ける友人。溝口が唯一、金閣に対する異様な執着を打ち明けた相手であり、溝口が写真の陰画だとすれば、鶴川はその陽画だった。

柏木(かしわぎ)
老師に認められ大学へと進学した溝口が出会った、溝口と同様に体に障害を抱えている同級生。高度の学識と背徳的な狡智を備えた悪魔的な男で、自分の障害を逆手に取って高い階層の女を籠絡している。

『金閣寺』がオペラ原作に!作曲は黛敏郎!

戦後、日本はベルリンにある歌劇場「ベルリン・ドイツ・オペラ」とのオペラによる文化交流の中で、ドイツで日本人の作曲家による日本人オリジナル・オペラを上演できないかとの打診を受け、作曲家としては黛敏郎に白羽の矢が立ちました。またオペラ台本としてベルリン・ドイツ・オペラ側から歌舞伎の『寺子屋』と小説『金閣寺』が提案され、ノーベル文学賞候補として名も連ねた三島由紀夫の代表作のひとつとして独語訳し出版されていた『金閣寺』が選定されました。

三島由紀夫×黛敏郎

三島由紀夫(みしまゆきお)
27歳の時にパリを旅行した三島は闇両替にひっかかり、旅行者用小切手をだまし取られてしまう。手元にはわずかな金しか残らず、おかげで一ヶ月の間、日本人の経営する安宿に逗留することになるが、この宿の近くにはパリ国立音楽院に留学中の黛敏郎が住んでいた。黛は三島がパリ滞在中、ガイドや通訳役として何かと三島を助けることになる。

黛敏郎(まゆずみとしろう)
稀代の才能で戦後日本の音楽文化の礎を築いた作曲家。音響・録音技術を使った電子音楽の一種とされるミュージック・コンクレートを日本で初めて作品としてリリースするなど前衛の旗手的な存在だった。後年、日本的な素材への傾倒と仏教音楽への関心を表現の核にした黛は、心理的要素の強いオペラ金閣寺に対して緊張感に富んだ音楽を作曲し、聴衆に大きな衝撃を与える。約33年間に渡りテレビ番組「題名のない音楽会」の司会を務めていたことでも有名。

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1991年、オペラ「金閣寺」は日本で逆輸入言語で上演された!

ベルリン・ドイツ・オペラから黛敏郎へ委嘱されたオペラ「金閣寺」。オペラ台本は、ベルリン・ドイツ・オペラのリブレッティスト(台本作者)、クラウス・H・ヘンネベルクが担当しています。つまり日本語で書かれた純文学小説『金閣寺』が独訳され、それをもとにドイツ人の手によりオペラ台本に翻案され、ドイツ語オペラ台本に日本人作曲家が作曲したものが、オペラ「金閣寺」なのです。まさに国境を超えて、時代の芸術家たちの情熱が「オペラ」というカテゴリーを通し交わされたと言えるでしょう。

オペラ「金閣寺」は1976年にドイツのベルリン・ドイツ・オペラで初演されたのち、日本では1991年に全幕初演を迎えました。日本での上演に際しては、字幕スーパーによる邦語訳によって公演され、まさに逆輸入言語での上演といった形となりました。

オペラ「金閣寺」上演イメージ
溝口の「金閣寺は焼かねばならぬ!」という強迫観念の表象として、オペラの舞台上にも怪しくも美しく金閣寺が浮かび上がる。

神奈川県民ホール開館40周年!オペラ「金閣寺」16年ぶりの上演決定!

日本人作曲家によるオペラを継続して制作上演してきた神奈川県民ホール。開館40周年の節目の演目に選んだのは、神奈川県横浜市出身の黛敏郎が作曲したオペラ「金閣寺」です。日本では16年ぶりの待望の上演!指揮・下野竜也、演出・田尾下哲、出演者は小森輝彦、宮本益光を中心に、日本を代表する若い力が集結して創る新制作公演となります。2日間限りのスペシャルな公演を、どうぞお見逃しなく!

神奈川県民ホール

国内外で活躍するスタッフ、キャストの皆さんたち。 オペラ「金閣寺」でどんな熱演を見せてくれるのか期待が高まります!

下野竜也さん
田尾下哲さん
小森輝彦さん
宮本益光さん

オペラ「金閣寺」の世界、いかがでしたか?
三島由紀夫の原作小説から楽しむも良し、黛敏郎の音楽世界から楽しむも良し、まずは神奈川県民ホールの公演に足を運んでみるというのも勿論OK!
唯一無二の世界観に、あなたの感受性で触れてみてくださいね!

Text:井上美代子(CLIMBERS)
illustration:くぼたまこ

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