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連続読み切りコラム『  』の虜/第6回 小林 忠 『浮世絵』の虜
美術・写真
2015.09.30

連続読み切りコラム『  』の虜/第6回 小林 忠 『浮世絵』の虜

『浮世絵』の虜

江戸時代の江戸(現在の東京)に生まれた美術「浮世絵」は、日本を代表する文化遺産として、世界中の人々に愛されてきました。19世紀の後半には印象派のマネやモネ、ドガやゴッホなどの画家たちに大きな影響を与えたことは、よく知られています。

浮世絵は、もともと町人の美術として誕生し、発展しましたが、その愛好は単に江戸の町人にとどまることなく、参勤交代の大名に従って江戸に一年もの長期滞在を余儀なくされた諸藩の武士や、訴訟や観光のためにやってくる天領(幕府の直轄地)の農民たちにも、大歓迎されたのでした。地方にはない美しい色刷りの版画は、しかも軽くて安く、格好の土産物として全国各地に運ばれ、「吾妻錦絵」あるいは「江戸絵」と呼ばれて、ありがたく、また楽しく歓迎されたものでした。したがって浮世絵の鑑賞者には、身分と地域の隔たりや偏りがなく、一枚の版画にも分かりやすい美の表現が期待されたのでした。そうした普遍的な人間性、ヒューマニズムに根ざした浮世絵ですから、誰にも懐かしく、こころよい表現で満たされていて、風俗習慣の異なる現代の日本人にも、さらには世界中の人々に愛され続けているわけです。

浮世絵の題材は、はじめは美しい女性や歌舞伎役者など人物画が主体でしたが、やがては風景画や花鳥画などに、広がっていきました。とくに風景画は、現代のように簡単には旅に出られなかった時代の人々にとって、各地の風景や風俗を絵によって知ることが出来るために、大いに歓迎されたものでした。江戸の名所はもとよりのこと、近郊の観光地、とくに江の島や大山、箱根は、しばしば題材に扱われています。そのほかに東海道53次や中山道(木曽街道)69次などの宿場シリーズも好評でした。東海道53次では、今の神奈川県下なら川崎、神奈川、保土ヶ谷、戸塚、藤澤、平塚、大磯、小田原、箱根と九つもの宿場町が扱われていて、かつての町や村の景観や人々の生活ぶりを具体的に偲ぶことが出来ます。

本物に接することは無理でも、画集やテレビの美術番組などを通して、浮世絵の魅力に接してみてはいかがでしょう。きっとあなたも、浮世絵の虜になるはずです。

 

[caption id="attachment_18844" align="alignnone" width="600"]東海道五拾三次之内 平塚 縄手道/歌川広重(初代)
東海道五拾三次之内 平塚 縄手道/歌川広重(初代)     神奈川県立歴史博物館所蔵[/caption]

小林 忠(KOBAYASHI Tadashi)
1941年(昭和16年)東京都生まれ。東京大学大学院修士課程修了。東京国立博物館絵画室員、名古屋大学文学部助教授、東京国立博物館情報調査研究室長、学習院大学文学部教授、千葉市美術館館長などを歴任。現在、学習院大学名誉教授、岡田美術館館長、国際浮世絵学会会長。主著に「江戸絵画史論」(サントリー学芸賞)、「江戸浮世絵を読む」、「江戸の浮世絵」、「江戸の絵画」。

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