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「マグカル・ドット・ネット」は、神奈川県内のアート・カルチャー情報を発信するサイトです。
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横須賀美術館「日本の妖怪を追え!」へ行ってきました。
美術・写真
2013.08.22

横須賀美術館「日本の妖怪を追え!」へ行ってきました。

small_正面芝生2

 
さっそく展示をみていきたいと思います。
 
この展示は時代や作家によって3つの部屋にカテゴライズされています。今回特別に担当学芸員の日野原さんが付き添って下さったので、その解説も交えながら、順番にレポートしていきたいと思います。
 
まず第一フロアの江戸の妖怪画へ。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」から始まり、人の姿をした妖怪から、狐・狸・カッパなどの動物(?)妖怪まで、粒選りな作品が展示されていました。
 
中でも一番気になった、というより思わず笑ってしまったのが、歌川広景の「青物魚軍勢大合戦之図」。
 
small_歌川広景 青物魚軍勢大合戦之図
歌川広景 《青物魚軍勢大合戦之図》(前期展示) 大阪城天守閣蔵
 
 
海辺でタコや鯛やエビ率いる魚軍と、ネギやブドウ率いる青物が擬人化されて闘っている絵です。こんなものまで妖怪に含んでしまうとは!(でも、これが妖怪ではないとしたら一体何なのか……やっぱり妖怪?)
 
よくよくみてみると、登場キャラクターの横には「みかんたゆう」や「なまず たろう」などいちいちへんてこな名前がついていて、細かいところまでユーモラス。前年に流行したコレラを踏まえた風刺画という裏テーマがある事をしり、さらにその魅力に惹かれてしまったのでした。
 
他にも妖怪スゴロクや、切って遊べるカードゲーム形式のものまであり、150年近くも前のものなのに妙に親近感が湧くものばかりでした。
 
「この当時には紙を立体に組み立てるものもあったんですよ〜」と説明を受け、幼少の頃に慣れ親しんでいた雑誌の付録の起源は江戸時代にあったのか!?と驚愕してしまいました。
 
 
第二フロアは時代が下り、明治そして昭和の妖怪画へ。
 
明治初期には新聞が誕生し、妖怪にまつわる記事が人々の元へ報道されていきました。
 
「新聞といっても、今のような新聞になるのはもう少し後。明治初期はまだ瓦版のような形式で、ページも一枚きりでした。」それにしても、どこそこに霊が出た!といった類の内容が新聞記事として配られていたとは。
 
「もちろん、妖怪や霊的なものを疑ってかかる人々もいたようですが、当時は死んだものが霊として現れる、といった話が大衆の間で広く受け入れられていた時代でした。」と日野原さんが教えてくれました。
 
その一方で、登場人物が断髪していたり新聞名の脇に西洋の天使が配置されていたりと文明開化の影響が随所に伺えるのが興味深いですね。
 
 
さらに先へと進むと、掛け軸に描かれた幽霊画とご対面。
 
ユーモラスな作品から一転して、やはりどこか不気味さがありました。松井冬子さんの作品をみて、あまりのリアルさに鑑賞していた子ども達が、「夢に出てきそう!」と騒いでいたのが印象的でした。
 
その一方で小川芋銭の妖怪画は対称的に、モチーフが愛らしく描かれていて、こちらは妙にほのぼのとした気持ちになってしまいました。
 
small_小川芋銭 雪女
小川芋銭 《雪女》 茨城県近代美術館蔵
 
 
その奥には待ちに待った(?)水木しげるさんの妖怪画が!
 
 
「カラー作品は、墨で書いたものをコピーしたものに色を塗っております。もちろん見応えはありますが、モノクロ作品の方がより筆によるタッチが味わえますよ。」と言う日野原さんのアドバイスをきき両者を比較してみると、確かにモノクロは細かいタッチの跡まで肌で感じられました。
 
過去の妖怪画を踏襲しているものから、全く異なった水木しげる独自の視点の作品まで幅広く味わえました。原画って思っていたよりも大きいのですね。
 
 
第二ルームの最後は戦後以降のアート作品に登場する妖怪の紹介。今までの流れとガラッと変わり、いわゆる伝統的な妖怪の作品はあまりみられません。
 
池田龍雄さんの妖怪像は社会問題を寓話化したものですし、漆原英子さんは人物画を象のような妖怪として描き表しています。
 
このように社会や自己の内面など、近代の妖怪の“扱われ方”をみてみると、妖怪というものの姿は曖昧になれども、私たちにとってより身近な存在となっているのかもしれません。
 
 
第三ルームは、現代において妖怪表現を用いたアート作家3人をピックアップ。
日野原さん曰く「現代はあまりにも表現が多様化し細分化しているので、あえて作家を絞ってみせる事にしました。」とのこと。
 
若冲のような絵に妖怪を用いるフジイフランソワさん、
 
small_フジイフランソワ 付喪神-壱
フジイフランソワ 《付喪神-壱》  個人蔵
 
不気味だけれど、眺めていると不思議と愛着が湧いてくる鎌田紀子さんの人形たち、
 
small_鎌田紀子 すけるひと
鎌田紀子 《すけるひと》 個人蔵
 
野菜や魚で作ったオブジェをモノクロ写真で撮影する今道子さん。
 
馬三輪車
今道子 《馬三輪車》  作家蔵
 
どなたも個性的かつ全く違った妖怪的アプローチで、なるほど多様です。偶然とのことですが、3人とも女性作家なのも興味深いですね。
 
 
今後はどのような“妖怪画”が出てくるのだろうかと期待に胸を膨らませたところで展示は終了です。(次は館内レポートへ!)
 
 
〜おまけ〜
 
今回は、企画展だけではなく広報担当の方に、美術館そのものの案内もして頂きました。写真を交えていくつか紹介します。目の前に広がる海、それを見渡せるように最上階が展望台になっています。
 
small_屋上
 
船の上のおじさんまでくっきりみえる大型双眼鏡はなんと無料で覗けます。
 
small_写真3
 
こちらは常設展会場。広々としていて一点一点ゆったり鑑賞できます。
 
small_写真4
 
その他、レストランや図書館なども人で賑わっており、美術館としてだけではなく、地域住民の方の憩いの場としても親しまれ、色んな方から愛される美術館だという事がわかりました。
 
 
こんな美術館が近くにあったらなぁ……
 
 

■ ライター プロフィール ■
 

small_IMG_1067
 

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小林大吾(Daigo Kobayashi)
2009年 多摩美術大学日本画専攻入学。
主に平面作品を描いています。たまに絵本や文章も。
好きな豆腐は絹ごし。写真は作品【舞踏】
ウェブサイト:http://kobayaashidaigo.jimdo.com/

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関連するURL:http://www.yokosuka-moa.jp/
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