コンテンツにスキップ
アート伝統芸能

中森貫太×野村萬斎「知って楽しい!能・狂言の世界」〜後編〜

中森貫太×野村萬斎「知って楽しい!能・狂言の世界」〜後編〜

中森貫太さんと野村萬斎さんの対談、後編は、海外でも評価が高まる能・狂言の現在と未来について、それぞれの思いを語っていただきました。

*前編はこちらからお読みいただけます>>

野村 祖父も父も海外が大好きだったので、私のところは海外公演が多い方ですね。今年も北京とパリへ行きましたし、来年、再来年も予定が入っています。
もっとも、最近は国内も海外もあまり変わらない気がします。

中森 そうですね。日本人が「面白い」と思うものを持っていかないと、海外の方にも喜んでいただけませんから。その意味では、どうしてもエンターテイメント性のある曲を選ばざるを得ないのが現状です。薪能の場合もそうですが、静寂な世界でしっかりとセリフを聞かせるより、動きがあって華やかさをアピールできる曲の方が喜んでいただけます。

野村 狂言はセリフ劇なので、海外では当たり前のように字幕が付きます。その場合、翻訳された言葉は、多少古色を付けたとしても、基本的には現代語です。無理にわかりにくくする必要はありませんからね(笑)。だから、日本で上演するより、むしろ細かい部分まで分かっていただけます。だから、以前は『棒縛(ぼうしばり)』のような動きで理解できる曲を選んでいましたが、最近は『川上』や『月見座頭』のようなセリフ中心の曲を持っていきます。

中森 確かに、台本としては面白い曲ですね。

野村 盲人をテーマとした曲で、杖の音が響くだけで音的には変化が少ないのですが、物語としては奥が深い。「新作ですか?」と言われることもあるほどです。

中森 私が主催している『能を知る会』でも、「初心者向けではない」といって敬遠していた曲が多かったのですが、字幕を出すようになって変わってきました。例えば『景清』は、動きは少ないけれど、字幕の助けがあれば能ならではの細かな動きを楽しんでいただけます。
これは海外でも同じことが言えるでしょう。動きの派手な曲は、物語というよりレビュー的なものが多いので、これからは物語を楽しめる曲を持って行くのも「あり」ですね。
野村 他のジャンルとコラボするにしても、海外に出かけるにしても、私は自分の価値観だけでやっているわけではなく、諸外国の文化の中で狂言を見ていただくことに意味がある、と思っています。自分が考えてきたことが通用することもあれば、しないこともある。自分がこれまでやってきたことの意味を確かめるためにも、私は海外に出ることも必要だと思っています。

中森 能の上演には多くの人手が必要なので、採算性の問題もあり、海外へ出かける機会は多くはありません。でも、文化交流として意義のあるものであれば、手弁当であっても、喜んでチャレンジしたいと思っています。

野村 海外といえども、最近はただ古典を演るだけでは興味を持っていただけません。三代で『三番叟』を演る、現代美術家と組む、その国の“ご当地もの”を取り入れた新作を作るなどのアイデアが求められます。
今は2020年東京大会の準備のために中断していることがたくさんありますが、今後も新作には取り組みたいと思っています。私たちは古典で生きていますから、自信作は何度でも再演したいという思いがある一方で、これまでの曲に負けない新作を作りたい、という思いも強くあります。

中森 私は“能舞台”という枠から出てたところできちんとした能ができないか、と考えています。私の父は「能舞台の柱なんて舞台が見えにくいだけなのだから、レーザー光線を立てておけばいい」と言ってしまうほど革新的な人です。バブル期には、アクリル製の舞台にライトを仕込んで能を演じたこともあったほどですから(笑)。私も、照明やプロジェクションマッピングを活用することで、分かりやすさを追求した舞台ができないか、と考えています。伝統的でスタンダードなものも大切ですが、能・狂言の入り口として、一般の方がエンターテイメントの一つとして楽しめる演出も、あっていいと思います。

野村 2020年東京大会は「復興」がテーマです。スポーツの祭典としての祝祭性もありますが、「祝祭」とはそもそも「生きることを寿ぐ」と同時に「死」を考えること。記者発表では「鎮魂と再生」という言葉を使いましたが、それはまさしく能狂言の世界観でもあります。

中森 お盆のお祭りなども、祖先に回帰する行事ですから、日本人の根底にある世界観ともいえますね。

野村 そうです。生と死が累々と続いてきた結果として、今という時間を生きている。その生きている人間が集まり、生命力を戦わせることが、スポーツの祭典にふさわしい姿だと思っています。こうした考えをベースに、私が狂言師として培ってきたアイデアなども取り入れ、新しいクリエイターたちと共有しながら企画を進めています。ハイテク分野の方もいれば、エンターテイメント性に長けた方もいる。高尚なものを目指して「分かる人にだけ分かればいい」ということではないので、ある意味、誰にでもわかるような表現を考えています。
中森 最大公約数を探すことは、一番難しいことかもしれませんね。

野村 そうですね。エンターテイメント性の中にどれだけ精神性、芯のある部分を表現できるか。押し付けがましくなく、それでいて、ふと「あ、そういうことなんだ」と気付ける部分をプラスしたいと考えています。

《スペシャル・プレゼント》

中森貫太さん、野村萬斎さんのお二人からマグカル・ドット・ネット読者のみなさまに、サイン色紙をいただきました!
2枚セットでプレゼントいたしますので、ふるってご応募ください!

***********************************

★プレゼントの応募は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。
【応募概要】
中森貫太さんと野村萬斎さんのサイン色紙を、2枚セットで1名様にプレゼントいたします。
プレゼントご希望の方は、以下の2つの方法からご応募ください。両方からご応募いただくのもOKです。その場合、当たる確立が2倍になります! 皆様のご応募をお待ちしております。

【応募〆切】
2019年1月20日(日)24:00まで

①応募フォームから
【応募方法】
下記の応募フォームよりご応募ください。

【応募資格・条件】
●有効なe-mailアドレスをお持ちの方。

【抽選・当選発表】
当選者の発表は、プレゼントの発送をもって代えさせていただきます。

②Twitterから
【応募方法】
1. マグカル・ドット・ネット公式Twitterアカウント「@MAGCUL」をフォローしてください。
2. 公式Twitterアカウントから、下記応募期間中に投稿される「#マグカル色紙」がついたプレゼント応募用の投稿をリツイートしてください。上記で応募は完了となります。

【応募資格・条件】
●有効なe-mailアドレスをお持ちの方。
●マグカル・ドット・ネット公式Twitterアカウント、「@MAGCUL」をフォローしていること。
※当選発表前にフォローを解除した場合、応募・当選は無効となります。
●公式Twitterアカウントから投稿される応募用のツイートを応募期間内にリツイートすること。
※必ずご自身のアカウントを“公開”にした状態で参加ください。アカウントが非公開の場合は参加とみなされません。
※ダイレクトメッセージを受信拒否設定している場合、参加とみなされません。
※引用リツイートでは参加とみなされません。リツイートにてご参加ください。
●プロフィール、ユーザー名、自己紹介、アイコンなどを設定していないアカウントでは、Twitterの仕様上参加とみなされない場合がございます。
●頻繁にアクション(ツイート、リツイート、いいね、返信など)を行っていないアカウントでは、Twitterの仕様上参加とみなされない場合がございます。
●Twitterアカウント開設後、メールアドレスが本人のものか確認をするプロセスを行っていないアカウントでは、Twitterの仕様上参加とみなされない場合がございます。

【抽選・当選発表】
ご当選者にはマグカル・ドット・ネット公式アカウントよりTwitterのダイレクトメッセージにてキャンペーン期間後に当選連絡をいたします。
当選発表は、ダイレクトメッセージの当選連絡をもって代えさせていただきます。その際にお申込者のお名前・プレゼント送付先ご住所を確認させていただきますので、ダイレクトメッセージにそのまま返信してください。

※いただいた個人情報は本キャンペーン以外の目的には一切使用いたしません。

マガジン