神奈川・日本の伝統文化 祭り特集 「藤沢宿・遊行の盆」(藤沢編)
◇各地の盆踊りの起源と言われる「踊り念仏」は藤沢の遊行寺から始まった◇
藤沢宿・遊行の盆はいつから、どのように始まった祭りですか。
この祭りは、2005年にまちおこしの一環として、藤沢駅周辺にある商店街に賑わいを呼び戻し、全国に向けて藤沢市の認知度をもっと上げたいという思いから始まりました。湘南と言うとすぐに出てくるのは鎌倉や茅ヶ崎など。なかなか藤沢という地名が聞けることが少なく、全国的に見るとまだまだ知名度が低いようです。他ではやっていないような、どこかオリジナリティが感じられる藤沢らしい祭りをするにはどうしたらいいかと考えた末に出てきたアイデアでした。藤沢は、かつて時宗の総本山である清浄光寺の門前町、東海道の宿場として発展しました。清浄光寺は、時宗開祖の一遍上人が修業のため全国を遊行したことから「遊行寺」とも呼ばれています。盆踊りのルーツは「踊り念仏」だと言われていますが、これは、念仏を唱えているうちに弟子が突然踊りだし、見ていた民衆もこれにならって踊り出したというのが言われです。きっと、ブツブツ念仏だけ唱えていても民衆の注目を集められないので歌うように念仏を唱え、踊っていたのでしょうね。遊行寺に踊り念仏が伝承されているなら、総本山のある藤沢が各地の盆踊りの起源と言ってもいいのではないか、と。こうした藤沢に残された歴史と文化を生かして「藤沢宿・遊行の盆」が誕生しました。
盆踊りでまちおこしをするとは、具体的にどのようなことをなさってきたのでしょうか。
当初は一年掛けて全国の名だたる盆踊りの地域を訪問し、盆踊りイベントについて調査を重ねました。ここがいいな、ぜひ招致したいと願っても、予算のほか地域によっては色々なしがらみがあるなど、なかなかすぐには実現できないこともありました。まちおこしのために「盆踊りのゆかりの地である藤沢に来れば、全国規模の特色ある盆踊りが一度に見られる祭り」として、日本三大盆踊りに加え、プラスワンとして毎年違う踊りや祭りの招致を試みています。特に日本の三大盆踊りの一つで国の重要無形民俗文化財にも指定されている西馬音内盆踊りは、第1回目から参加し続けてくださり、本当にいいお付き合いをさせてもらっています。
さらに、藤沢を全国的にアピールするため、藤沢版盆踊り「湘南藤沢 遊行おどり」という藤沢の新しい盆踊りを専門家に依頼し創作していただきました。踊りの制作・統括をお願いしたのは劇作家である寺山修司さんの関係者で劇作家・演出家の白石征さんです。遊行寺に伝わる「踊り念仏」をモチーフにしていて、6つの組踊りで構成されておりメインの踊りは「遊行ばやし」と呼ばれています。市民が踊って参加する遊行ばやしコンテストも開催し、祭りのクライマックスには遊行寺境内で大盆踊り大会を行っています。
今年の藤沢宿・遊行の盆にはどのような特徴がありましたか。
今年は日本三大盆踊りの西馬音内盆踊り、郡上おどり、阿波おどりに加え、今年は東北を代表する夏祭りとして盛岡さんさ踊りを招致し、軽快なテンポで太鼓を持って踊る盆踊りをご披露いただきました。新たな取り組みとしては、駅南口「らんぶる商店街」でミニ縁日と盆踊り、北口サンパレットでも、盆踊りを行いました。さらに、今年は多摩大学湘南キャンパスの留学生や市内在住の外国人の方々による連も登場し、これまでより国際色豊かになってきましたね。まだまだ外国人の参加は少ないので、今後はもっと多くの方に参加して楽しんでいただきたいと思っています。
2020年開催の東京オリンピックでは、江の島でセーリング競技があります。この祭りをどのように発展させていくのか、お考えを聞かせてください。
遊行の盆は年々認知度が上がってきており、市内のみならず遠方からわざわざ全国の盆踊りを見にやって来る方がいらっしゃいます。小さな子供からお年を召した方まで一緒になって歌って踊れる盆踊りはやはり素晴らしい伝統文化です。2020年に東京オリンピックセーリング競技が江の島で開催されるのを契機とした取り組みにも今後チャレンジしていきたいですね。それにはまず、遊行の盆に参加していただいた皆さんと一緒になって情報発信をし、藤沢の認知度アップを図っていきたいと思います。この祭りが、セーリング競技江の島開催の成功と誘客に繋がればと考えています。
盆踊りは見学するより、参加したほうが楽しめそうです。様々な人たちの参加を呼び掛けて盆踊りを軸に、一層経済の連動性も高まっていくといいですね。ありがとうございました。
郡上おどりとは
7月中旬~9月上旬にかけ33夜に渡って踊る日本一長い期間踊られる盆踊り。400年に渡り城下町郡上八幡(岐阜県)で歌い踊り続けられてきた。本場、岐阜県郡上八幡から郡上おどり保存会がお囃子と踊りを披露。
西馬音内盆踊りとは
国の重要無形民俗文化財に指定され、秋田県の羽後町に約700年受け継がれている伝統ある踊り。 賑やかなお囃子と美しい踊りが特徴で、先祖伝来の端縫いの着物を身にまとい、曲線がきれいな編み笠をかぶって踊る。未成年の若い女性は「彦三頭巾(ひこさずきん)」と呼ばれる被り物を頭からすっぽりとかぶって踊る。第1回遊行の盆から毎年ゲストとして出演。
阿波踊りとは
約400年の歴史がある阿波おどり。本場徳島をはじめ、全国各地で開催されている。遊行の盆で今年も披露されるのは、高円寺阿波おどり連協会所属朱雀連と、地元藤沢の湘南なぎさ連。
盛岡さんさ踊りとは
東北を代表する夏祭りとして、毎年8月1日から4日間、岩手県盛岡市で開催。和太鼓同時演奏世界一を達成した勇壮な太鼓パレードと、しなやかで華麗な舞が夏の夜空を彩る。盛岡市と周辺で受け継がれてきた伝統さんさ踊りは、その地域によって振付や衣装が異なる。
今後の活動予定
第44回藤沢市民まつり開催!~大パレードは必見!~
9月23日(土)藤沢駅周辺・秋葉台公園
ステージイベント・屋台村
9月24日(日)藤沢駅周辺・遊行寺境内
藤沢駅南北大パレード・各種ステージイベント・プロレス興行・屋台村 他